フォト
無料ブログはココログ

Amazonウィジェット

  • Amazonおまかせリンク
  • おすすめウィジェット
  • Kindle

« 『クリエィティブ喧嘩術』というよりもドキュメンタリー的ドラマ作りが気に入った | トップページ | 新浦安と浦安、こんなにも街が違う »

2013年5月29日 (水)

『出版・新聞 絶望未来』って言うほどのものではない

「The Print Media Are Doomed」(もうプリント・メディアはオシマイ)というサブタイトルがついているが、ちょっと待ってほしい。メディア産業はオシマイだが、メディアそのものはオシマイにはならないのだ。

2013_05_26_52923『出版・新聞 絶望未来』(山田順著/東洋経済新報社/2012年11月15日刊)

 たしかに、「デジタル革命」によって、出版「業」や新聞「業」は終わりが見えてきている。

 第4章の終わりに「ある出版社の重役の本音」を書いているが、その中に『そもそも、IT企業やウェブ企業と出版では、事業モデルが違いすぎる。出版社というのは、社員一人を雇用するのに最低でも1000万円かかる。そのうえに、社会保険、管理費用、取材費などを乗せていくと、年間一人に平均3000万円のコストが必要だ。だから、社員一人が1億円の売上を確保しないと会社はやっていけない。ところが、IT企業では、社員の年俸は400~500万円。これが相場で、たとえばページビューが年間1億を超えるサイトでも、4~5人で回している。それで、年間売上は1億円程度。ギリギリ黒字かイーブンという話だから、これをいまの出版社がやったら、社員の給料を維持できなくなるね』という発言がある。いみじくも、この発言が、まさしく出版の「業」としてやっていけなくなるということを示している。

 まあ、社員一人の年俸が1000万円という出版社は数少ない大出版社だけだから、大体この発言をした重役の名前は予想はつきそうだが、そうじゃなくて、それは出版というものを「出版業」として行おうとしているから問題があるんであって、そんなものは放り出して、「業」ではなく「志」としての出版であるならば、何の問題もないことなのである。

 もともと、出版も新聞も最初は「志」だった。それが多少は商売になるというところに気がついたところから「出版業」や「新聞業」が生まれたわけで、デジタル革命によってこうした「業」としての出版や新聞がなくなるというだけのこと。

 そもそもこの重役が言っているように『出版なんていうのは、年間計画通りには行かないんだ。いつ、ベストセラーが出るかわからない』ヤクザな仕事なのである。そんな出版で、たまたま出たベストセラーのおかげで「出版業」が成り立っていた時代が、たまたま良かったんであって、そんな時代はいつまで続くとは限らないんだから、それはそれで仕方がないんじゃないか、と考えれば腹も立たない。あとは「志」でメシを食っていく方法を考えることなのである。

「情報はタダ」「著作権なんて関係ない」というのがデジタルの世界の基本である以上、デジタル革命の進展にともない、「情報の価値」をお金に換えたり、「著作権」をお金に換えたりする今までのビジネスモデルが成り立たなくなることは、既に数年前から見えていた。

 本書ではあまり触れていないが、「ハフィントン・ポスト」のような成功例もある。勿論、「ハフィントン・ポスト」がこれまでの「ワシントン・ポスト」や「ニューヨークタイムズ」のようには記者に報酬を払っていないことはよく知られているが、それでも何とか食っていけることはできる。

 またイケダハヤト氏のように「年収150万円」で生きていけるというブロガーなんかもいるのである。

 つまり、これまでの出版や新聞の「企業としての」ビジネスモデルが成り立たなくなっただけのことであり、別のビジネスモデルを探っていけば、基本的にメディアで生活していくことはできるってこと。

 もうひとつ言ってしまうと、デジタル化でもってもはやメディア産業は「メディア産業という特殊な場所」にいるということが出来なくなったということなのだろう。メディア産業という特殊な場所にいることが出来なくなったメディア産業は、結局家電と同じく世の中の進化から取り残されてしまう。『電子書籍革命でアマゾンがやったこと、音楽配信革命でアップルがやったことは、まさにこれであり、「Kindle」も「iPhone」も単なるデバイスではなく、その上にサービスが載っている垂直統合モデルだった』のにも関わらず、日本の家電産業はそれが理解できずに、「よりハイスペックなデバイス」だけを作っていって、崩れてしまった。

 それと同じことがメディア産業にも訪れているのではないだろうか。

 更に重要なことは、こうしたデジタル化は経済のグローバル化を呼んで、更に加速していって、世界的な失業を作りだしてくる。

『IT革命とグローバリゼーションの恩恵を受けるのは、新興国、発展途上国だけで、先進国ではまず日本が、そしてアメリカ、いまや欧州まで、大量の失業者と生産過剰に悩まされるようになった。先進国ではかつてのような成長は夢物語となり、経済が回復しても雇用は増えない「雇用なき回復」しか起こらなくなってしまったのだ。
 労働集約的な労働(工場労働)が新興国にアウトソースされた後、オフィスではIT化が進んだからだ。最初は単純労働(マニュアルレイバー)がなくなったが、いまではホワイトカラーも必要ではなくなった』

 その結果、「1対99」の格差社会になったわけだ。

 と言うことで、山田氏の最後の言葉はなかなかに示唆に富む。スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチ「Stay hungry, Stay foolish」であるが。

『問題は、彼がこの言葉を誰に対して言ったかである。もちろん、卒業するスタンフォードの学生たちだが、彼らは全米、いや世界から集まった超エリートたちであることを忘れてはいけない。やがて、ウォール街に行く人間もいれば、ITビジネスに行く人間、自らスタートアップ(起業)する人間、留学生なら国に帰って外交官や政治家になる人間たちの集団である。
 つまり、エリートのインテリ集団に向かって、「常にハングリーであれ、常に愚かであれ」と言ったのである。誰が、いつもお腹をすかしている落ちこぼれに向かって、こんなことを言うだろうか?
 それなのに、ウェブが作り出した新しいメディアに熱中する貧しい若者たちは、この言葉が自分たちに向けられた言葉だと信じ込むのである』

 う~む、まさしくウェブも「インテリがつくってバカに売る」なんだなあ。

『出版・新聞 絶望未来』(山田順著/東洋経済新報社/2012年11月15日刊・Kindle版は2013年5月3日刊・300円おトク)

« 『クリエィティブ喧嘩術』というよりもドキュメンタリー的ドラマ作りが気に入った | トップページ | 新浦安と浦安、こんなにも街が違う »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/549500/57468377

この記事へのトラックバック一覧です: 『出版・新聞 絶望未来』って言うほどのものではない:

« 『クリエィティブ喧嘩術』というよりもドキュメンタリー的ドラマ作りが気に入った | トップページ | 新浦安と浦安、こんなにも街が違う »

2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

PEN PEN チョートクカメラ日記

自転車フォトグラファー 砂田弓弦

シュクレはお留守番

アローカメラ&我楽多屋

まだ東京で消耗してるの?