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2014年7月 8日 (火)

『沈みゆく帝国』と、ふたりのスティーブ

 それはアップルが特別なのではない、どんな企業にも訪れる落日の日々ということなのだ。

『とある帝国が崩壊寸前となり、いったんは追放した建国の祖をひとり呼び戻し、救世主であると祭り上げる。玉座についた救世主は、オデュッセウスかと思うほどの冷酷さとずる賢さで人々をまとめると、大きなリスクを思いきって取らせ、帝国をさらなる高みへと導く。ところが、国中が繁栄に湧きに湧くなか、皇帝は病に倒れる。自分は帝国の命運を体現する者だからと病を必死に隠すが、最後は自分も不滅ではないという現実を受け入れざるを得なくなる。あとに残された副官らはとまどい、独りよがりとなって、政が乱れ、もたつくようになる。皇帝が存命であったころのやり方に縛られ、柔軟性が失われて危険を示す兆候が目に入らなくなる。皇帝は死んでしまったが、その存在が消えることはないのだ。敵国との戦闘は続いているというのに、元副官らは、国の動かし方がわからないままだ。皆、疲れてしまった。どうしたらいいのかわからない。創意工夫の泉は枯れてしまった』

 ケイン岩谷ゆかりが描く、現在のアップルの姿だ。

Photo『沈みゆく帝国(Haunted Empire Apple After Steve Jibs)』(ケイン岩谷ゆかり著/井口耕二訳/日経BP社/2014年6月23日刊)

 ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンが提唱した『イノベーションのジレンマ』では、優良な企業が合理的に判断した結果、破壊的イノベーションの前に参入が遅れる前提を5つの原則に求めている。

原則①企業は顧客と投資家に資源を依存している
    既存顧客や短期的利益を求める株主の意向が優先される

原則②小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
    イノベーションの初期では、市場規模が小さく、大企業にとっては参入の価値がないように見える

原則③存在しない市場は分析できない
    イノベーションの初期では、不確実性も高く、現存する市場と比較すると、参入の価値がないように見える

原則④組織の能力は無能力の決定的要因になる
    既存事業を営むための能力が高まることで、異なる事業が行えなくなる

原則⑤技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない
    既存技術を高めることと、それに需要があることは関係ない

 そして、その発生の経緯は次の通り。

1.優良企業は顧客のニーズに応えて従来製品の改良を進め、ニーズのないアイデアについては切り捨てる。イノベーションには従来製品の改良を進める持続的イノベーションと、従来製品の価値を破壊するかもしれない全く新しい価値を生み出す破壊的イノベーションがあるが、優良企業は持続的イノベーションのプロセスで自社の事業を成り立たせており、破壊的イノベーションを軽視する。

2.優良企業の持続的イノベーションの成果はある段階で顧客のニーズを超えてしまい、顧客はそれ以降においてそうした成果以外の側面に目を向け始め、破壊的イノベーションの散在が無視できない力を持つようになる。

3.他者の破壊的イノベーションの価値が市場で広く認められた結果、優良企業の提供してきた従来製品の価値は毀損してしまい、優良企業は自社の地位を失ってしまう。

(以上、Wikipediaより)

『クリステンセンは、会社が失敗するのは経営がまずかったからではなく、やるべきだと従来言われてきたことをきちんとやったからであるとの結論に達する』

 つまり、これはステーブ・ジョブズを排斥し、「ジョン・スカリー~マイケル・スピンドラー~ギル・アメリオ」と続く「アップルの第一次低迷時代」のそのままである。

『ジョブズは、アップルに戻ると、会社を創造的破壊者に戻そうとする。自分がいないあいだにアップルは大企業病にかかってしまったと感じたのだ。歴代CEOはいずれも経営のプロで事業の現場を知らず、利益ばかりを気にしていた。会議や委員会がだらだらと続くばかりでなにも決まらない。そんなアップルをイノベーターに戻すため、ジョブズは、製品の種類を大胆に絞り込み、すばらしい製品を作ることに軸足を移す。新しい開発プロジェクトは、ジョブズの意見も入れつつ、シニアマネージャーが監督し、守る。生まれたアイデアは発展させ、改良したり詳しく検討したりする。最後の瞬間に捨てられることもある。また、指の隙間から漏れるものがなくなるように新しい社内手続きが作られた――「直接的責任者(Directly Reponsible Individual)」、略してDRIと呼ばれる人にタスクを割り当てるのだ。市場調査やアンケート調査もやめた。その理由として、ジョブズは、ヘンリー・フォードの言葉、「なにが欲しいかと顧客にたずねえていたら、『足が速い馬』と言われたはずだ」を挙げた』

 そして今、アップルは第二次低迷期に入ってしまった。

 以前、2012年5月18日のブログ「『僕がアップルで学んだこと』よりもティム・クックが何を出してくるのかが待ち遠しい」を書いた際に、元アップル社員でティム・クックをよく知る著者の松井博氏から、「いやいや、ティム・クックも会議ではかなり厳しく追及する人ですよ」といった感じのコメントをいただいた。確かに、本書にもあるとおり、ティム・クックもかなり厳しい人のようだ。

『誰かに焦点を当てると、クックは、「なぜだ?」「どういう意味だ?」「理解できない。もっとはっきり説明できないのか」など、満足するまで次々に質問をぶつける』

『アップルは基本的に厳しいところだが、そのなかでもクックの会議は特に苛烈だと有名である。会議に同席していたら、クックが部下に「その数字はまちがいだ。出ていけ」と言うのでショックを受けたというハードウェアグループのマネージャーもいる』

 などなど。しかし、それは会議の際の問題であって、新規のそれまで市場にないまったく新しい製品を生み出す話ではない。スティーブ・ジョブズが「現実歪曲フィールド」から発する、部下への厳しい質問でもない。それは単なる業務的な厳しさの問題だけである。

 企業というものはある種の生き物である。である以上は、その企業の歴史の中では当然「成長期」と「低迷期」が交互に表れるものなのだ。とするならば、次のアップルの成長期は、やはりスティーブ・ジョブズに匹敵する、ある種の「思い込みの超とてつもない奴」が現れるときであろう。スティーブ・ジョブズは決して優れたエンジニアではないし、素晴らしイノベーターではない。当然、アップルの第一の功労者は同じスティーブではあってもジョブズではなくウォズニアックなのである。

 ウォズニアックの生み出したAPPLE I、APPLE IIを見たジョブズが、それに惚れ込み「現実歪曲フィールド」を大いに発揮し、必要以上にそれを大きなものに見せかけ、パーソナルコンピュータというものを世の中に生み出したというのが大きいのである。

 今後、この二人のスティーブを再びアップルは生み出すことができるのだろうか……、それが一番気になることだ。

『沈みゆく帝国(Haunted Empire Apple After Steve Jibs)』(ケイン岩谷ゆかり著/井口耕二訳/日経BP社/2014年6月23日刊)Kindle版も出ているのは当然であるが、iBooks Store版もあるんだろうか。

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