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2015年11月21日 (土)

『ヒトラーとナチ・ドイツ』と共通するわが国のありさまについて

 問題は『二〇世紀初頭、ドイツはすでに欧州随一の文化大国・経済大国として、日本をはじめ世界各国から数多くの留学生を受け入れ、西欧文明をリードする立場にあった。そのドイツで、民主主義を公然と否定し、ユダヤ人憎悪を激しく煽るヒトラーとナチ党が大衆の支持を得て台頭し、ついに政権の座に就くなど、誰が予想しえたであろうか』ということなのだ。

Photo 『ヒトラーとナチ・ドイツ』(石田勇治著/講談社現代新書/2015年7月1日刊)

 結局それは『ナチ体制は、「民族共同体」という情緒的な概念を用いて「絆」を創り出そうとしただけでなく、国民の歓心を買うべく経済的・社会的な実利を提供した。その意味で、ナチ体制は単なる暴力的な専制統治ではなく、多くの人びとを体制の受益者、積極的な担い手とする一種の「合意独裁」をめざした。このもとで大規模な人権侵害が惹起され、戦争とホロコーストへ向かう条件がつくられていったのである』

 ということと裏表の関係なのだろう。

『戦後初期の西ドイツで実施された住民意識調査(一九五一年)によると、「二〇世紀の中でドイツが最もうまくいったのはいつですか。あなたの気持ちにしたがって答えてください」という問いに、回答者の四〇パーセントがナチ時代の前半を挙げている。女性の回答者に限れば、四一パーセントだ。これは帝政期(四五パーセント)に次ぐ高さで、ヴァイマル期(七パーセント)、ナチ時代の後半(二パーセント)、一九四五年以降(二パーセント)を大きく引き離している』

『ナチ時代の前半を生きた人びとが、第二次世界大戦後、この時期を比較的肯定的に捉えたのはなぜだろうか』

『たしかに独裁下の「正常さ」というのは、いささか矛盾した表現だ。だが、第一次世界大戦の敗北と帝政の崩壊、天文学的なインフレ、世界恐慌の勃発という具合に、立て続けに苦境に見舞われたドイツ国民の絶望感が、「救世主ヒトラー」の登場でいったん後景に退き、雇用の安定とともに昔の平穏な時代を取り戻したかのような錯覚にとらわれたとしてもおかしくはない』

『ヒトラー政権が誕生した三三年一月末、ドイツは六〇〇万人もの失業者を抱えていた。だがその反面で、その前のパーペン、シュライヒャー両政府の失業対策が徐々に効果を表していた』

『パーペンの失業対策「パーペン・プラン」は企業減税を柱とする景気浮揚策で、三二年秋から実施されていた。シュライヒャーはこれを引き継ぎ、さらに財政支出をともなう雇用創出政策を打ち出した』

『とくにシュライヒャーの「緊急プログラム」は、従来の財政均衡主義からケインズ主義への転換を表すものだった』

『実はドイツの経済はヒトラー政権の誕生前にすでに景気の底を脱し、いまや政府の強力な後押しがあれば一気に回復局面へ移行できる段階にあったのだ』

 結局、人々の関心事は「経済」なんだなあ。そのためには『ドイツのユダヤ人はといえば、ヒトラー政権が誕生した一九三三年の時点で国内に暮らすユダヤ人は約五〇万三〇〇〇人(人口比〇・七六パーセント)』という少数民族のことなんか知らないよ、というのがドイツ国民の大半の考え方だったんだろう。

 ヨーロッパはキリスト教社会なので、基本的に反ユダヤ主義というのはヨーロッパにはびこっている。

『ヨーロッパのユダヤ人は、ユダヤ教徒であるがゆえに長らくキリスト教徒の迫害と差別にさらされ、ゲットー(特別居住区)での居住を強いられるなど、多数派社会から隔離された生活を送ってきた。だが一八世紀後半の啓蒙思想の発展とフランス革命(一七八九)をきっかけに、ユダヤ人の解放=法的同権化をめぐる論議がヨーロッパ各地に広がった』

『ドイツでもユダヤ人の解放は、一九世紀を通じてゆっくりと進展し、ビスマルクによるドイツ統一=ドイツ帝国創設(一八七一)とともに全国で信仰の自由が認められ、ユダヤ人の法的平等が実現した』

それが

『ユダヤ人に与えられた「不当な特権」を奪い、彼らを二級市民に貶め、最後の一人まで国外へ追放する。これが三〇歳当時のヒトラーの考えだった』

 という「在日特権を許さない市民の会」もかくやという論理と妄想で固まったヒトラーの暴走を許してしまったのだろう。つまり、結局は市民の無関心が起こしてしまったホロコーストという悲劇なのである。

『この間、政府の反ユダヤ政策は急進化した。だが、ほとんどの人が、これに抗議の声ひとつあげなかった。いま聞くと、それも異様なことに感じられるが、人口で一パーセントにも満たない少数派であるユダヤ人の運命は、当時の大多数のドイツ人にとってさほど大きな問題ではなかったのである』

『たとえば同僚のユダヤ人がいなくなった職場で出世をした役人、近所のユダヤ人が残した立派な家屋に住むことになった家族、ユダヤ人の家財道具や装飾品、楽器などを競売で安く手に入れた主婦、ユダヤ人が経営するライバル企業を安値で買い取って自分の会社を大きくした事業主、ユダヤ教ゲマインデ(信仰共同体)の動産・不動産を「アーリア化」と称して強奪した自治体の住民たち。無数の庶民が大小の利益を得た』

 市民の無知と無関心が引き起こしたホロコーストというのは、私たちの社会でも充分起こる可能性のある問題だ。日本のレイシストたちが言っていることと、ヒトラーが言っていたことにどんな差があるというのだろうか。

 私たちは我が国のレイシストの言うことを十分聞いて、彼らが暴走しないように働きかけなければならない、ということなのだろう。

『ヒトラーとナチ・ドイツ』(石田勇治著/講談社現代新書/2015年7月1日刊)

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