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2013年11月 8日 (金)

映画『スティーブ・ジョブズ』は上滑りのアメリカ人向けお子ちゃま映画だ

 伝記『スティーブ・ジョブズ』を原作にしているのかと思ってクレジットを見ていたが、いつまでたっても、"Based on the Biography STEVE JOBS by Walter Issacson"が出てこない。

 つまり、どうも脚本のマット・ホワイトリーのオリジナルのようだ。まあ、それはこの時期のスティーブ・ジョブズものなのでという、私の勝手な思い込みなのでどうでもよい。ところがこの映画、なんか上滑りで面白くないのだなあ。

201311051202262『スティーブ・ジョブズ』(製作・監督:ジョシュア・マイケル・スターン)

 映画の公式サイトはコチラ

 つまりスティーブ・ジョブズの話なら必ず出てくる「現実歪曲フィールド」の話が出てこない。

 現実歪曲フィールドとは「ジョブズの魅力、カリスマ性、虚勢、誇張、マーケティング、宥和政策、持続性をもって、ジョブズ自身と他人に、ほとんどどんな考え方でも吹き込む能力であるという。現実歪曲フィールドにより、実現困難性についての規模感や距離感を歪ませ、今手元にある作業が容易に実行可能な気になると言われている。現実歪曲フィールドは非現実的と非難されてきたが、ジョブズに近い人々によると、不可能と見えたことが実現できたことで、実は最初から実現可能だったという感覚が作りだされた具体例が幾つもあるという」(Wikipediaより)と書いてしまうとよくわからないが、「他人の脳みそを盗むのはジョブズにとって普通のやり方さ。まず人のアイデアを鼻であしらっておいて、その1週間後には、素晴らしいアイデアを思いついたなんていいながら戻ってくる。そのアイデアというのは、もちろん1週間前に誰かがジョブズに話したアイデアなんだ」という、つまりそれが「現実歪曲フィールド」なんだというスティーブ・ジョブズをよく知るジェフ・ラスキンの言葉の方がよくわかる。

 スティーブ・ジョブズはイノベーターではないし、アイデアマンでもない、しかし、ユーザーエクスペリエンスを追求する姿勢だけは誰にも負けないものを持っていた。アップルコンピュータを作り上げたアイデアはスティーブ・ウォズニアックにまったく負っている。ジョブズは単なるエレクトロニクス・オタクのウォズニアックと異なり、それをユーザーが使い易くするためにどうすればいいのかを追求した。その結果「パーソナル・コンピュータ」というものが世の中に登場したのである。

 その辺をキチンと描かなければ、アップルコンピュータはまるでスティーブ・ジョブズのアイデアでできた会社のようになってしまう。ウォズニアックがアップルを去るときに言うアップルに来た理由。ヒューレット・パッカードのエンジニアだったウォズニアックがアップルに来た理由は、ここが「面白いことができそうな場所」だったからだという。つまり、それができなくなったから、アップルを去るということ。つまりそれがジョブズの「現実歪曲フィールド」だったのである。

 マイクロソフトがWindowsにGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)を搭載した時に、それはMac OSのパクリだと言って、ジョブズは怒り心頭に達し、ビル・ゲイツを電話で罵倒する。しかし、Mac OSのマウスとGUIだって実はゼロックスのパロアルト研究所で見せられたマウスとGUIのパクリだったのである。これもまた「現実歪曲フィールド」。

 スティーブ・ジョブズがアップルを追われて、次に手がけたのはNeXTコンピュータであり、ピクサー・スタジオのルーカスフィルムからの買収である。NeXTもピクサーも使っているのはパーソナル・コンピュータではなくワークステーションだ。現在ではパソコンが高性能化してしまい、いまやワークステーションはパソコンにとって代わられている。ところが、このMacパソコンのOS、Mac OS Xのベースになっているのは、実はワークステーションのOSとして有名なUNIXだということはご存じだろうか。つまり、UNIXベースでパソコン用に作り直されたOSがMac OS Xなのである。

 つまりこれも現実歪曲フィールド。なぜ、映画はそれを描かないのだろう。

 こうしたさまざまの現実歪曲フィールドを描かずにスティーブ・ジョブズを描こうとしたのが、この映画『スティーブ・ジョブズ』なのである。

 これを描かずに、スティーブ・ジョブズを描こうとすれば、それは単なる若手起業家の成功と、失敗と、再生の話というだけの薄っぺらなものになってしまう。それでいいのか? だったら別にそれはスティーブ・ジョブズとアップルじゃなくても、どこの企業の起業話でもいいということになってしまう。

「アップルのスティーブ・ジョブズ」を描こうというのなら、やはり「現実歪曲フィールド」は避けて通れないものなのだ。しかし、それは描かずにスティーブ・ジョブズを描いたつもりになっている、マット・ホワイトリーとジョシュア・マイケル・スターンのような凡庸なクリエイターにとっては、多分永久にこの「現実歪曲フィールド」は理解できないのだろうな。あるいは、了解していて、しかし、アメリカのおバカな観客にはそれは理解できないだろうということで、オミットしたのか。

 結局、映画は単なるアメリカン・サクセス・ストーリーでしかなく、映画のラストはアップルが時価発行株式総額で世界一になったという成功譚でもって終わる。

 しかし、ジョブズ亡きアップルにとって重要なのは、後継者のティム・クックCEOになってからの低迷である。

 勿論、そこまで描いてしまっては、それがジョブズの映画ではなくてアップルの映画になってしまう。しかし、単に時価発行株式総額で世界一になったということよりも、ジョブズの死去と共に、アップルの使命も終わったということを描かなければ、単なる上滑りの伝記映画にしかならないのである。

 ジョブズ役のアシュトン・カッチャーは顔や仕草はよく似ていたが、ただそれだけ。やっぱり精神まで似させないとね。

 それとも、そんな子供だましの伝記映画じゃないとアメリカ人は理解できないってのか?

 それもまた深刻な問題だ。

当然、コチラの方が公式伝記として優れている。当然Kindle版が出ている。iBooks App版もあると思うけどね。

『バトル・オブ・シリコンバレー』若き日のスティーブ・ジョブズとビル・ゲイツを描いていて、パロアルト研究所からのパクリの話もちゃんとやっている。顔は似ていないが、もしかすると、こちらの方が面白い?

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