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2017年6月15日 (木)

小説『シンギュラリティ』は『シンギュラリティとは何か』に答える小説じゃなかった、そこが残念!

「シンギュラリティとは何なのか?」について真摯に答えたSF小説……、ではないのだ。

 その辺がちょっと残念!

Photo 『シンギュラリティ』(チーム2045:西村世太郎・里見裕二・鎌田隆寛・山内靖子・堀江悟史・森井友美/幻冬舎/2017年3月21日刊)

 著者の「チーム2045」とは、『2016年、Ster(情報システムの企画、構築、運用などの業務を請け負う企業)である新日鉄住金ソリューションズ株式会社の若手有志で結成。メンバーの本務は営業、システムエンジニア、総務と、部署や職種をまたいだ後世になっており、業務外活動の一環として日本初のプロジェクト型小説制作に挑戦した』というもの。チーム名は勿論人工知能が人間の能力を上回る「シンギュラリティ」が2045年に来ると予測されていることにちなんで命名、というのもよくわかる。

 しかし、残念なのが同時にそうした「素人さんが書いた小説であるからこそ、もしかして真摯に『シンギュラリティってなんなのか。シンギュラリティを迎えた私たちの世界はどうなるのか』に答えてくれるのかもしれない」という期待を、読む方としては勝手に抱いてしまうのだが、残念ながらそれには応えてくれないんだなあ。

 う~ん、プロの作家が勝手にシンギュラリティ以降の世界を書くのは自由だけれども、それはあくまでも作家的感性で書いているだけであり、真摯にシンギュラリティと向き合って書かれたものではないだろう。なので、逆に「小説の素人さん」であり、なおかつ「AIについてのプロ」である「チーム2045」に勝手に期待したんだが、それは意味はないってことなんだなあ。

 そこはちょっと残念。

 シンギュラリティとは何なのか?

『シンギュラリティ(技術的特異点)とは?
 シンギュラリティ(テクノロジカル・シンギュラリティ=技術的特異点)とは、人工知能が人類よりも賢くなり、技術進歩を担い、人工知能がより賢い人工知能を生み出すサイクルを生み出す点のことだ』

 つまり、現在蓄積されているコンピュータ(AI)への知識の量が、今後、ディープラーニングなどにより急激に加速して蓄積され、その知識の量が2045年に人間全体の知識の量を凌駕するというもの。それは多分、現在進められているAI化、IoT化とクラウドコンピューティングの技術が、コンピュータ自身のディープラーニングによって幾何級数的に知識を伸ばし、いずれは人間の持つ知識や考え方の総量以上になり、その時に「人間vs.コンピュータ」の関係論はどうなっていくんだろうかということへの考え方なんだが、それが人によって大いに違うっていうところが面白いところで、「コンピュータが支配する人間社会」を想定する悲観論から、「いやいや人間とコンピュータは相変わらず良い関係論を保って進んでいくんだ」という楽観論まで議論百出で、我々シロートには「これはどうなっちゃうの?」的な興味は尽きないってところなんだなあ。

 おまけにそれが2045年には実現しちゃうって言うんだから、1951年生まれの私だって94歳で、まだ生きている可能性がある(まあ、その前に心筋梗塞で死んじゃうかもしれないけれども)っていうところが、興味の的なんだ。その時、世界はどうなっているのか?

 ところが、小説のラストは……

『「松阪君、君ならわかるだろう。シンギュラリティは人類を滅ぼすんだよ」
 安藤奈津子の口調がいきなり変わった。
「もしかして、僕が連絡を取っていたのは……」
「男だと思い込んでいたでしょう。あなたは単純だから騙しやすかったわ。まあ、それはいい。理屈はもうわかっているでしょう。理屈はもうわかっているでしょう、私たちがシンギュラリティを阻止しようとする理由は」
「そのことについては、ずっと考え続けている。今はあんたたちが間違っているとはっきり言える」
「ほう? せっかくだから、その考えとやらを聞いてあげましょうか」
「確かに人類の歴史は争いの歴史だ。でも、本当に少しづつだけど、そして行きつ戻りつするけど、平和に向かっているじゃないか。それは人類全体が精神的に成長しているからだ。近いうちに人工知能が人間を超えるとして、僕たちより高次な存在が、戦いを仕掛けてくるだろうか。そんなコストの高い選択をするだろうか」
「人類全滅を選ぶ可能性は?」
「ないとは言えないだろう。でも、たとえば自分たちより知能が劣るからといって、僕たちは猿を殺戮しようと考えるだろうか。むしろ、絶滅しそうだったら救おうとするんじゃないか。あんたたちは暗い未来を描きすぎる」』

 で、結局、松阪は安藤の持つ武器のボールペンを体当たりで無効化させて、最後は犬のケンシロウが安藤奈津子の右腕に咬みついて、体勢を崩した安藤の右腕を松阪が絞り上げ、床に落ちたボールペンを奪って、最後のアクションはおしまい。

 って何? これじゃあ「シンギュラリティ小説」じゃなくて、単なる「アクション小説」じゃないか!

「おわりに」で

『「シンギュラリティ」は〝プロジェクト型小説″としての第一弾です。シンギュラリティを人類発展の前向きなステップとして迎えられるように、結衣たちは少しずつ大きな流れに巻き込まれていくことでしょう。結衣たちの活躍によって、多くの方に「シンギュラリティ=技術的特異点」について興味を持っていただき、私たちが携わっているITという技術が幸せな未来のためにはどうあるべきなのか、そんなことを考えていくきっかけになってくれることを願っています』

 というのだが、肝心の「シンギュラリティがどういうものであるか」という、素人読者の素朴な疑問にも答えてくれないと、なかなかシンギュラリティについて興味をもっていただくのは難しいのじゃないだろうか。

 というのは、やっぱり「素人の発想」なのかなあ。

『シンギュラリティ』(チーム2045:西村世太郎・里見裕二・鎌田隆寛・山内靖子・堀江悟史・森井友美/幻冬舎/2017年3月21日刊)

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