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2013年4月13日 (土)

追悼・若松孝次『千年の愉楽』最終日最終回

『千年の愉楽』の公式サイトを見てたら、「えっ、今日までじゃないかよ」ってなもんで、あわてて観に行った。これじゃあ批評が「レヴュー(review)」じゃなくなっちゃう。

 まあいいか。プロじゃないしな。

20130412_1714gif『千年の愉楽』(監督:若松孝二/原作:中上健次/脚本:井出真理)

 主演・寺島しのぶの今回の役は「オリュウのオバ」と呼ばれる産婆さんである。母親よりも誰よりも先に生まれてきた子を抱く産婆という立場。それはいわば母親とも通じる子への立場かもしれない。

 舞台は三重県のはずれ、海しか他の世界と繋がっていない田舎の町にある「路地」である。「路地」とは何か。言わばそれは「異界」あるいは「被差別部落」とも言う。そんな町に生まれ、そんな町に育った男たちの話。それもすべてが「オリュウのオバ」が取り上げた男たち。最も高貴で穢れた男たち、中本の血をひく男たちの話である。

 元々は6編の短編小説。それを一本のストーリーにまとめ上げた井出真理の脚本家としての力もさることながら、そんな井出真理を脚本家として採用した若松孝二の慧眼もさすがである。

「オリュウのオバ」の亭主は礼如という僧侶である。人の生き死にの最初と最後を看取る夫婦という設定も物凄いが、ある種、産婆という仕事(?)もまるで巫女のようで、自らが取り上げた子はずっと産婆にとっても子である。が、そんな子とも媾合ってしまうのも巫女ならばというところなのか。母親であれば自らの子とは媾合わないだろう、しかし、産婆という存在は母親であると同時に女でもある。

 すごいなあ、この設定は。

 映画を見ていて、今回は「産婆」という役柄なんでセックスシーンはないのかなと思っていたら、ちゃんと最後の達男との裏山でのセックスシーンがあったなんて。

 被差別部落であるが故の、高貴にして穢れた男たち。で、この男たちは他所の世界を知らない男たちなのだ。つまり、「路地」の世界しか知らない男たち。それが、結局「オリュウのオバ」に取り上げられて、どこかの女と暮らすのだが、それでいていろいろな女に手を付けて、最後は「オリュウのオバ」と媾合あって暮らすのだ。

 被差別部落というものは差別する側がいて初めて成立する。では、差別する側というものはこの映画に登場するのか? というと、実はまったく登場しない。

 だから三好が泥棒に入っても、自分の女の亭主を殺しても、別に誰もそれを罰しない。世界の掟とか律というものが存在しない世界。それが『千年の愉楽』の世界なのだ。「オリュウのオバ」も罰しない。むしろ、正々堂々と生きることを選ばせるのだ。

 つまりこれはもしかして「神話」の世界なのか。

 多くの神々が登場してきて、多くのラブアフェアがあって、多くの殺し合いがあって、それでいて皆ごく普通に生きている、まさに神話の世界がここにある。

 原作者・中上健次は映画が撮られた三重県のもっと先、和歌山県の被差別部落出身であることを自ら申し出ている。中上健次と若松孝二は以前新宿の飲み屋で、中上健次が「オレはエタだ」と言って相手を脅かしていたところを見て、「オレは宮城のドン百姓だ」と言って喧嘩をしたそうだが、まさしくエタと縄文人の末裔ならではの邂逅であろう。同じく、朝廷から差別をされた人々の出会いなのである。

 最後のオリュウの言葉『路地のどこかで女が孕み、女の身を裂きながら、やがてこの世に子が生まれ来る。たとえ何が起ころうと、どんなことが待ちうけようと、命が湧いて溢れるように、子は、この世に生まれ来る』には、さすがに女性シナリオライターが作った台詞であると思わせる、重みを持った台詞である。

 なんか、ズッシリという重みを持った映画ではあるなあ。

公式サイトはコチラ

『千年の愉楽』 (中上健次著/河出文庫/1992年10月刊)

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