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2016年9月 4日 (日)

う~ん、「後妻業」ってお仕事があったのね

 新城がテレビに写っている……ってもプロトンの最後尾。ってことはグルペットか……? まあ、昨日(今日)は山岳ステージでクライマーじゃない新城には無理なんだよね。

 で、今日のブログの始まりです。結構、面白い小説だったなあ。

 う~ん、「後妻業」なんてお仕事があったのね。「後妻」と「業」が繋がらなかったんだけれども、「なんでも仕事になる」って観点で行けば、「後妻業」という仕事があってもおかしくはない、ということになるんだけれども、まあ、その言葉を見つけた黒川博行氏の勝ち、ってことなんだろうなあ。

Photo 『後妻業』(黒川博行著/文春文庫/2016年6月20日刊)

 本書の解説を書いた白幡光明氏によれば

『〝後妻業〟という言葉は、一部法律家の間では使われていたが、一般には知られていなかった。基本的には、妻に先立たれ一人暮らしをしている金持ちの高齢者と親密になり、内妻として公正証書を作らせたり、後妻に入って財産相続の権利を確保した後、何らかの方法で夫の命を縮めて財産を我が物にする生業をさす。
 本書が出た後、それを地でいくような事件が発覚、複数の男性を青酸化合物で毒殺し、総額八億円とも言われる財産を相続した筧千佐子容疑者が逮捕された事件は、記憶に新しい]』

 ということだそうだ。

 つまり、「後妻業」の女は、単に先妻を亡くした金持ちの高齢者と親しくなり、内妻として公正証書を作らせたり、後妻に入って財産相続の権利を確保するばかりじゃなくて、何らかの方法で夫の命を縮めて財産を我が物にすることを業としているというのだな。つまり、それは正当な内妻として、あるいは後妻としての権利行使じゃなくて、悪事に手を染めるってことなんだ。まあ、考えてみれば後妻に入る女性は沢山いて、正当な形で財産相続をする人は沢山いるわけで、そんな人たちは別に「後妻」を「業」としているわけではなくて、たまたま夫の死後、財産を継承してしまったというだけのことなのであり、別に問題があるわけじゃない。

 単なる「後妻」ではなくて「後妻業」という理由はそこにありそうだ。

 メインの「後妻業」の女は武内小夜子という女。それも何回目かの再婚をした際の姓だ。

 ラストの方、弁護士事務所から武内小夜子の調査を依頼された興信所の本多が、「後妻業」の総元締め、結婚相談所の所長、柏木亨との会話だ。

『「黒澤小夜子、昭和十八年一月十五日、北河内郡門真町で出生。初婚の相手は星野やった。星野小夜子は昭和四十八年四月に占脱で北淀署に逮捕され、離婚。その年の十二月に和歌山で轢き逃げ。翌四十九年九月、有田市で海南署に窃盗容疑で逮捕されたときは岸上小夜子いう名前やった。岸上と離婚して黒澤姓にもどり、昭和五十年十一月、自転車盗と覚醒剤取締法違反で曾根崎署に逮捕。昭和六十二年二月、詐欺、有印私文書偽造で奈良県警上牧署に逮捕されたときは西山小夜子、平成三年五月に有印私文書偽造で大阪府警茨田署に逮捕されたときは中尾小夜子いう名前やった」
 本多はメモ帳を見ながらいい、顔をあげた。
「星野、岸上、西山、中尾、末永、元木、名城、津村、武内……入籍して名字の変わった相手が九人。ほかにも公正証書をまいただけの相手が何人もおるはずやで」
「男運がわるいんやろ」
「黒澤小夜子は福原にもおった。たぶん、昭和五十年代や。シャブで三年ほど務めたあと、出所して神戸に流れた。西山いう男は浮世風呂の客やったんやろ」

「まだある。名城善彦や」
 本多はまたメモ帳に視線を落とした。
「平成十六年四月、名城は小夜子といっしょに白浜に行った。宿泊したんは『はまゆり荘』。名城は宴会のあと姿を消して、添乗員が真砂海岸を探した。地元警察が出動し、名城の溺死体を発見したんは……」
「分かった。もうええ」
 柏木は遮った。「報告書はいつ書くんや」
「今週中に書く。あと一件、調べごとがあって、それが分かったら、まとめて弁護士に渡す」
「なんや、調べごとて」
「轢き逃げや。平成七年から九年の夏、比叡山ドライブウェイで末永いう男が撥ね飛ばされて崖下に落ちた。遺体は翌朝に発見されたけど、近くのホテルにいっしょに泊まってたんが末永小夜子や。その事件はいま、滋賀県警に照会してる」』

占脱」というのは「占有離脱物横領罪」といって、他人の落とし物やなどを警察に届け出せずに自分のものにしてしまう罪のこと。つまり、まだこのころの武内小夜子はそれほどの悪事に対する知識もなく、大した罪の意識もなかったんだろう。スゴ味を帯びてくるのは福原で浮世風呂(ソープランド)に勤務していたころにシャブで三年ほど務めたあとの時代からなのだ。

 話はこのあたりからクライムノベル風になっていく。

『「その報告書、買お」低く、柏木はいった。
「ほう、そうかい」小さく、本多はいう。

「三千万や。それ以上は出さん」
「ま、ええやろ。手を打と」
「強請はいっぺんだけやろな」
「な、所長さんよ、なにごともやりすぎはようない。おれは分を知ってるつもりや」
 本多はメモ帳をテーブルに置いた。
「これは三千万であんたにやる。報告書も書かへん。あんたは小夜子と組んで、これからも稼げや」
「三千万もの金、すぐには用意できへんぞ」
「今週中やな。土曜日まで待と」
 九月八日、それが期限だと本多はいい、メモ帳とレンタカーの貸出記録をポケットに入れる』

 まあ、その後は武内小夜子の弟、黒澤博司という元ヤクザが柏木に命じられてチャカ(ピストル)で本多を撃っちゃうわ、本多も負けじと柏木が主催する婚活パーティーに乗り込んで、車のホィールレンチで柏木をメッタ打ちにしちゃうわ、という結構トンでもない展開になってくる。

 まあ、普通に武内小夜子と柏木亨が普通に逮捕されちゃうドラマじゃあ小説にはならないし、カネの匂いをかんだ本多が暴走して、直接柏木と絡んじゃうシーンは面白いけれども、「普通に逮捕されちゃうバージョン」とか、「武内小夜子に殺された中瀬耕造の娘、朋美と尚子が友人の弁護士・守屋と組んで民事訴訟を戦うバージョン」なんてのも読んでみたかったな。

 この小説は現在公開中の映画「後妻業の女」の原作であります。監督は、中央大学出身の元読売テレビ演出家の鶴橋康夫氏。鶴橋氏は読売テレビ在職中から様々な賞を取ってきた凄腕ディレクターだった。ということで、映画も期待なので、近々、映画評も書きます。

 まあ、久々の映画評なので期待して(ないで)待っててください。

『後妻業』(黒川博行著/文春文庫/2016年6月20日刊)

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