フォト
無料ブログはココログ

Amazonウィジェット

  • Amazonおまかせリンク
  • おすすめウィジェット
  • Kindle

« 『ビッグデータの覇者たち』は壮大な「ゴミ集め」 | トップページ | 平成二十五年 牛の角突き初場所 ヨシターッ! »

2013年5月 3日 (金)

『戦争の常識』は最適の「軍隊」入門書だ

 軍事ジャーナリストとしてはかなりリベラルな人なのだろう。近現代における『戦争の常識』を解説する本書においてもそのリベラルさは発揮されていて、妙な政治的立場が出ていないだけ読みやすい。

Dscf7402『戦争の常識』(鍛冶俊樹著/文春文庫/2005年2月20日刊)

 鍛冶氏によれば『世界各国の歴史をひもとけば明らかなように、大体どこの国でも軍隊は祖国統一時の戦争で誕生する。軍隊が登場して、しかる後に国家が確立するのである。従って国家が確立した時点において軍隊は、戦争遂行に必要な権限を全て手中に収めている』、しかし『自衛隊は戦後の混乱期に生まれた。自ら祖国統一戦争を遂行したわけでもなく、しかも誕生時には主要官庁や地方自治体は確立しており、後発の行政組織として出発したから権限はいわばゼロである。自衛隊は非常事態用の組織なのだが、そのための権限を先輩格の各官庁から分けて頂かなければならない。平和な時代に非常事態を想像するのは難しい。また強いリーダーシップがなければ役所は変わらないのが常であるから、有事法制でも各官庁が気前よく持ち前の権限を手放すわけはない。各国で有事法制が特に問題にもならないのに、日本だけ問題になるのはこうした背景がある』という、自衛隊が「軍隊」としては如何に中途半端な存在であるかを説く。

 ということで「日本の自衛隊は防衛政策以外には何ら関与できないお飾りの機関になっていることを指摘し、ハコモノに過ぎない防衛省は解体して、陸上自衛隊は警察庁・総務省、海上自衛隊は海上保安庁・水産庁、航空自衛隊は国土交通省と一体化し、自衛隊が日常的に民政にも参加できるような自衛隊本位の行政改革が不可欠である」と説くことになるのだが、それは既得権益を固守したい官僚の激しい抵抗どころか、他省庁との摩擦を避ける防衛省・自衛隊幹部からも疎んじまれることになり、1994年に一等空尉で航空自衛隊を退職することになるのだ。

 が、しかしそんな鍛冶氏の立場から来る発言はその部分だけ。あとはひたすら「戦争の」「軍隊の」「兵隊の」常識をリベラルに語るだけである。

 そんな内容を目次から;

Ⅰ 国防の常識
 1 地政学とは何か?
 2 防衛、国防、安全保障
Ⅱ 軍隊の常識
 1 軍隊とは何か?
 2 軍隊と法
 3 軍事と政治
Ⅲ 兵隊の常識
 1 軍政と軍令
 2 軍隊と階級
 3 軍隊と社会
Ⅳ 陸軍の常識
 1 歩兵が基本
 2 戦車とは何か?
Ⅴ 海軍の常識
 1 軍艦とは何か?
 2 艦隊決戦の行方
 3 通商破壊戦
 4 上陸作戦
Ⅵ 空軍の常識
 1 空軍とは何か?
 2 戦闘機とは?
 3 その他の軍用機
 4 空軍の編成
Ⅶ 現代戦の常識
 1 弾道ミサイル
 2 核戦争の可能性
 3 宇宙戦争
 4 情報戦争
Ⅷ 自衛隊の常識
 1 自衛隊は軍隊か
 2 陸上自衛隊
 3 海上自衛隊
 4 航空自衛隊
 5 情報本部

 というラインナップ。つまり、ひたすら「解説」に邁進しているのである。政治的な立場からくる発言は上記の部分だけ。

 というか、軍隊や軍事について書かれた本は大体なんらかの政治的立場から書かれいるので、読む我々も色眼鏡で読むことになってしまう。特に潮書房光人社あたりから出版されている本なんかはその代表なのであるが、さすがに文藝春秋社としてはそういった方向には行かずに、『戦争の常識』を説く「解説本」に徹しているのである。

 元自衛官である鍛冶氏の書く戦争の常識である。自衛官ということは自ら戦争に赴いたことはない人なわけであるが、しかし、戦争については我々のはるか上の知識を持っている筈だ。

 そんな人が政治的立場をなげうって書いた解説本はそれなりに「誰でも読める」解説本になっている。

「自衛隊って何だ」「自衛隊は軍隊か」「国が軍隊を持つってことはどういうことか」などに興味のある方が読むための入門書としては最適なのではないだろうか。

『戦争の常識』(鍛冶俊樹著/文春文庫/2005年2月20日刊)

« 『ビッグデータの覇者たち』は壮大な「ゴミ集め」 | トップページ | 平成二十五年 牛の角突き初場所 ヨシターッ! »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/549500/57294375

この記事へのトラックバック一覧です: 『戦争の常識』は最適の「軍隊」入門書だ:

« 『ビッグデータの覇者たち』は壮大な「ゴミ集め」 | トップページ | 平成二十五年 牛の角突き初場所 ヨシターッ! »

2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

PEN PEN チョートクカメラ日記

自転車フォトグラファー 砂田弓弦

シュクレはお留守番

アローカメラ&我楽多屋

まだ東京で消耗してるの?