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2015年11月29日 (日)

『イスラーム国』への見方を考えよう

 結論めいたことを予め言ってしまうと、こういう風になる。

 監訳者・中田考氏によれば……

『本書は、イスラーム国を事実上の国家と見るべきである、と述べている』

『自由、人権、民主主義、民族自決、政教分離などといった領域国民国家システムが前提とするような近代西欧的理念を、いったんすべて括弧に入れ相対化しない限り、イスラーム国は理解不能な狂気の集団に映ることになる』

『半世紀以上前、日本の比較文明学者梅棹忠夫は「文明の生態史観」(一九五七年)において、「地中海・イスラーム世界をおおう、新しい「巨大帝国」の再建」を予言していた』

『欧米による覇権の終わり、真のグローバリゼーションの時代にあって、もはや日本人も欧米だけを見ているだけでは、生き残りも覚束ない。これからは欧米の世界観の枠組を当てはめるのではなく、中国、ロシア、インド、イスラーム世界の文明をその固有性において理解することが求められる』

 ということなんだなあ。

 テロリストを「テロリストだから対話不要(不可能)」として扱ってしまうと、結局、最後まで彼らとの接点を持てなくなってしまう。ゲバラやカストロなどのキューバ革命の盟主たちだって、当初はアメリカはテロリスト扱いだったのだ。

Photo 『イスラーム国』(アブドルバール・アトワーン著/春日雄宇訳/中田考監訳/e集英社インターナショナル/2015年10月31日刊)

『「イスラーム国」は世界で最も大きい脅威の一つであり、それは全く新しいタイプの脅威といえるが、その理由は三つある。
 一つ目は、「イスラーム国」が経済的に自立した組織であるということだ。 彼らはモスルのイラク中央銀行から五億USドル(約六一五億円)を強奪したうえ、石油の販売で一日あたり約二〇〇万USドル(約二四六億円)の収入を得ているほか、シリアの約半分、イラクの約半分を占める広大な支配地域の住民約一〇〇〇万人から税金を徴収している。
 二つ目は、兵器の自給体制である。「イスラーム国」は、イラクとシリア両国の政府軍拠点を制圧し、アメリカ・ロシア製の最新兵器を大量に鹵獲した。また、二七〇〇を超える戦車、装甲車、軍用車両を所有している。
 三つ目は、自ら制圧した地域を統治する能力を有していることである。こうした能力は「アルカーイダ」は持ち得なかった。「アルカーイダ」は、スーダンや「ターリバーン運動」の客人に過ぎなかったのである。このことは、「イスラーム国」を支配地域から排除するには、強大な軍事力を必要とすることを意味する』

『本書の執筆の時点でイスラーム国は、イラクの半分、そしてシリアの半分を支配下におさめ、「サイクス・ピコ協定」(第一次世界大戦中の一九一六年五月、イギリス、フランス、ロシアの間で結ばれ、オスマン帝国領の分割を約した秘密協定。)以来初めて、新たな国境線を画定した。過去に栄えた帝国が行なったように、イスラーム国は完全に支配し自立可能な国境線を引いたのである』

 まあ、やっぱり「サイクス・ピコ密約」が持ち出されるわけですね。確かに、自分たちの国境を西欧の国家が勝手に変えることは、政治的にも心情的にも許されることではないだろう。勿論、中世の十字軍の攻勢という問題もあるが、その帰結としてあるサイクス・ピコ密約にはイスラム教徒としては絶対に許せないものがあるのだろう。自らの国の行く末を自らが決められないというのは、第二次世界大戦で敗れた我が国も経験していることだけれども、政治的な敗戦がその理由だとして見れば、やはりここは政治的にも勝っておきたいと考えるのは無理のないことであり、西欧の国家が自分たちの国境を勝手に決めたのなら、自分たちは実力でそんな国境線を廃止したいと考えるのは、むべなるかなではある。

 日本では「過激派組織イスラム国」という報道の仕方をしているけれども、まあこれからは「ならず者国家イスラム国」くらいには呼び方を変えなきゃいけないのかも知れない。別に国家が国家として存立するためには他国の承認が必要なわけではない。自ら国家成立を宣言してしまえば、別にその国家が国家じゃないとは言えないのだ。まあ、あとはその「国家」と貿易をするかどうかというだけの問題ですね。

『イスラーム国の構成員を「首を切り、石打の刑を執行する以外には能がなく、殉教だけを目標としている冒険的なジハード主義者」と決めつけるのは誤っている。彼らは、行政、軍事、政治、メディア、治安など様々な分野の「頭脳」を結集した集団であり、プランニングとリサーチに長け、諸機関を運営している。こうした実態は、イスラーム国内部からもたらされた情報に基づいており、真実に近いと思われる。ヨーロッパの一流大学、軍事アカデミーで教育を受けた人材に加え、イスラーム主義思想に転向した旧イラク軍の将校が軍事指導者として参画している。旧イラク軍関係者は一切表に出ずに活動しており、カメラの前に登場した人物は一人もいない』

 である以上……

『アメリカ主導の「有志連合」の中東地域における目標の達成は容易ではなく、その道は複雑である。大統領バラク・オバマはこの戦争を避けてきたが、世論と議会の圧力に負け、開戦せざるを得なくなった』

 結局……

『アメリカがイスラーム国の「アラブ代表」や「ヨーロッパ代表」と、交渉せざるを得なくなる日は来るのであろうか? 私は、そのような日は来るのではないかと考える。イスラエルは「テロリストの首領」とみなしていたPLOのアラファト議長と交渉した。イギリスは「テロリスト」IRAと交渉した』

 である以上、アメリカだって他の国と同様、イスラム国との交渉のテーブルにつかない訳にはいかないだろう。北ベトナム代表とジュネーブで交渉のテーブルについたようなものである。つまり、それはアメリカがイスラム国に対し政治的に敗北した象徴として捉えられるであろう。

 アルカイーダの9.11攻撃によって、歴史上初めて他国の攻撃をアメリカの国の中で受けたアメリカ合衆国。ベトナムは「撤退」だけでアメリカの敗北を認めたアメリカである。そんなアメリカが遠くイスラム国家への遠征戦で再び敗北することは、我々アジア人からすれば決して喜ばしいことではないが、かといって、悔しいことではない。

 ただし、それは……

『欧米による覇権の終わり、真のグローバリゼーションの時代にあって、もはや日本人も欧米だけを見ているだけでは、生き残りも覚束ない。これからは欧米の世界観の枠組を当てはめるのではなく、中国、ロシア、インド、イスラーム世界の文明をその固有性において理解することが求められる』

 と、始めに引用したことのみに繋がるのだ。

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