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2017年12月20日 (水)

『江戸前 通の歳時記』う~ん、イキなもんですねえ。

 意外なところに池波正太郎氏の秘密を解くカギがあったのだった。

 まあ、結局は食べ物にまつわる話なんですけれどもね。

Photo 『江戸前 通の歳時記』(池波正太郎著/集英社e文庫/2017年5月31日電子版刊・3月25日底本刊)

『私は、ためておいた小遣いで〔東京市区分地図〕というのを本屋から買って来た。たぶん、五十銭ほどだったろう。一円はしなかったとおぼえている。
 余談になるが、この地図を買ってから、私の大きなたのしみが増えた。東京という都会が、これほどに大きく、変化に富んでいるものとは知らなかったので、小遣いをためては市電に乗って、たとえば麴町のあたりから皇居周辺を歩きまわるとか、九段の靖国神社へ行くとか、神田の本屋街へ出かけるとか……それが映画見物と共に、何よりのたのしみになった。

いまだにおぼえているのは、この地図を買ってから先ず第一に出かけたのは、芝・高輪の泉岳寺だった。
 いうまでもなく、この寺には赤穂浪士四十七名の墓がある。それを見たいとおもったのは、芝居や映画などで観た〔忠臣蔵〕が頭にしみこんでいたからだろう。当時の市電は東京市中のどこへでも乗り換えて七銭で行けたわけだが、それにしても泉岳寺へ行ったときは、私にとって大旅行だった。
 それから、また、堀部安兵衛が十八番斬りをやったという〔高田の馬場〕へ出かけたが、そこの陸軍の射撃場にびっくりしただけで、むかしの高田の馬場が何処にあったのか、さっぱりわからぬままに帰って来た。江戸時代の馬場跡をたしかめたのは、つい、十五年ほど前に、堀部安兵衛の一生を小説に書いたときである。

 さて……』

 という書き出しで、深川から永代橋の手前を北へ曲がり、ってことは赤穂浪士休息の地である「ちくま味噌」の前を通り、仙台掘りをこえ、小名木川へかかる高橋をわたって本所へ出るわけだが……、そこからなんともなく……

『その高橋をわたった右側に、何やら芝居の舞台に出て来るような瓦屋根の、表構えの店があるのに気づいた。
 見ると、これが〔どぜう屋〕である。
 店の名は〔伊せ喜〕で、夏などは入れ込みに押しつめた人びとが汗をかきかき、泥鰌鍋をつついている。
(ははあ、ここにもどぜう屋があるな……)
 と、おもった』

 という具合に、なんとなく自然に小説世界の方へ入っていく。なにやら、読んでいる自分がその小説世界の中にいるような気分にさせるのが、池波正太郎マジックとでもいうようなものだ。

 最後に、池波氏らしい「鮨」に関する記述を二つばかり引用。

『鮨屋へ行ったときは シャリだなんて言わないで、 普通に 「ゴハン」と言えば いいんですよ。

 飯のことをシャリとか、箸のことをオテモトとか、醬油のことをムラサキとか、あるいはお茶のことをアガリとか、そういうことを言われたら、昔の本当の鮨屋だったらいやな顔をしたものです。それは鮨屋仲間の隠語なんだからね。お客が使うことはない。

一度、好物の鮨をつまむことだけでも、人間というものは苦しみを乗り切って行けるものなのだ。
 つきつめて行くと、人間の〔幸福〕とは、このようなものでしかないのである』

 う~ん、いちいち言う言葉が身にしみるんだよなあ。

 それ以外の食べものに関する言葉としてはこんなのもある。

『そばを食べるときに、 食べにくかったら、まず 真ん中から取っていけば いい。そうすればうまく どんどん取れるんだよ。

 てんぷら屋に行くときは 腹をすかして行って、親の 敵にでも会ったように 揚げるそばからかぶりつく ようにして食べていかなきゃ。

 肉とねぎ以外は、ぼくは入れない。というのは、しらたきなんか入れると水が出ちゃうから狂っちゃうんだよ、割下の加減が。豆腐だって相当水が出るし、それはねぎだって水分があるわけだが、まあ、ねぎだったら合うから。ねぎは斜めに切らないでブツ切りにする、いいねぎだったら。そして鍋の中に縦に並べるわけよ。そうすると、ねぎというのは巻いてるから、その隙間から熱が上がってきて、やわらかくなるしね。だから、ねぎはあんまり長く切らないわけだ。立てて並べやすいようにね。横に寝かせたらなかなか火が通らないよ、ねぎというのは。

うすい肉を薄切りにして、こういうふうにやるのがまあ、一番ぜいたくなすきやきじゃないかな。』

 最後はビールの飲み方です。

『コップに三分の一くらい注いで、 それを飲みほしては入れ、 飲みほしては入れして飲むのが ビールの本当のうまい 飲み方なんですよ。』

 まあ、粋なもんですねえ(©木村伊兵衛)。

Dsc_00752 NIKON Df AF Nikkor 35mm f2 D @Senzoku Taito ©tsunoken

『江戸前 通の歳時記』(池波正太郎著/集英社e文庫/2017年5月31日電子版刊・3月25日底本刊)

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