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2013年8月 1日 (木)

『クラウドソーシングの衝撃』の衝撃

 これが「雇用者vs.被雇用者」という関係ならば「最低賃金法」なんかの対象になるんだろけれども、「発注者vs.受注者」という関係だとまったくそうした法律の対象にならないという、ちょっと恐ろしいことになる。

 日本におけるクラウドソーシングの最大手、ランサーズのサイトを見ると「フリーランスへの支援」というのが一番の眼目ではあるようだ。しかし、それが企業に対して「最安値でのフリーランス探し」になってしまうと、ちょっとそれは問題だよなあ。

 勿論、その結果いいこともあるんだろうけれども、物事の裏表というのは考えとかないといけないなあ。

20130728_94538 『クラウドソーシングの衝撃 雇用流動化時代の働き方・雇い方革命』(比嘉邦彦・井川甲作著/錦戸陽子編集/インプレスR&D/2013年7月12日刊)

 例えば、『P&G(プロクター&ギャンブル:引用者注)社のConnect & Develop戦略では、新製品の開発からデザイン、研究、マーケティング、技術的問題解決など多岐に渡るハイエンドの問題にクラウド人材を活用しており、50%以上の商品にこれらクラウドソーシング人材が寄与していると報告している』という。こうした動きの大きな要因は『2010年3月8日にオバマ政権から各省に出されたオープンイノベーションを促進するためにクラウドソーシングを積極的に活用するように、との通知があるようだ』ということ。つまりアメリカ政府自身が『NASAはTopCoder Inc.とハーバード大学の協力のもと、NASA Tournament Lab (NTL) というサイトを開設して、クラウドソーシングで各種アプロケーションを開発』しているし、アメリカ国防総省の機関である『Defence Advanced Research Project Agency (DARPA) は、GEとMITの協力のもとで、クラウドソーシングを活用する革新的なデザインのプラットフォーム、vehicleforg.milプログラムを開始した。このプログラムでは、軍事目的車両などの設計から、航空機や医療機器などの高度な設計をクラウド人材によって行う。プログラムの目的は、オープンイノベーションの促進と、従来の軍事産業による設計よりもはるかに短期間で、しかも低コストで設計を行うことにある。たとえば、Fast, Adaptable Next-Generation armored vehicle (FANG) と呼ばれる多目的軍事車両の設計から試作機の製作まで合計5000万ドルの予算を付けているようだが、これは従来の軍事産業が要求する額の10分の1にも満たない。ちなみに、FANGの設計には159件の応募があり、そのうちの100件は非常にレベルの高いものであってとのことである』という具合にアメリカ政府自身が積極的に進めているのが、このクラウドソーシング政策なのであった。

 確かに、フルタイムで雇われている設計技師や開発担当者を使うよりは、こうして公募方式で設計を募ることで開発コストを軽減することは可能だろう。ただし、その代わりそうした開発技法は、開発内容が外部に漏れることが前提となる訳で、まあ、そうした外部に漏れてもいい程度の軍事開発ならそれでもいいのかもしれない。

 問題は、そうしたクラウドソーシングの考え方をとった場合、企業にとっては開発・調査などのコストを大幅に削ることが出来る代わりに、企業に属していたフルタイムワーカーがいらなくなるということである。つまり、フルタイムの開発担当者はリストラにあうということである。あるいは、リストラにあわないでも、クラウドソーシングでもって使う雇用費用でもって雇われざるを得ない、ということである。

 勿論、それに対抗しうる方法はあるわけで、『インターネット上でフリーランスが活躍する時代になると、ワーカーはこれまで企業を通じて得ていた経済的保証、福利厚生、同僚との交流、教育などが受けられなくなり、そういったサービスを提供する組織として、新たなギルド的組織が誕生するだろう』『そして、現在の労働組合や学会、派遣会社が、経済的保証や福利厚生といったサービス提供の機能を持つことにより、将来的にギルド組織になりうる』ということなのである。勿論、そうしたギルド組織が発注者のコスト削減意識に対抗して、高度な技術をもったワーカー同士で発注者と交渉し、よりよい収入を得るために働くということにもなるだろう。

 つまり、これは人々の新しい働き方であるとともに、人間の働き方を中世のギルド制の時代、つまり資本主義社会の誕生以前、市民革命以前の姿に戻すということでもある。

 なんとも高度に発達した資本主義がグローバル化し、国民国家を超える存在になることまでは理解していたが、その後の世界が中世ギルド社会になるとは思わなかった。が、しかし現在のネットの発達状況を見ると、それも頷首できないことではない。

 以前、ポストグローバリズム社会の後には、小さな企業が連立し、個人が個人として仕事をするようになるだろうということを書いたことがあったが、その結果が中世ギルド社会であるとは予想しなかった。しかし、国民国家が瓦解し、イギリス東インド会社やオランダ東インド会社のようなグローバリズムの後にはギルド社会になるというのも、実は人類が経験してきた歴史なのである。つまり個人が個人として裸になってしまっては弱くなる。だから、そんな弱い個人がギルドを結ぶ。そんな歴史の繰り返しが、少しづつ姿を変えながら行われていくという風に考えるのであれば、まさにポストグローバリズムの後にはギルド社会ということにも納得がいくのである。

 ただし、そんな厳しさを持った社会にも少しは救いがあるかもしれない。

 例えば、現在の就職活動にクラウドソーシングを取り入れたらどうか、という提案がある。

『学生は、やりたい職種が決まった時点で、その職種に必要な基礎スキルを身につけ、クラウドソーシングサイトに登録して受注することで実績を作る。採用企業は、応募学生のサイトでの評価と実績を使ってスクリーニングをし、絞り込んだ応募者のみに面接を行えばよい。この方法は日本の学生の意識改革につながるであろう。よく言われることであるが、日本の学生は欧米の学生と比べて精神的に幼い。これは、就職活動中の学生の意識を比較するとよくわかる。欧米の学生は、就きたい職業や、やりたい職種を述べるのに対して、日本の学生は、就職したい業種や企業名を挙げるのである。つまり、日本の学生の多くには、プロフェッショナルを目指すという意識が欠落しているといえる。就職するためには、クラウドソーシングサイトで実績を積むことが前提条件になれば、この状況は大きく変わるであろう』

 ということ。

 まあ、確かに「学生時代はサークルでリーダーをやりました」なんて言うよりは、クラウドソーシングで実際に仕事のスキルを身につけた方が、企業も採用しやすいし、学生も自分にむいた仕事って何だろうかということが分かって、お互いミスマッチを避けることが出来ることが多くなるだろう。

 そういう良い点もあるということ。

 まさしく、世の中の裏表両面を見る必要があるということなのだ。

『クラウドソーシングの衝撃 雇用流動化時代の働き方・雇い方革命』(比嘉邦彦・井川甲作著/錦戸陽子編集/インプレスR&D/2013年7月12日刊)当然Kindle版があります。600円安い!

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