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2015年12月29日 (火)

『侠飯』と書いて、「おとこめし」と読む

 デキの悪い就活中の大学生が住む古いアパートにヤクザ(「柳刃」という名前なんだが、それ自体がおかしいよね)が転がり込んで、そのまま生活の場にしてしまうんだが、そのヤクザがやたら料理の腕もいいし、清潔好きで、だんだん主人公のデキの悪い学生が感化されて来るっていう設定がまず面白い。

『侠飯』とかいて「おとこめし」と読ませます。

Photo 『侠飯』(福澤徹三著/文春文庫/2015年2月20日刊)

 じゃあ、どんな料理と料理法が出てくるのかと、目次で拾っていくと……。

プロローグ――就活と抗争

 から始まって……。

1 オイルサーディンとカマボコとリンゴとネギでなにを作るか

 という第1章は、取り敢えず「デキの悪い大学生」=良太の家にあったものだけで作った例だ。で、以下はお約束。転がり込んできたヤクザが仕入れた材料で作った料理。勿論「ヤクザが仕入れた」のは食材だけではなくて、冷蔵庫からフライパン、電気釜などなど。勝手に通販で買い込んできている。まあ、この辺は「今っぽい小説」ですね。

2 チャーハンはパラパラじゃないほうが旨い
3 クリスマスイブにチキンはいらない
4 ゴミ袋とレンジで作る刑務所の飯
5 ステーキはA5ランクよりスーパ-の特売品
6 レトルトカレーがフライパンひとつで絶品になる
7 食べるもので性格が変わる
8 殴られた夜のソウルうどん
9 飯は冷やに限る
エピローグ――この世で一番旨い飯

 と繋がる。

『ヤクザたちとの奇妙な生活にストレスを感じる一方、食事の時間は楽しみになった。柳刃は朝晩キッチンに立って、こまめに料理を作る。
 毎回それを手伝わされるが、掃除とちがって苦にならない。特に高級な食材を使うわけでもないのに、柳刃が作ると、ひと味ちがった料理になる』

『ひとつだけ難をいえば酒の肴に近い料理が多いことで、日増しに酒の量が増えている。恐らく体重も増えているだろう』

『最近は、柳刃がネットで買った食材や調味料が続々と届く。酒も日本酒や焼酎やワインと数が増えたせいで、段ボール箱がキッチンから居間に進出しつつある』

『柳刃の料理に関するこだわりには、執念めいたものを感じる。いいかげんなものは食べたくないと柳刃はいったが、それだけではなく料理をすることで、なにかを発散しているように思えた』

 というのが、まあ、料理セクションなんだけれども。しかし、いつの間にかこの「デキの悪い大学生」がヤクザに感化され始めるんだなあ。

 就活に関して、

『「どこが舐めてるんですか。ぼくは真剣にやってるのに」
「真剣かどうかってのも、おまえの物差しだろうが」
「ぼくはぼくなんだから、ぼくの物差しでしか計れませんよ」
「いやちがう。おまえは勉強が嫌いなくせに大学生になった。そしていま、仕事が嫌いなくせに就職しようとしてる。いっぱしに自分の考えがあるつもりで、結局はまわりに流されてるだけだ」』

 なんて言葉をヤクザに言われてもなあ、という気分になりませんか。

 まあ、でも数か月間とは言え、ヤクザと同居し、そのヤクザに食わせてもらっているうちに、どこかその「ヤクザ」に感化されちゃった「デキの悪い大学生」も社会を知ることになるのだ。「ヤクザ」に教えられてね。

 小説のラストシーンは、以前、入社を断られた編集プロダクションへの二度目のアタック。

『新宿駅で電車をおりて、三丁目の路地を歩いた。
 アド・テイスティの辛島に電話したのは、きのうの夕方だった。
「また面接して欲しいってことじゃないんです。もう一度だけ、作品を見てください」
 そう切りだすと、辛島は電話口で、あはは、と笑って、
「きみ、おもしろいじゃん。あした持っておいで」
 このあいだ訪れたマンションに着いてエレベーターに乗った。
 エレベーターをおりて廊下を歩き、アド・テイスティの前に立った。
「おはようございますッ」
 良太は弾んだ声とともにドアを開けた。

 はてさて、良太のその後はどうなるのか? 編プロに入れるのかどうかは分かりませんが、多分、かれは「ヤクザ」の言葉のおかげで、今後の生きる指標は与えられたのではないかな。

 で、その「ヤクザ」の正体は? ……、それは「ネタバレ」になっちゃうんでここでは言いません。

 本を読んでね。

『侠飯』(福澤徹三著/文春文庫/2015年2月20日刊)

『侠飯2 ホット&スパイシー編』も出ている。設定は別。

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