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2015年5月28日 (木)

一度、ギリシャをデフォルトさせてみればいい

『ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい──。』(篠田浩一郎訳/晶文社刊)で始まる有名な小説『アデンアラビア』を書いたポール・ニザンが、実はエマニュエル・トッドのお祖父さんだったなんて知らなかった。

 だからどうだ、ということを言われても困ってしまうが、しかし、西欧文明の荒れ果てた様を見て嫌になり、はるかアジアを夢見てアデン(イエメン)に旅立った祖父ポール・ニザンと同じような立ち位置にいるエマニュエル・トッドを見ると、どこか祖父と同じことを繰り返すのが、一族というものなのだなあ、とも感じさせるのであります。

Photo 『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』(エマニュエル・トッド著/堀茂樹訳/文春新書/2015年5月20日刊)

 今年の2月6日、プーチン・ロシア大統領、メルケル・ドイツ首相、オランド・フランス大統領がウクライナ問題を巡って三者会談を開いたというニュースは、やはりロシアはヨーロッパの一部であり、そのヨーロッパの盟主であるドイツとフランスがロシアを説得にかかったのか、と思っていたら、実はそうじゃなくて、単にそれはフランス・オランド大統領がドイツ・メルケル首相の茶坊主だということを示しただけだったのか。

 ということは、本書で言う「ヨーロッパ」はEU加盟国であって、つまりロシアはヨーロッパではなく、西欧社会は今は、ロシア、EU、アメリカ(アングロサクソン)という三つの軸に分かれており、その内のアメリカの凋落が実はウクライナ問題の底にはあって、それはロシアVS.ヨーロッパという単純な対立構図ではなくて、ヨーロッパ内部のドイツを頂点とする階層構造が、その基底部分にはあるということなのだった。

『最近のドイツのパワーは、かつて共産主義だった国々の住民を資本主義の中の労働力とすることによって形成された。これはおそらくドイツ人自身も十分に自覚していないことで、その点に、もしかすると彼らの真の脆さがあるのかもしれない。
 つまり、ドイツ経済のダイナミズムは単にドイツのものではないということだ。ライン川の向こうの我らが隣人たちの成功は、部分的に、かつての共産圏諸国がたいへん教育熱心だったという事実に由来している。共産圏諸国が崩壊後に残したのは、時代遅れになった産業システムだけではなく、教育レベルの高い住民たちでもあったのだ。
 戦前のヨーロッパにおけるポーランドの教育状況と、それよりはるかに良好な今日のそれを比べると、ポーランドが現在の経済的な好調さの一部を共産主義に負っていること、さらにおそらく、皮肉きわまりないことにロシアに負っていることを認めざるを得まい。我々は将来、ドイツ的な管理がポーランドをどのような状態にするかを見る機会があるだろう。
 いずれにせよ、ドイツはロシアに取って代わって東ヨーロッパを支配する国となったのであり、そのことから力を得るのに成功した。
 ロシアはかつて、人民民主主義諸国を支配することによって却って弱体化したのであった。軍事的なコストを経済的な利益によって埋め合わせることができなかったからだ。アメリカのおかげで、ドイツにとって、軍事的支配のコストはゼロに近い』

 というエマニュエル・トッドの分析は正しいだろう。

 と同時に、これは日本の状況にも近いとも言えるのではないか。

 第二次世界大戦後、力を示してきたソ連に対抗するため、アメリカは日本を極東における対共産圏包囲網の砦とするため様々な支援を行ってきた。同時に(ここがドイツと違うところだが)日本には元々教育レベルの高い国民がいて、その労働力を元に、朝鮮戦争を期に経済復興を成し遂げ、その後も高度経済成長を成功させ、なおかつ日米安保条約に守られた日本は軍事費用のコストもゼロに近かった。

 日独の違いは、その経済的な再スタートが第二次世界大戦直後から始まった日本と、ソ連の支配が終わった1990年代までに至らなければならなかったドイツという、その間40年の差があったということ。勿論、東西冷戦時代のドイツにもアメリカの援助は大変なものがあって、そのおかげで第二次世界大戦後の西ドイツも経済的な発展はそれなりに大きかったのであるが、やはり大きな転換点は1989年「ベルリンの壁崩壊」だったのだろう。

 1958年に成立したEECは、その後1967年のEC、1992年のEUと発展してきて、それはアメリカに対抗してヨーロッパの主権を取り戻そうという政治的な結合だった。それまでのEUの中心はフランスだった。で、そのフランスが提案した欧州共通通貨「ユーロ」が欧州世界の緩やかな繋がりを壊してしまったのだった。

「為替」というものは、国と国の経済状態の違いを万全ではないが(というか万全なシステムなどというものはない!)緩やかに調整するきわめてすぐれたシステムなのだ。しかし、そんな国ごとの緩やかな経済調整システムは共通通貨によって破壊され、その結果、ヨーロッパは原始的で暴力的な経済戦争に巻き込まれてしまっている。

『ヨーロッパという空間の中でドイツの経済的スーパーパワーを検討すれば、それが、半製品の生産拠点をユーロ圏外の東ヨーロッパへと移転するといった利己主義的な経済政策を手段として形成されていることが発見されます。
 ドイツではここ数年、賃金が据え置かれたり、引き下げられています。ドイツの社会文化には権威主義的なメカニズムがあって、国民が相対的な低賃金を甘受するので、ドイツの政府と経済界はその面を活用し、ユーロ圏の各国への輸出を政治的に優先したのです。ベルリンが最大の貿易黒字を実現しているのはユーロ圏内においてです』 

 結果、現在のEUは完全にドイツの支配下におかれ、特にギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガルなどの、民主主義的伝統の脆弱なラテン国家は、それこそ国家の成立要件までドイツに握られてしまい、いまやギリシャはデフォルトの危機に陥っている。

 こうしたドイツの振る舞いに対して"NON"を突きつけられるのは、ドイツに対する永遠のライバル国であるフランスであるはずなんだけれども、そのフランスは徹底した階級国家。フランスの国家の根幹はすべてエリート階級が抑えている。そのエリートたちは、元々共通通貨を提案した保守的な人たちであるし、そんな人たちがドイツに対して批判的に動くことは絶対にない、とうのがエマニュエル・トッドの主張だ。

 まあ、エマニュエル・トッド自身もそんなエリートのひとりなんだけれどもね。じゃあどうすりゃいいの? 

 エマニュエル・トッドは「あなたがフランス大統領に選ばれたと仮定して、主要政策を四つあげてみてください」との質問に対して、次の四つの政策を上げている。

『①欧州の保護主義再編成について、ドイツ相手にタフな対話を始める。
②主要銀行を国有化させる。
③政府債務のデフォルトを準備する。
④国民教育省統括下の学校制度に新たに10万のポストをつくる。』

 というのだが、どれも難しそうだ。③のデフォルトだけは、今やギリシャが準備しているようだが、その結果どんなことが起きるのかは、まだ誰も分からない。

 そうギリシャのデフォルトはヨーロッパのみならず、今や世界最大の注目課題だ。

 意外と、何も起こらなかったりして……、ということになると、それは逆にドイツの政治的経済的失態になるのではないだろうか。

 だとしたら、一度ギリシャをデフォルトさせてみればいいじゃないか。

 っていう言い方は無責任かなあ。

『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』(エマニュエル・トッド著/堀茂樹訳/文春新書/2015年5月20日刊)

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