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2017年1月11日 (水)

『疾風スプリンター』はお腹一杯の自転車レース映画だ

 自転車レースチームのエースとアシスト選手の葛藤と友情だけでも1本の映画は作れる。ドーピングでチームを追われた選手の復活劇だけでも1本の映画は作れる。勿論、二人のアシスト選手が一人の彼女を巡って競争と闘争を繰り広げるだけでも1本の映画は作れる。

 なのに、この三要素が全部入っている映画なんて、なんてことだ。これが香港映画のサービス精神ってものなのか? ただし、その分ロードレースに関するマニアックな部分は削がれてしまうんだよね。どちらかというと所詮日本における自転車ロードレースなんてマニアだけの世界なんだから、もっともっとマニアックに作ってもらいたかった、という私の望みは叶わなかったのだ。

 まあ、それを言っちゃあ「UCIアジアサーキット」を「ICCアジアサーキット」って言ってしまっているところからそうなんだけれどもね。

Photo_2『疾風スプリンター(TO THE FORCE)』(ダンテ・ラム:監督・脚本)

 できれば、『茄子 アンダルシアの夏』の続編『茄子 スーツケースを持った渡り鳥』みたいなリアルな世界を期待した方がバカだったのか。『スーツケースを持った渡り鳥』は、毎年ヨーロッパ・シーズンが終わって宇都宮で開催されるジャパンカップ・サイクルロードレースはUCI(国際自転車連盟)のアジアツアーの1レースでヨーロッパの一流チームが参加するレースなんだけれども、当然、参加選手の中には翌年の契約がまだされていない選手も多く、その悲喜こもごもを描いた傑作アニメーションなのである。

 UCIのアジアツアーとはジャパンカップサイクルロードレース(1.HC)、ツール・ド・ランカウイ、ツアー・オブ・チンハイレイク、ツアー・オブ・ハイナン(各2.HC)というUCIのHors Class(最高峰)の4レース。UCIコンチネンタルサーキットのひとつのジャンルでもある。

 実際、ジャパンカップのレース後にチームジャージーを売る選手なんかもいて、「ああ、それはそれで大変なんだな」って感じる‟実際の”場面にも遭遇することがあるのだ。

 日本の自転車レースとしては、ツアー・オブ・ジャパンとかツール・ド・北海道などのステージレースの他に、Jツアーというプロ(&セミプロ)の年間を通してのシリーズがあったりしている。台湾でも、ツール・ド・台湾とかもあるので、台湾ツアーなんかのシリーズ戦もあるんだろう。つまりプロ(&セミプロ)のレースシリーズなんだけれども、この映画の主人公2人、ナウ・ミン(エディ・ポン)やチウ・ティエン(ショーン・ドウ)も、アシスト選手としてプロ契約をしているけれども、海辺のバーでアルバイトをしながらレースを戦っているところを見ると、まだセミプロ選手なんだろうな。

 ところで、台湾は今や世界最大の自転車生産国なのだ。

 勿論、ジャイアントというメーカーの存在が大きく、今やツール・ド・フランスなどにも自分のチームを送り込んでいるが、元々はヨーロッパの自転車メーカーのOEMから始めたメーカーなんだ。ヨーロッパの自転車メーカーは、最上級のクラスの自転車やカーボン・バイクは自社生産をしているが、それ以下のクラスのバイクはほとんどが台湾からOEM供給を受けている、自転車メーカーならぬ自転車ブランドなのだ。

 私が乗っているビアンキというイタリアのブランドも、現在はカーボンバイクと値段が高くてもいい最上級クラスのバイク以外は、やはり台湾からのOEM供給で成り立っている。

 この映画でも登場するメリダという自転車も、ジャイアントに次ぐ台湾のメーカーである。設計はヨーロッパでやっているようだが、製造は台湾。つまり、UCIワールドチームというヨーロッパの最上級チームであるランプレ・メリダの下にあるチームが、この物語の主人公たちが所属する「チーム・レディエント(TEAM RADIENT)」という訳。

 当然、このチームで好成績を上げればランプレ・メリダに行けるってことになれば、皆このチームのエースを狙うっていうことになるんだろう。時にはエースも出し抜いて勝ちに行くってこともある。

 まあ、その辺からチームは壊れていくんだけれども、この映画では上記のアシスト選手二人とエースのチョン・ジオン(チェ・シウォン)の3人は、そんな立場争いでチームが瓦解する前に、資金難でチーム運営が立ちいかなくなり、3人はそれぞれ別のチームに移籍となり、それぞれがそれぞれのチームのエースとして競い合うというお話。

 まあ、そこにアマチュア女子選手ホアン・シーヤオ(ワン・ルオダン)が絡んできて、ナウ・ミンとチウ・ティエンの恋の鞘当てなんかが発生するというお決まりの流れ。

 チウ・ティエンのドーピング騒動とか、ナウ・ミンのチームメイト(アシスト選手)への暴行事件とかがあって、チーム・レディエントが再結成されると3人はレディエントに戻って再び戦うことになるという、いかにも香港映画らしい「お約束」のストーリー。ただし、今度はエースとアシストの関係は微妙となり、最後は元エースのチョン・ジオンはナウ・ミンを勝たせるように働くことになる。

 まあ、この辺は両方とも含めて、お約束ですね。「誰にもわかりやすい自転車ロードレース映画」としてはね。

 で、映画のプログラムに疋田智さんが『では、日本人は?』と謎かけをして『いる。謎の強豪選手「松山有祐(Yusuke Matsuyama)」だ。彼が映画のどこで出てきて、どう活躍するか、それはもう「観てのお楽しみ」としかいえない。ぐふふ(←謎の笑い)』って書いているんだけれども、そんなの簡単じゃん。

 映画のクロージング・タイトルバックで出演者が練習をしている場面とか、映画の本編で採用されなかった画面がいろいろ使われているんだけれども、その中にナウ・ミンが最後にランプレ・メリダに採用されて練習をしているところに登場する、ランプレ・メリダ(2017年からはバーレーン・メリダ所属)の新城幸也選手でしょ。えっ? あれっ? これってネタバレ?

 まあ、いいじゃない、新城は今年はランプレ・メリダを離れてしまうんだから。

 2017年からはランプレ・メリダは中国がスポンサーになって、中国初のUCIワールドチームになるわけで、それに対抗してバーレーン・メリダはゼネラル・マネージャーにランプレ・メリダのチームマネージャーとして働いていた南アフリカのブレント・コープランドが就任することになった。ワールドチームとしてのライセンスがどちらになるかは、まだわからないが、少なくとも契約している選手を見ると、ヴィンチェンツィオ・ニーバリとかホアキン・ロドリゲスとかビッグネームをそろえているバーレーンの方がUCIワールドチームになるでしょうね。

 まあ、あとは中国政府がどんな横槍を入れるかってことですけれどもね(中国は入れそうですね。同時にUCIとしては台湾メーカーの存在もあるから、多分中国の要求も受け入れちゃうかも)。

 この結果、イタリア所属のUCIワールド・チームはなくなってしまうわけで、この辺にもイタリア経済の苦境というものが見えてくる。

 劇場にはランプレのロードバイクが飾られています。ただし、最高クラスじゃなくて6000と4000。その辺がちょっと残念。まあ、まあそれがレディエントのチームバイクなのか。

Dsc_00182

映画『疾風スプリンター』は新宿武蔵野館他で公開中。公式サイトはコチラ

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