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2014年7月23日 (水)

『督促OL修行日記』は「ナルホド」本ではあった

 著者の榎本まみさんは大学時代推理小説研究会というサークルに所属していたそうだ。OBには直木賞作家がいたり、出版社やテレビ局のマスコミ業界に進む人たちも多いサークルだそうなので、それなりに偏差値の高い大学の名門サークルなのだろう。

 自分で「幽霊部員だった」とは言うものの、「××という出版社で働いています」「××新聞社に入社しました」「××というゲーム会社に就職しました」という同期生たちより、「……○○カードという信販会社で、債権回収をしています……N本です」という榎本さんのほうが、実は他の同期生よりもとっくに先に作家デビューしちゃったわけだ。まあ、推理小説ではないけれども、推理小説のネタにはなりそうな話もいっぱいありそうな業界だし、それはそれで面白そうだ。

Ol『督促OL 修行日記』(榎本まみ著/文藝春秋社/2013年1月18日刊)

『お客さま相手に強く言えず回収成績がまったく出せずに苦しんでいた時、営業の本は山のようにあるのに、どこを探しても法律関係の本以外の督促の本が見つからず苦労していました。
「なんで督促の本がないんだろう? 私は督促ができなくてこんなに苦しんでるのに~!」
 そう疑問に思ったことが、この本を書こうと思った理由のひとつでした』

 と、確かに貸金業法によって厳しく取り締まられる信販会社やサラリーマン金融業界などの、取り締まりとそれへの対処に関する本は出ているが、では借金の取り立て……とは言わずに、今は「督促」「回収」という言葉が使われているんだろうが、それについての本というのはないだろう。

 何故だろう。

 多分、多重債務者とか支払困難顧客というのは、それこそ多重債務者や支払困難顧客の数と同じくらいのケースがあり、モデルケースにならないくらいなので本にできないのだろうか。また、そんな多重債務者たちから着実に回収を行っている貸金業に勤める人たちは、別にそんなに回収に困っているわけではないので、別に本を書く必要性を感じないのだろうし、今も貸金業で働いている以上、そんな業務上の秘密を人にバラしたくもないのだろう。また、榎本さんみたいに、自称ヘタレの回収数字がドベだったような人は、いち早くそんな業界から足を洗ってしまうので、そんな「督促」「回収」の本を書けるほどの経験をつむこともないのだろう。

『入社時にはお客さまに言い負かされ続けまったく成績が出せなかった私ですが、後には300人のオペレーターを指示するチームに最年少で配属され、年間2000億円の債権を回収するまでになりました。
 オペレーターとしては、半年間コールセンタートップの回収金額を維持していたこともあります』

 というのだから立派。

 しかし、ということは榎本さんの作家としての自立はしばらくはないということにもなってしまい、そこはちょっと残念でもありますがね。これだけのネタと文章技術があるのならば、是非、専門作家としてのデビューをとも思うのだが……。

『そういえば、お金を払ってくれないお客さまにもタイプがある。それに気づいた私は入金してくれないお客さまを四つのパターンに分けてみた。毎日が泣きたくなるような交渉の中で、『お客さまを血液型別性格診断のように分類し、楽しむのは、ちょっと面白い。「お! このお客さまは××タイプかも!」とばっちり当てはまると交渉がちょっと楽しくなった。

 ちなみにその分類方法は、感情と論理、プラスとマイナスでお客さまをパターン化するもの。

 感情(+)は起こるお客さま、怒鳴ったり脅迫してきたりする人たち。
 感情(-)は泣くお客さま、女性に多い。
 論理(+)は、理詰めで攻撃をしてくるお客さま、いわゆるクレーマーと呼ばれるタイプ。
 論理(-)は、理屈が通じないお客さま。ひらきなおるタイプだ』

 で、

『感情タイプはまずガス抜き』『感情タイプのお客さまは感情を発散させてから、落ちついたところで入金の目途を聞くと上手くいくようだ』

『論理タイプのお客さまは、お金を持っているが支払いを拒否する人が多い』『論理タイプのお客さまから回収するには、決して上から督促しないこと。相手のプライドを満たすことが攻略の鍵になる』

 まあ、借りた金を返すのは当たり前でしょう、とは思うのだが、信販会社の回収部署なんかにいると『そう思われるあなたは、本当に心の正しい人。世の中があなたのような人ばかりならどんなに良かったか……!』という気分になってしまうんだな。

 とは言うものの、『おおよそ20%前後――五人に一人のお客さまが支払い日を過ぎてから入金をしていました』という事実があるからこそ、また、こうした回収のための部署が出来たりするわけで、それはそれで納得もいく。

 しかし、借金の取り立て、おっと督促、回収なんて仕事はコワモテのお兄さんたちの仕事なのかと思っていたら、最近はこんな女の子たちも加わってるんだなあ、という感想が一つ。もう一つは、それくらいに督促、回収の仕事もハードルが下がってきているという感想がある。

 つまり、サラ金や信販会社というのも、それはそれ一般企業ではあるから、社会の法律を守って仕事をしなければならない。で、法律を守って仕事をする以上、その仕事は男であっても女であっても出来なければならない仕事ということなのだ。

 う~む、なかなか勉強になった。

『督促OL 修行日記』(榎本まみ著/文藝春秋社/2013年1月18日刊)

Ol_2コミック版もある。榎本さんが書いたブログを本にしたものだ。

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コメント

はじめまして。

僕はこの作品を読書会で紹介されて興味を持って読んでみたのですが、債券回収のことだけでなく、お金や人間の内側など色々と学べれる本ですね。

本当は笑ってはダメなのでしょうが、返済出来ない代わりに野菜を送るお客さんのストーリーなど、すこし笑えるような要素があるのが本書のミソだと思います。

お客さんの信用を守るために、督促の仕事があるという、著者の先輩の言葉は修羅場を経験したものでしか言えない優しさなのかな、と思いました。

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