『迷わない。』って言うのは怖いねえ。
『迷わない。』って「モーニング娘。」か? ってどうでもいいことなんだけれども。
『迷わない。』(櫻井よしこ著/文春新書/2013年12月20日刊)
ポイントは
『あのころの私はリベラルな考え方をしていました。ポンドさんの人脈もそうでしたし、時代背景も若さも、リベラルを推し進める要素だったことでしょう。そんな思考にあわせて、雑誌「世界」などを毎号読んでいました』
という櫻井よしこ氏が、何故、今のような「ゴリゴリのタカ派的思考」になったのか、というのがこの本を読んでみようかなと考えた理由なのである。
私も日本テレビの「きょうの出来事」で初めて櫻井よしこ氏を知った訳だが、その頃の櫻井さんはそれほど政治的な姿勢は表に出していなかった。というかニュース番組という性格上あまり個人のオピニオンを出せるものではなく、それは仕方のないことであったのだが、しかし、実際には当時から保守派に属する立場だったんだろうな。
なにしろ
『海外での日本の地位、評価、存在感は下降していました。段々と追いつめられています。その典型例が歴史問題です。このまま日本が本当にアジアの悪者にされてしまう。大変な危機です。
また、台頭をはたして大国となった中国の前で、日本の国防は甚だしく脆弱です。この脆弱さを乗り越えて、国防の基本を整えなければ、これまた大変なことになります。
国際社会に日本の姿を正しく見てもらって共感を得なければ、この危機は乗り越えることができません。逆にいえば、日本を正しく理解してもらえば、必ず世界は日本の目指すところをきちんと受けとめ、共感を示してくれます。そのために、日本自身が自らについて語り、発信しなければなりません。私たちがいまどんな国を目指しているのか、日本はどんな歴史を歩んできたのか、どのような価値観を抱いているのかを説明しなければ、国際社会の共感を得ることは、およそ不可能です』
と言ったって、その発言を櫻井さんがすることで、かえって国際社会は日本を誤解するだろうし、敵対するのである。
『前にお話ししたように、若いときの私は、リベラルな考え方をしていました。若さは、理想を求めます。戦争がないほうがいい、核兵器がないほうがいい、と。であるならば、そのような理想の国や、良い社会を作るために、自分は尽くして発言し、情報を伝え、働くべきだと思います。
しかし、取材を通していろいろ学んでみますと、現実世界は理想的には動かないのがわかってきます。人間は冷徹な鉄の法則で縛られているという面があります。悪を閉じ込めていたパンドラの箱を一度開けてしまった人類は、出てきた悪をもう一度箱の中へ戻すことはできないのです。性善説と性悪説でいえば、性悪説で考え、備えるべきだという現実が見えてきます。取材を通して現実を知るにしたがい、現実から目を逸らしてははならないことを学びとっていきます。
そのプロセスを、私は辿ってきたと思います』
なるほど、
『朝鮮半島問題も、歴史認識問題も、日本テレビにかぎらず各局の報道は、得てしてリベラル系です。私は自分の限られた学びを通して、世の中に事実として報じられることは、必ずしも事実そのものではない場合もあるのではないか、と感じ始めていました。
そこで、報道局の若い部員たちと、気になる事柄について、つとめて話すようにしました。
たとえば、歴史認識についてです。「南京事件は、大虐殺などなかったんですよ」「慰安婦の強制連行はなかったのですよ」などなどです。
みんな真面目な顔で聞いていました。しかし、陰では、
「櫻井さんは気が狂ったのでは」
などと言っていたのが伝わってきました』
いやいや「気が狂った」のではなく、心底そんな考え方をしているのであったのだろうなあ。。
『そういえば、ベテランのデスクから、こんなふうにも言われました。
「櫻井さんはウルトラ右翼だからなあ」
冗談めかしていましたが、この人は多分本気だったと思います。私は自分の立ち位置が右翼だなどとは全然思っていません。国際社会から見るときわめた真っ当な、中道の考え方です。その私を「ウルトラ右翼」という人の立ち位置は、控えめに言っても国際社会では「リベラル」ないしは「左翼」ということになるのではないでしょうか』
って、そんなことはない。だいたい日本テレビに左翼なんている筈ないじゃないか。基本的に讀賣新聞系列の日本テレビ放送網である。保守論壇に属する讀賣系列の日本テレビの社員は「保守」かせいぜい「リベラル」である。その人を捉えて「左翼」だなんて言うのだから、櫻井さんの右翼ぶりも相当なものなのである。
で、結局、そんな「自分のオピニオンを言えないテレビ・ニュース」の世界には自分の居場所がないと感じたので、活動の場所を雑誌に求めたのではないだろうか。
『それにしても、「きょうの出来事」の直接の仲間との思い出は、たくさんの楽しいことばかりです。番組が夜中に終わりますと、日本テレビ報道局の社員だけではなく下請けのスタッフもみんな誘って、二、三十人で繰り出しました。朝までよく飲み明かしました。一升瓶が一晩で何本も空きました』
というのは私も感じていたことである。
実は私も学生の頃、日本テレビ報道局でアルバイトをしていて、昼間の学生だったので基本的には夜バイト。1年目は報道部のボーヤさん(格好よく言えばニュース番組のアシスタント・ディレクター)で、2年目がニュース・フィルムの編集助手。まあ、この辺が私を映像思考を更に加速させた理由なんだけれども、やはり「きょうの出来事」の後の「反省会(という名前の社内の飲み会)」や、社員の人たちやバイト仲間などとの飲み会などなど、思い出もいろいろある日本テレビなのである。だからこそ櫻井よしこさんにも親しい感じあがるのだが、その彼女がねえ、あのエレガントな雰囲気で、超右翼的なご発言をするんだから、もう困っちゃうのである。
だって、その雰囲気だけでOKになっちゃう男もいそうだから怖いんである。
そんなに徴兵制をやりたいですか? そんなに戦争をやりたいですか?
『迷わない。』(櫻井よしこ著/文春新書/2013年12月20日刊)当然、Kindle版もある。
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