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2016年4月18日 (月)

『下り坂をそろそろと下りる』覚悟はあるか

 平田オリザ氏は劇団を主宰する劇作家である。

 劇作家はいろいろなところを旅する。そんな旅から受けた感覚を「下り坂をそろそろ下る」日本の下り方について述べたのが本書なんだろう。

Photo『下り坂をそろそろと下る』(平田オリザ著/講談社現代新書/2016年5月1日刊)

 そんな平田氏が行って、考えた場所を目次から追ってみると……

序 章 下り坂をそろそろと下る

第一章 小さな島の挑戦――瀬戸内・小豆島

第二章 コウノトリの郷――但馬・豊岡

第三章 学びの広場を創る――讃岐・善通寺

第四章 復興への道――東北・女川、双葉

第五章 寂しさと向き合う――東アジア・ソウル、北京

終 章 寛容と包摂の社会へ

 そんな地を巡りながら今の日本における状況を平田氏は次のように述べる。

一、もはや日本は、工業立国ではない。

二、もはや日本は、成長社会ではない。

三、もはやこの国は、アジア唯一の先進国ではない。

 まあ、そんなことは、もうほとんどの日本人が自覚していると思ったんだが、そうではないようだ。

『日本は、アジアで唯一の先進国の座から滑り落ちたことを、まだ受け入れられない』

 という問題がある。そこで隣国とギクシャクしてしまうのだそうだ。まあ、、そうかも知れないな。要は隣国関係だって、その時期その時期で変わるんだけれどもなあ。

『いまの日韓のぎくしゃくとした関係は、下り坂を危なっかしく下りている日本と、これから下りなければならない下り坂の急勾配に足がすくんでいる韓国の、そのどちらもが抱える同根の問題を、どちらも無いことのように振る舞って強がりながら、国を賭けてのチキンレースをしているようにしか見えない』

『その傍らには、青息吐息になりながらも、猛スピードで急坂を登っていく中国という巨人がいる。問題は一筋縄では解けないだろう』

「青息吐息」かどうかは知らないが、今の中国は成長率が下がったとはいえ、いまだ6%以上の成長率を誇っている国なのだ。もはや中国は「計画経済の共産主義社会」じゃないからね。

『中国本体は経済成長を続けていく。一四億の民が豊かになろうという物欲の巨大な波は、小さなバブルを次々に飲み込んでいくだろう』

 ところが「確証バイアス」にかかってしまっている日本人にはその状況を理解できない。

『心理学の世界に「確証バイアス」という言葉がある。人は誰でも、自分の主張に都合のいい情報、自分が下した判断を後押しするような情報を集めてしまいがちになる。またその逆に、反証となるような事実からは目を背けたり、あるいはその収集を怠ったりしてしまう』

 その結果……

『近隣諸国は、あるいは世界経済は、その小さなバブル崩壊のたびに右往左往させられる。そして残念ながら、日本は最も激しく右往左往させられる国となるだろう。なぜなら、中国の経済破綻を望む日本人の潜在意識が、隣国に対する冷静な判断を出来なくさせているから』

 問題の基本はここ。

『異文化理解や相互交流には、「自分たちの標準とするものが、世界の標準であるとは限らない」という認識を、きちんと持っているかどうかという座標軸がある』

『もしも文明を成立し進化させる要件が、異なる文化が混ざり合い、押し合いへし合いすることにあるのなら、私たちの進まなければならない道は明らかだろう。東アジア文化圏の連帯を、よりいっそう強めるのだ』

『ドイツがEUの中核をなし、ユーロを堅持しようとするのは、単なる贖罪ではない。そうしない限り、欧州の中のドイツというアイデンティティを保たない限り、またこの国は、自国を滅亡の寸前に追い込んでしまうからだ』

 そこで我々が見なければならないのは、陸地で国境を接しているドイツとフランスの関係だろう。常に国境問題を抱えていながら、そして常にお互いの主張を決して譲るつもりがない両国であっても、何故。戦争が起きないのか(過去は常に戦争状態にあった)。

『東アジアの状況は欧州よりも複雑だが、それでもやはり、中国を孤立させず、日韓が下り坂を確かな足取りで下り、北朝鮮の体制の崩壊を待ち(あるいはそれを促し)、その受け皿をしっかりと作っていく。日本が日本固有の文化を守り、アメリカの属国にならず、中国の植民地にもならない道は、おそらくここにしかないと私は思う』

 ところが……

『第二次安倍政権が、外見上、見事なスタートダッシュに成功したのには、主に二つの要因が挙げられる。一つはアベノミクスが、少なくとも表面的には成功して、株価と大企業の収益が上がったこと。もう一点は、ナショナリズム的な傾向を強めることで、自信を失っていた日本人に、なにがしかの希望のような幻想を抱かせたこと。もちろん、この二つは表裏一体となっていて、経済の一時的な回復が、「夢よ、もう一度」という気持ちを、多くの国民に抱かせることに成功したとも言える』

 そうでもしないと日本人はアイデンティティを保てないんだろうか。

『安倍首相とその周辺の人々には、おそらく二つの誤謬がある。
 一つは、日本が文明を輸出できる国だという錯覚。「日本を、再び、世界の中心で輝く国としていく」(二〇一五年年頭所感)という妄想は、これを端的に表している。

もう一つの誤謬は、「絶対負けない」という不敗神話だ。しかし、安倍首相は、日本がアジア唯一の先進国の座から滑り落ちたことを受け入れられない日本人の典型である。典型である以上、一定数の支持を保ち続けることは間違いない』

 う~ん、こういう人たちは日本がアジアの先進国から滑り落ちたことを知らされるとアイデンティティクライシスに陥るんだろうな。

『しかし、いま日本人に必要なのは、その寂しさに耐えることだ。小さなプライドを捨て、私たちはゆりかごから外に出なければならない。安倍政権を攻める側もまた、この文化の構造を理解しなければ、本当の勝利は得られない』

 今更、日本の成長神話を信じている人なんていないと思ったのだが、しかし、今でも自民党の一部にはあるんだなあ。

 しかし、もはや誰の目にも日本が「下り坂をそろそろと下る」社会になっていることは明らかだ。そんな時代にはじっくりと構えて、これまで経験したことのない社会にブチ当たる覚悟が必要だということだろう。

『下り坂をそろそろと下る』(平田オリザ著/講談社現代新書/2016年5月1日刊)

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