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2016年9月25日 (日)

『コンビニ人間』がリアルなのか、反リアルなのか、分からない私がいる

 9月19日から22日までの長崎旅行の間に読んだ本がコレ。

 村田紗耶香さんの今年の芥川賞受賞作『コンビニ人間』であります。

 実際の村田紗耶香さんも37歳で独身、コンビニ勤めをいまだに辞めていないそうで、まあ、つまり村田さん自身がモデルになって小説を書いたのかな。

「書いた私自身がコンビニ人間なんです」

 ってことなんだろうか。

 だとすると、村田さん自身がちょっと変わった娘で、大学1年生の時に始めたコンビニ・バイトを37歳の今でも続けている処女ってことなのかなあ。でも、なかなかお美しい人ですよ。

 まあ、美醜と処女・非処女は関係ないけれどもね。

Photo 『コンビニ人間』(村田紗耶香著/文藝春秋社/2016年7月30日紙版刊・2016年8月20日電子版刊)

『コンビニ店員として生まれる前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思いだせない。
 郊外の住宅地で育った私は、普通の家に生まれ、普通に愛されて育った。けれど、私は少し奇妙がられる子供だった』

 という主人公、古倉恵子は一種のアスペルガー症候群だったのだろうか。

『父も母も、困惑してはいたものの、私を可愛がってくれた。父と母が悲しんだり、いろんな人に謝ったりしなくてはいけないのは本意ではないので、私は家の外では極力口を利かないことにした。皆の真似をするか、誰かの指示に従うか、どちらかにして、自ら動くのは一切やめた。
 必要なこと以外の言葉は喋らず、自分から行動しないようになった私を見て、大人はほっとしたようだった。
 高学年になるにしたがって、あまりに静かなので、それはそれで問題になるようになった。でも、私にとっては黙ることが最善の方法で、生きていくための一番合理的な処世術だった。通知表に「もっとお友達を作って元気に外で遊ぼう!」と書かれても私は徹底して、必要事項以外のことを口にすることはなかった』

 というちょっと奇妙な女の子だった主人公が人生に目覚めたのが、まさしくコンビニエンスストアでのアルバイト経験だったのだ。

『スマイルマート日色町駅前店がオープンしたのは、1998年5月1日、私が大学一年生のときだった』

『「スマイルマート日色町駅前店OPEN! オープニングスタッフ募集!」というポスターが透明のガラスに貼られているほかは、看板も何もなかった。ガラスの中をそっと覗くと、人も誰もおらず、工事の途中なのか、壁のあちこちにはビニールが貼りつけられていて、何も載っていない白い棚だけが並んでいた。このがらんどうの場所がコンビニエンスストアになるとは私には到底信じられなかった。
 家からの仕送りは十分にあったが、アルバイトには興味があった。私はポスターの電話番号をメモして帰り、翌日に電話をかけた。簡単な面接が行われ、すぐに採用となった』

『大学生、バンドをやっている男の子、フリーター、主婦、夜学の高校生、いろいろな人が、同じ制服を着て、均一な「店員」という生き物に作り直されていくのが面白かった。その日の研修が終わると、皆、制服を脱いで元の状態に戻った。他の生き物に着替えているようにも感じられた』

『横で立って袋詰めをしていた社員が、 「古倉さん、すごいね、完璧! 初めてのレジなのに落ち着いてたね! その調子、その調子! ほら、次のお客様!」
 社員の声に前を向くと、かごにセールのおにぎりをたくさん入れた客が近づいてくるところだった。
「いらっしゃいませ!」
 私はさっきと同じトーンで声をはりあげて会釈をし、かごを受け取った。
 そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたと思った。世界の正常な部品としての私が、この日、確かに誕生したのだった』

 そのまま、同じコンビニに勤務して18年。36歳になっても、未だ独身で、正規社員になった経験もない恵子は、しかし、自分がコンビニ人間としてのみ世界から認められているという実感を感じながら生きている。

 そこに闖入してきたのが、やっぱりコンビニでしか働くことのできない……、っていうかそのコンビニでもまともに働くことができない白羽さんという人。

『「威張り散らしてるけど、こんな小さな店の雇われ店長って、それ、負け組ですよね。底辺がいばってんじゃねえよ、糞野郎……」
 白羽さんはたまに言葉をとちりながら早口で呟き続けている。
「この店ってほんと底辺のやつらばっかですよね、コンビニなんてどこでもそうですけど、旦那の収入だけじゃやっていけない主婦に、大した将来設計もないフリーター、大学生も、家庭教師みたいな割のいいバイトができない底辺大学生ばっかりだし、あとは出稼ぎの外人、ほんと、底辺ばっかりだ」』

 てなこと言っている白羽さん自身が正規社員にもなれずに、いまだにIT起業するなんて言いながら、実は何も行動をおこしていない、ダメ人間の典型みたいな人なのだった。

 そんな白羽さんと恵子が、なぜか同棲することになって、でも、結局は分かれちゃうってことになるんだなあ。

『コンビニはお客様にとって、ただ事務的に必要なものを買う場所ではなく、好きなものを発見する楽しさや喜びがある場所でなくてはいけない。私は満足して頷きながら、店内を早足で歩き回った。 私にはコンビニの「声」が聞こえていた。コンビニが何を求めているか、どうなりたがっているか、手に取るようにわかるのだった』

『「気が付いたんです。私は人間である以上にコンビニ店員なんです。人間としていびつでも、たとえ食べて行けなくてのたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。私の細胞全部が、コンビニのために存在しているんです」』

『「一緒には行けません。私はコンビニ店員という動物なんです。その本能を裏切ることはできません」
「そんなことは許されないんだ!」
 私は背筋を伸ばして、『誓いの言葉』を言うときのように、白羽さんに真っ直ぐ向き合った。
「いえ、誰に許されなくても、私はコンビニ店員なんです。人間の私には、ひょっとしたら白羽さんがいたほうが都合がよくて、家族や友人も安心して、納得するかもしれない。でもコンビニ店員という動物である私にとっては、あなたはまったく必要ないんです」』

 アスペルガー症候群かもしれないということで、世間と折り合って生きることのできない恵子だったが、単なる「ダメ人間」と出会ったことで、自分にも自分に合った生き方ができることを発見する。それが「コンビニ人間」という生き方だった。

「コンビニで働くことは底辺の生き方である」という白羽さんの考え方は、自分が今置かれている「コンビニ人間」という立場を認められないために、その立場を自己崩壊させている。

 それに比べれば、「コンビニ人間」という存在を肯定的にとらえている恵子の方がまだ幸せなのかもしれないと考えるようになる。

 それは人間としての進歩でもなんでもないが、人の生き方においては大いなる進歩といえるのかもしれない。

 あまり純文学で「人の生き方」なんてものを考えない私だが、この作品にだけは、ちょっと考えさせられた。

 でも、純文学に疎い私には「わからない」。

『コンビニ人間』(村田紗耶香著/文藝春秋社/2016年7月30日紙版刊・2016年8月20日電子版刊

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