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2014年8月29日 (金)

『本は死なない』だけじゃ面白くない

 著者、ジェイソン・マーコスキー氏は書く。

『電子書籍革命によって新しい読書環境が生まれる可能性がある。私はその新世界のことを「Reading 2.0」と呼んでいるが、アマゾンやアップルと同様、グーグルもそんな世界の実現に欠かせない役割を担うはずだ。この大企業もまた、さまざまな可能性を秘めた驚異の電子図書館、すなわち「クラウド」に電子書籍データを保管しているからである』

 で、電子書籍革命って何だ? Reading 2.0って何だ?

Photo『本は死なない Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」』(ジェイソン・マーコスキー著/浅川佳秀訳/講談社/2014年6月18日刊)

 ヨハネス・グーテンベルグが15世紀中盤にヨーロッパで初めて金属活字による印刷を行い、活字量産方法の発明、油性インクの採用、木製印刷機の採用などの実用化に成功して、自ら印刷業・印刷物出版業を創設したのが「最初の書籍革命」だと言われている。

 それによって、ルネサンス、宗教改革、啓蒙時代、科学革命の発展に寄与したといわれている。

 基本的に、グーテンベルグが金属活字印刷を実用化するまでは、聖書(それが数少ない「本」だった)は書写されるのが普通だった。それ以外のところでは日本の黄表紙や浮世絵に見られるような木版印刷が普通だった訳だ。当然、グーテンベルグが最初に出版したのも聖書だったそうだ。

 そこに目をつけたのがマルティン・ルターである。

 ルターは、それまでの聖書が書写でしか書き写されていなかった、それもラテン語で書かれていた聖書を、唯一聖書を読むことが出来た聖職者の言うことだけを信じろと言う聖職者の優先的な立場から、それをドイツ語に翻訳し、なおかつ印刷して安価(と言っても現代ほど安価ではなかったけどね)で誰でも手に入れられるようにして、一般に普及させた。その結果「聖職者の言うことを盲目的に信じる」のではなく、「人の姿となられた神の言葉としてのイエス・キリストに従う」「聖書に書かれていないことは認めることができない」という、まあキリスト教原理主義的なのがルターの考え方である。

 ルターの言葉にノせられた農民たちが「ドイツ農民戦争」を始めたところ、後半になってからは市民・貴族・諸侯の側について農民暴徒の鎮圧を求めたり、農民たちには平和な抵抗を訴えるようになったりして、農民のルター派が支持を失ったり、ルターが持つ反ユダヤ思想がナチスに利用されたりということはあったものの、とりあえずそんなルターの考え方や行動が、それまでローマ教皇だけだったキリスト教世界に「反教皇派=プロテスタント」というものの存在を明らかにさせて、その後のキリスト教各会派の存在のものになったという意味での「宗教改革」というもののきっかけとなったのがグーテンベルグであることは間違いない。

 当然、ルネサンス、啓蒙時代、科学革命なども、そうした印刷技術による、いわば「知の一般化」の結果なのである。

 では、現代の「電子書籍革命」「Reading 2.0」によって何が起きのであろうか。

 まずは「蔵書」という概念はなくなるだろう。

 当然、電子書籍はまず自らの電子書籍リーダー(タブレットの場合もあり)に蓄積されるわけであるけれども、それは第一次蓄積にすぎない訳で、いずれはクラウドの中に蓄積されるわけである。しかし、それは自らの知識を人に見せびらかすための「書庫」ではない。では、それらの人たちはどうやって自分の知識を人に見せびらかすのだろうか。多分、それは個人・個人でやりとりされるメールや、この私が今書いているようなブログだったり、Twitter、FacebookなどのSNSでもって、「今日はこんな本を読んだよ」「昨日読んだ本にこんなことが書いてあったが、それは違うんじゃないか」といった書き込みをすることでもって、自分が読んだ本などの内容をやりとりすることによって、「ソーシャルな読書」というものを、皆が体験することによってなされるのだろう。あるいは本を読みながら、ブックマークをつけたところをSNSで他人とやりとりするという方法もあるだろう。

 しかし、問題なのはそのような体験を持ったとしても、例えば「ドイツ農民戦争」や、「ルネサンス」「宗教改革」「啓蒙時代」「科学革命」などのような、それこそ社会的な変化を催す大きな運動が起きるのかと言うことだ。というか、そこまでおこして始めて「電子書籍革命」「Reading 2.0」ということ言えるのではないか?

 例えば「電子書籍革命」によって、ユダヤとアラブ(イスラム)の戦争が終わるのか? アメリカとロシアの関係が改善されるのか? 中国の中華思想に終焉をもたらすのか? アフリカ諸国とその宗主国との関係は変わるのか? そうした世界のあり方が変わって初めて「電子書籍革命」という言葉が使えるのではないか?

 現状では、電子書籍に乗れた出版社と乗り遅れた出版社の違いがボチボチ出始めている段階だ。Amazonや楽天のようなeコマースに潰されている町の本屋もあるかもしれないが、それだって本当にeコマースにやられたのか、チェーン展開する本屋にやられたのか、単にその本屋の経営努力が足りなかったのか、そんなことすら分からずに、Amazonがいけない、TSUTAYAがいけない、ジュンク堂がいけないと言っているだけなのではないか。

 と言っているような段階で、まだまだそれこそ「コップの中の嵐」状態で、結局は出版業界がオロオロしているだけである。

 ジェイソン・マーコスキー氏が言う通り、『本は死なない』というのは事実だろう。新しいメディア(電子書籍)が生まれたって、オールド・メディアがなくなる訳ではない。ただし、市場はどんどん縮小するだけである。それは出版社によって対応次第では生き残ることもできるかもしれないし、死んでしまうかもしれないというだけのこと。本屋だって同じことで、そんな時代にも生き残る本屋もあるし、死んでしまう本屋もあるというだけのこと。

 問題はそんなことではなくて、「電子書籍革命」「Reading 2.0」によってどんな社会的変化が起きるのか、どんな革命的変化がおきるのかなのだ。

 その問題視点で読んでいると、ジェイソン・マーコスキー氏も単なる「本好きの人」の段階に終わってしまうんだなあ。

 単なる「本好きの人」に社会革命まで予想しろと言うのも酷ではあるが、しかし、やはり「革命」という言葉を使う以上は、そこまで見通したビジョンが必要なんではないだろうか。

『本は死なない Amazonキンドル開発者が語る「読書の未来」』(ジェイソン・マーコスキー著/浅川佳秀訳/講談社/2014年6月18日刊)書店で思わず手にしてしまった本なのだが、こういう本こそKindleで読まなきゃいけないのにね。

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