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2016年7月30日 (土)

『疑惑のチャンピオン』っていうタイトルにはちょっと違和感があるんだなあ

 7月2日のツール・ド・フランス開幕日と同じ日に日本で公開された映画なんだけれども、24日にツールが終了してしまったので、それに合わせて今週末で公開を終える劇場が多いことにちょっと残念。

 まあ、意味は分かるんですがね……。日本じゃサイクルロードレースはせいぜいJ SportとかNHK BSで放送する程度の番組でしかないので、ツールと同時に映画の公開も終わってしまうんですね。

 ところがヨーロッパではサイクルロードレースはサッカーの次くらいに人気のあるスポーツだし、だからこそドーピングなんて問題が大きく取り上げられる。「サイクルロードレースとドーピング」っていうのは、日本で「力士のタニマチがヤクザだった」っていうのと同じくらいに大きな問題になってしまうんですな。

 ところが日本じゃサイクルロードレースなんて実にマイナーなスポーツでしかないので、ドーピングが問題になるほどの盛り上がりはないし、だいたいドーピングをしてまで勝ちたいという選手もいないんだ。日本のサイクルロードレースのあるチームのスポンサーになっている梅丹本舗っていう会社の製品にドーピングに使われるモノが含まれていたっていうのが、今年話題になったんだが、多分知っている人はまずいないんじゃないかな。

 このサイクルロードレースに対する社会の扱いの規模の彼我の違いをまず理解していないと、この映画に対する評価も違ってくる。

Photo 『疑惑のチャンピオン "THE PROGRAM"』(STUDIO CANAL・WORKING TITLE /原案:ディビット・ウォルシュ "Seven Deadly Sons : My Pursuit of Lance Armstrong"/脚本:ジョン・ホッジ/監督:スティヴン・フリアーズ/主演:ベン・フォレスト〈ランス・アームストロング〉、ジェシー・プレテンス〈フロイド・ランディス〉)

 ということで、私はまず『疑惑のチャンピオン』っていう邦題から、「なんかなあ」感があるのだ。

 原題は「THE PROGRAM」、つまりドーピングということ自体が、既にサイクルロードレース・チームではチームのプログラムとして組み込まれているっていうことを表しているんだが、邦題の「疑惑のチャンピオン」ってなってしまうと、まるでランス・アームストロングだけがドーピングに手を出しているみたいになってしまう。根本の問題はサイクルロードレース自体がドーピングと大きな関係のあるスポーツだってことなんだ。

 だいたい、ランス・アームストロングが真っ黒けのケだっていうことは皆知っていたんだが、なんとかそれをうまくすり抜けてきたっていうだけのこと。ガンからの生還者っていう病み上がりが、過酷な三週間にわたる三大ツールに復帰してきて、なおかつ七連覇しちゃうっていうこと自体が、充分ドーピングを疑われても仕方のないことなんだ。

 ガンになるまでは、もともとアイアンマン・レースをやっていたランスなので、自転車選手としては余計な筋肉が体についていたのが、ガンになったおかげでその筋肉が全部落ちちゃって、今度は自転車トレーニングだけして復帰したので、登りにも強い選手になったというのが、「ランス神話」なんだけれども、まあ、別の理由もあったというわけで……。

 更にランスがアメリカ人だっていうこともフランス人にとっては目の敵ではあったようだ。つまり、サイクルロードレースっていうヨーロッパ発祥のスポーツに新大陸の人間が出てきて勝ってしまうっていうこと自体がヨーロッパ人にとっては許せないこと。それもフランス人最大の誇りであるツール・ド・フランス七連覇ですよ七連覇。一回ぐらいの優勝だったら許してくれるんだが、七連覇もされちゃったらフランス人のメンツが立たない。なので、ランスのドーピング疑惑も一番最初はフランスで立ち上がった。あまりにも強すぎたアメリカ人がフランス人の嫌米心理に火を点けてしまったのだ。

 しかし、選手の間からはドーピングが話題になることはない。つまり誰かのドーピングをあげつらってしまったら、次は自分が標的になってしまうのだ。要は、過去一度もドーピングに手を出したことがない選手はいないっていうことなんだろう。

 なので、だいたいドーピングの調査は「違法薬物」っていうことで警察がまず手をつけて、その結果薬物が出てくると、UCI(国際自転車連盟)やWADA(世界アンチドーピング機構)に提訴するっていう順番。映画の冒頭で出てくる「フェスティナ事件」がそれ。

 ただし、UCIはどちらかというと選手に立場が近い。つまり、ドーピング調査で選手がどんどんクロになってしまっては、観客が注目する選手が出場できなくなってしまって、サイクルロードレースっていう興業がおこなえなくなってしまう。そうなってしまえばUCIの存在そのものにも関わってくる問題なので、UCIとしてはちょっと腰が引けてきてしまうのだ。

 WADAにしたって、別に自分たちの組織は警察権を持っているわけではないし、強制力は持っていないので、とりあえずUCIにゲタを預けちゃうわけですね。で、UCIは上のような感じなので力は出さない。

 ランスのドーピング告発も結局フロイド・ランディスが行って、USADA(アメリカ・アンチドーピング機構)が、まあランスは引退しちゃったんでまあいいかなってなもんで、それじゃあって状況証拠を徹底して集めて、UCIに提訴し、UCIもいやいや認めざるを得なくなってしまった、というのが真実だろう。

 この映画で初めて知ったことは、ランスがUCIにワイロを出していたっていうこと。ランス自身は現役選手時代500回を超すドーピング検査をおこなってきて、そのすべてに「シロ」判定が出ていたんだが、そのウラにはそんな事実があったんですね。まあ、それじゃあ何度ドーピング検査を行っても「シロ」判定しか出ないわけだ。

 まあ、どうでもよいことなんだけれども、エンディング・クレジットのテキサス・ユニットの中でアレックス・キンタナっていうカメラ・オペレーターだかなんだかを発見したのには笑えた。キンタナですよキンタナ。

 ランスのドーピングの問題に関しては、当ブログでも過去何度か触れているのでそちらもご参照ください。

2010年7月8日「今度はランディスがアームストロングを…何を今更昔のことを掘り起こすのか?」

2012年6月15日「ランス・アームストロング氏のドーピング違反の正式判定」

2012年7月3日「『ランス・アームストロング氏のドーピング違反の正式判定』に対する批判に応える

映画『疑惑のチャンピオン』は丸の内ピカデリー他で公開中。

公式サイトはコチラ

 コチラもご参考に。まあ、サイクルロードレースとドーピングの深いつながりが読んでとれます。

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» 「疑惑のチャンピオン」 [ここなつ映画レビュー]
ツールドフランス前人未到の7連覇を達成したアメリカ人ランス・アームストロングの黒く汚れた栄光についての物語。彼は類い稀な才能と克己心をもってレースに挑んだが、その裏では薬物の力を借りた組織ぐるみのドーピングが行われていたのだ。このことが白日のもとに晒されて以降、彼は7連覇のチャンピオンの資格を剥奪され、今日、このような作品が作られることとなった。ランス役を演じるのは「マット・デイモンでもジェイク・ギレンホールでもなく」、ベン・フォスターである。そういった意味では熱演のベン・フォスターには賛辞を贈りた... [続きを読む]

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