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2020年4月28日 (火)

『秘境旅行』

「民俗学は、風俗や習慣、伝説、民話、歌謡、生活用具、家屋など古くから民間で伝承されてきた有形、無形の民俗資料をもとに、人間の営みの中で伝承されてきた現象の歴史的変遷を明らかにし、それを通じて現在の生活文化を相対的に説明しようとする学問である。」(Wikipedia)

 というとおり、民俗学では古くからの民俗資料を蒐集することが数多く行われており、更に風俗資料などに関しては写真で蒐集することが多い。宮本常一などの民俗学者は積極的に写真を自らの資料収集に使っていた。

 そんな意味では「民俗学者」と「写真家」というのは近しい存在なのである。

Photo_20200323153101『秘境旅行』(芳賀日出男・著/角川ソフィア文庫/2020年1月25日刊)

 ちなみに「芳賀日出男」を調べてみると「日本の写真家、民俗研究家」という記述を目にする。芳賀日出男氏が「写真に興味があって、その後、自分の写真の志向が民俗学的なるもの」に移って来たのか、「元々民俗学に興味があって、その方法論として写真を採用」したのかどうかは分からないが、日本・世界の祭り・民族・民俗芸能の写真取材を行ってきているということ自体は、写真家でもあり民俗学者でもあるという、この二つの職業(?)の類似性を物語っている。

 取り敢えず、本書の目次から内容を紹介すると……

ノサップー北海道ー
すさまじき流氷、それは国境の岬の春のことぶれ(昭和36年調査)
網走ー北海道ー
日本国籍を持つ北アジア系のオロッコ族を訪ねて(昭和36年調査)
恐山ー青森県ー
白昼に死者を呼び出す? 不気味な巫女市の裏面(昭和28、34、36年調査)
西馬音内ー秋田県ー
亡霊を迎えて三夜の陶酔、異様な真夏の夜の祭典(昭和35年調査)
妻良ー静岡県ー
誰でも行ける南伊豆の秘境、純朴な四季の風物詩(昭和17年より37年にわたる調査)
隠れ里の花祭りー愛知県北設楽郡ー
年末から正月に神々を招待、徹夜で舞う神楽の里(昭和35年より37年にわたり調査)
舳倉島ー石川県ー
海女二千名が夏を過ごす孤島! 裸体の楽園で暮らす(昭和28、37年調査)
木地屋の村めぐりー福井県・石川県
深山に住み日本工芸の伝統を守るロクロ師の生活(昭和35年調査)
宇波西神事ー福井県ー
三方五湖をめぐって行われる神秘的な祭りの全貌(昭和35年、36年調査)
山の中の民俗博物館ー広島県ー
一校長の執念! 民具の蒐集品が国の宝となる!(昭和37年調査)
大東町ー島根県ー
生活派の観光地、日本一の養鶏町となった鍵は?(昭和35、36、37年調査)
外泊ー愛媛県ー
四国のさいはて、海賊根拠地? 奇妙な石垣の村(昭和35年調査)
壱岐ー長崎県ー
島民の四分の一が集まる年に一回の春市を訪ねて(昭和37年に二回調査)
福江島ー長崎県五島列島ー
新興宗教へ改宗したかくれキリシタンの生活を探る(昭和37年に二回調査)
甑島ー鹿児島県ー
昔話を語り伝える老人たちが住む南海の離れ島!(昭和31年調査)
沖之永良部島ー鹿児島県ー
夕映えの珊瑚礁の岬で、島民たちは飲んで唄う(昭和30、31、32年調査)
久高島ー沖縄県ー
沖縄本島から離れた孤島に住む白衣の巫女と対面(昭和31年調査)

 以上、まあこの角川ソフィア文庫版自体が1962年に秋元書房から刊行されたものの復刻版なので、調査の年代はかなり古い。昭和30年前後から37年にかけての調査というか撮影なのであります。今から60年ほど前の記録である。当然、この本を読んで、祭りや風俗に興味を持ったとして、じゃあ、現代にその祭りや風俗を撮影に行こうと考えても、実際に行ってみれば本書のような写真なんぞは撮れないのである。

「舳倉島」の海女に興味を持ったとして……

『舳倉島に渡った海女は、輪島の街にいた時とは気風が一変するほど快活になって海への闘志をたくわえる。お天気がよくて凪ならば毎日のようにあわびをとりに出かける。海女の乗る小舟には櫓をこぐ父、夫、兄弟などの肉親の男性が相乗りする。七、八十隻の小舟がいっせいに漁場にさしかかると、海女は船の舳先に立ってさっと沖衣を脱ぐ、サイジとよばれる褌一本になり、小舟の上にすっくと立ち上がって天候や波の具合、伴舟のありさまを見る。
 私はその時の海女のトルソーをいつも素晴らしいと思って眺める。さんさんたる真夏の太陽に光る健康な肌はまぶしく美しい。それにましてたくましい。』

 という名文につられて輪島沖の舳倉島に行っても、同じ風景は絶対と言っていいくらい会えないのだ。当然、海女さんは褌一本なんかで仕事はしない。現代の海女さんはウエットスーツを着ているのだ。

 とは言うものの、例えば祭りなどに昔の風俗が残されていたりもしている。というか、多分、祭りくらいにしか、昔の風俗は残されていないのかもしれない。ということで、皆、古くからの祭りがあるというと、皆してカメラを抱えて撮影に来る。

 結構、皆、「秘境旅行」には憬れる。

 何なんだろう。なくなったものへのノスタルジーなのだろうか。

『秘境旅行』(芳賀日出男・著/角川ソフィア文庫/2020年1月25日刊)

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