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2013年5月 8日 (水)

『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』にちょっと足したいこと

『日本の雇用システムは、終身雇用(長期雇用)、年功賃金、企業別組合によって特徴付けられ、これらを称して「三種の神器」とも言う』というところまでは分かる。しかし、既に三種の神器の上二つ、「終身雇用」と「年功賃金」は崩壊しつつあるというのに、「企業別組合」だけは生き残って、多分、今後ともかなりの年数は生き残るだろうと予想されるのは何故か、という部分に応えないと、本来はこの本の設定『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』には答えたことにならないのだがなあ。

2013_04_29_20752『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』(今野晴貴著/星海社新書/2013年4月25日刊)

 今野氏の論はまともだ。しかし、この「企業別組合」というものが、日本の労働市場を他の先進国から著しく遠ざけて、おかしな形のものにしてしまい、「過労死」という他の国の労働者からは信じられない状況を招いていることの原因なのだ。ということは書いてあるのだけれども、ではなぜそんな変な形の労働組合のあり方が日本で生まれたのか、ということには答えていない。それが残念。

 日本における労働組合は、アメリカ帰りの高野房太郎や片山潜らによって1897年に結成された労働組合期成会が最初であるとされる。この労働組合期成会は鉄工組合、日本鉄道矯正会、活版工組合などの「職能別組合」だった。しかし、1900年に治安警察法が施行され、次第に弾圧を受けて解散してしまい、日本の労働者は企業ごとに分離され管理されてしまったのである。

 それが第二次世界大戦後、日本国憲法第28条で労働者の「団結権」「団体交渉権」「団体行動権(争議権)」が認められ、一方共産党の指導の下「産業別組合」が結成されたりして、大きな争議の元になると考えた官僚の手によって、むしろ日本政府は企業に対して労働組合の結成を積極的に促すように働いて、ここに「企業別組合」が結成されるようになり、再び日本の労働者は企業ごとに分離され管理されるようになってしまったのである。同時に「終身雇用」「年功賃金」というものも、戦後の官僚の指導の下に、「護送船団方式」という経営方法と一緒に形作られてきたのである。

 つまり「護送船団方式」「終身雇用」「年功賃金」「企業別組合」といったものは、戦後の日本の高度経済成長を支えた「基本的な思想」だったのである。

 しかし、それが崩壊してしまい、もはや護送船団方式は新自由主義の下に放棄され、「終身雇用」「年功賃金」も一緒に放棄されてしまっている。ただ一つ残ったのが「企業別組合」なわけだけれども、こちらもユニオンショップ制の組合だけはまだ生き残っているが(実際には「尻抜けユニオンが多いが)、しかしそうではない企業では労働組合への加入率はどんどん低下している。

 そんな時代だからこそ、今野氏はこうした企業別労働組合に代わって「個人加盟ユニオン」を提案するのである。

 本来は産業別労働組合によって産業別最低賃金を、あるいは職能別労働組合でもって職能別最低賃金を設定しべきなんだろうけれども、そのためには産業別、あるいは職能別でもってその労働者たち自らが立ち上がって組合結成をしなければならないという、かなり高いハードルを超えなければならない。

 そこでもうちょっとハードルの低い「個人加盟ユニオン」を提案するのであるが、しかしこうした組合は既に「全国一般労働組合」などもあり、決して今野氏の提案が新しいものではない。また既に合同労組の中にはフリーター全般労働組合のようなものもあるのだ。ところが問題なのは、そうしたフリーターたちやブラック企業に勤務している人たちの意識の低さなのである。

 彼らは「権利」というものがどこかに既に存在していて、誰かから与えられるものだろう、と考えている。しかし、権利は自ら勝ち取るものだけがそれを得られて、使えるものなのだという基本的なことを理解しなければならない。

 まさに今野氏が言う通り;

『黒人は黒人団体を結成してはじめて政府に黒人の権利の要求ができる。
 女性は女性団体を通じた働きかけを行う。
 ブラック企業の社員は、労働NPOやユニオンを通じて、これを行うのである。
 こうした具体的な「関係の回路」があるからこそ、民主主義が成り立つ。
  <中略>

 けっして権利は「上から」与えられるものではない。
 ひと言でいって、「あなた自身が権利や政治をつくっているのだ」と言いたいのである。
 関係しだいで、「労働」のあり方は変えることができる』

 ということなのだ。

 人は自ら立ち上がる人だけを助けるのである。

『日本の「労働」はなぜ違法がまかり通るのか?』(今野晴貴著/星海社新書/2013年4月25日刊)

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