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2013年9月17日 (火)

『モバイルハウス三万円で家をつくる』坂口恭平は現代の鴨長明になれるのか?

 ブエルタ・ア・エスパーニャ2013は第20ステージの争いに勝利したクリストファー・ホーナーがヴィンチェンツォ・ニーバリを完全に引き離し、総合優勝をモノにした。途中までマイヨ・オロを着ていたニーバリだったが、結局はステージ優勝の多いホーナーには勝てなかったなあ。

 で、話は全く変わって、『TOKYO 0円ハウス 0円生活』『隅田川のエジソン』『独立国家のつくり方』でお馴染み、早稲田大学建築学科卒業の「アーチスト」坂口恭平氏の新刊が出た。

2013_09_10_31732 『モバイルハウス 三万円で家をつくる』(坂口恭平著/集英社新書/2013年8月26日刊)

 で、考えてみれば『TOKYO 0円ハウス 0円生活』や『隅田川のエジソン』で、タダで家を作ったホームレス(って言語矛盾)の話を既に読んでいるので、なんか既視感のある本なのであった。が、しかし考えてみれば『0円ハウス』や『エジソン』は、言ってみればそんな「タダで家を作る」プロフェッショナルの話で、そんなプロフェッショナルにはなり切れないアマチュア向けに、ホームセンターで材料を買い入れて家を作れるよという本なのである。

「モバイルハウスかあ、ちょっと敷居が高いな」と考えていた私が、より自分の理想に近いものというイメージで捉えていたのが「方丈庵」であった。そう鴨長明の『方丈記』に書かれている方丈庵。ほぼ四畳半の小さなワンルームの家。地面に石を据えて土台とし、その上に柱を組んで杉板数枚を重ねて屋根を葺き、薄い板でつくられた軽量の壁や建具をはめ込んだつくりで、5m四方ぐらいの平坦な土地があれば、数人の大工さんが半日で完成してしまう、きわめて簡素な作りの方丈庵。

 が、しかしこの『モバイルハウス 三万円で家をつくる』を読みながら考えてみると、この方丈庵こそがもしかすると、およそ800年前に考えられていた「モバイルハウス」なのではないかと考えるようになった。つまり、そんなに簡単に作ることができてしまう方丈庵は。一方、壊すことも簡単で、さらにそれを大八車かなんかで持ち運んで、好きなところに移り住んで、自由に暮らす。

 実は鴨長明はそんな理想の生活を送りたくて方丈庵を考案したのではないだろうか。更に、この方丈庵って「三万円」もかかっていない、というか殆どタダでできているんじゃないか……なんて、貨幣価値の変化を無視した言い方をした訳なのだが、考えてみれば鴨長明の時代なんて貨幣経済なんてものはなかったわけで、まあ、貿易とか一部の取引には貨幣も使っていたが、大半の経済は「物々交換」で行われていた訳で、本当に鴨長明は方丈庵をタダで作ってもらったんだろうな。

 もうひとつ言えば、その時代には「土地の私有制度」なんてものもなくて、人は為政者によって土地に縛り付けられていた訳で、しかしそんな為政者から逃げ出してしまえば、どこに住もうが自由だった。下鴨神社の神主の家に生まれた鴨長明のような人ならもっと自由にいろいろなところを行き来できたはずである。で、現在の京都市伏見区日野町という、当時は京都の町はずれに適当な場所を見つけた鴨長明は、そこに大工さんを読んで方丈庵を作らせ、自ら隠遁して随筆家になったわけである。

 一方、鴨長明は琴や琵琶の奏者としても有名で、なんか段々坂口恭平に似てくるのであった……、って逆か。むしろ坂口恭平が鴨長明に似てくるのであるのが順番だよな。

 まず、最初に『0円ハウス』『TOKYO 0円ハウス 0円生活』『隅田川のロビンソン』などのノンフィクションを鴨長明の『方丈記』のような随筆に例えると、その後説話集や歌集を出した鴨長明のように『幻年時代』という小説を出したり、ギターを弾いたり、独立国家を目指して勝手に政権演説を始めたりという、今の時代のメディアを使った、現代の鴨長明と言えるのではないだろうか。

『脆い家を三十五年ローンで購入して、お金を持ってもいないのに無理して買ったマイホームに暮らすために働き続けるなんてやはりおかしい。
 家は高くても買えるが、安くても建てられる。
 僕がやりたいのは、家を建てる方法の「変化」ではなく、家というものの在り方の「幅を広げること」なのである。
 家は数千万円でも建つが、二万六千円でも建つ。しかも、実は〇円でも建つ。
 こうやって家というものの幅を広げていくと、どんな人でもその人に合った家でいいんだと理解できる。ローンを組まないと買えない家なんて買う必要はない。
 ローンは組まないほうがいい。銀行が喜ぶだけだ。
   <中略>
 これがお金もかけずに簡単にできる革命の方法論である』

 というのが本書の結論。

 更に進めて、坂口恭平は「モバイルハウスヴィレッジ計画」というのを進めているそうだ。

『全国各地に市民農園というのは存在している。現在、市民農園というのはほとんど趣味の世界になっているが、農地よりも住宅のほうが切実な問題なのだから、市民農園を、市民「農園付き住宅区」にしてはどうか。
 初期投資は、勿論二万六千円。使用料金が月に四百円。
 また、ここの共同で利用するためのキッチンもある水場を設置し、共有して使う。トイレはコンポストトイレを導入する。こうすれば、自分の糞尿を肥料に変えて、それで畑で野菜をつくることができる。
 月四百円の一戸建ての家。そんな冗談みたいな話も、法律を変えずに実現可能なのだ』

 という。

 そのための新しいプロジェクトが「ZERO PUBLIC」。

 私的所有の概念に奪われてしまった土地を共有物として取り戻すための実験である。

<

『モバイルハウス 三万円で家をつくる』(坂口恭平著/集英社新書/2013年8月26日刊)この本の映像版とも言うべきドキュメンタリーもある(監督:本田孝義)。また『TOKYO 0円ハウス 0円生活』を原作にした堤幸彦の映画『MY HOUSE』という傑作映画もある。

 さて、私も京都に行って下鴨神社の方丈庵でも見に行こうかしら。

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