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2013年2月 6日 (水)

『女ノマド、一人砂漠に生きる』ったって女フリーターの話じゃないよ

「女ノマド」といったって、別にコワーキング・スペースやノマド・カフェで企業からのお下がり仕事を必死になってこなそうとしているフリーター女子、ということではない。「ノマド=遊牧民」という言葉の原義通り、砂漠に暮らし、財産は身の回りの物だけを持ち、今日はコチラ、明日はアチラという具合に移りながら生活しているオバサンのことなのだ。

 なんだ、女ホームレスじゃないかと言うなかれ、ホームレスは家のない人、ノマドは地球すべてが家であると考える人という、大いなる違いがあるのだ。

 さらに遊牧といったって、別にどこにでも行ってしまうというのではなく、時期によって行く場所は決まっているのである。行く先が何ヶ所かあって、そこを巡ってという感じ。モンゴル遊牧民が遊牧といったって、夏と冬(しかないモンゴルには)で行く場所が決まっているのと同じ。

『女ノマド、一人砂漠に生きる』(常見藤代著/集英社文庫/2012年12月19日刊)

 で、この砂漠に生きている女ノマドだが、主人公の名はサイーダ。56歳。ラクダ7頭をつれ、一人で砂漠を点々と移動しながら暮らしている。家族がいないわけではない。夫も子供もいる。ただし、子供も既に成人しているので、手がかかるわけではないので、定住する夫と離れ一人で遊牧しているのだ。何故か。彼女が遊牧民の子として生まれたから。それ以外に理由はない。

 そんな話を書いている常見藤代さんはノンフィクション写真作家。45歳、独身。彼女の書いているところでは、いわゆる「箱入り娘」。ひどく内気でおとなしい子供時代を送り、大学に入るまで友人はなく、電車の切符も自分では買えないほど行動力に欠けていた。

 そんなかけ離れた二人が何故出会ったんだろう。

 大学を休学して一人、インドネシアに旅する。それまでの勉強一筋の「お嬢さん育ち」を克服したいと思って旅をする。そこで異国を歩く魅力に取りつかれ、大学卒業後勤めた会社を3年で辞め、世界一周をするつもりでタイから陸路で西へ向かったのが、なぜかエジプトに行きついたところで旅は終わってしまった。

 エジプトの遊牧民、ホシュマン族について書かれた本があった。思わずその著者のウェブサイトに載っていたメールアドレスに連絡して、ホシュマン族の族長を紹介してもらう。族長に会った彼女は『今でも砂漠で遊牧している人に会いたい。できれば、いっしょに暮らしてみたい』と頼んだ。

 そこで紹介されたのが、サイーダだった。

『昼食の残りのパンと紅茶で夕食をすませると、サイーダはじかに砂の上に横になった。
「砂漠の砂はきれいさ。自然はすべてアッラー(神)がつくった物だから」
 以前はテントを使っていたが、移動に不便なため、やめてしまったそうだ。「寝る時、星が見えないのがイヤ」だという』

 当然、電気もない生活は、夕食を済ませればやることは寝ることしかない。夜明けとともに目ざめ、夕日が沈めば寝てしまう。そうだ、そんな生活があるんだ。テレビもネットもない生活があるんだ。そんなところでも人間は生きていけるんだ、という瞬間である。

 つまり、それは原始の生活を体験すること。人間も動物のひとつなんだということに気がつく瞬間である。そこにあるのは「世間」なんてものには関係のない、人間本来の生き方なのかもしれない。

 まあ、それはほとんど雨が降らない砂漠の地だということもあるんだろうけれども……。

 勿論、サイーダにも「世間」がないわけではない。ラクダを売ってお金を手に入れたり、たまに夫が会いに来たり、子供が食料を持ってきたり、親戚の結婚式に参加したり。もっとも、結婚式といっても、家の前の路地で一週間にわたって飲んだり歌ったり踊ったりし続けるというもののようだが。

 でも、その程度。

 こりゃあ世間まみれで、群れることがとっても好きな東京の「偽ノマド」とは大いに違うなあ。

 常見氏は最後にサイーダに聞く。

『返ってくる答えは知りながら、私はあえて聞いてみる。
 ――サイーダはいつまで砂漠にいるの?
「それは私がきめることことじゃない。神様だけが知っていることさ」』

 まさに「生きるだけ」の生活がそこにある。そしてその「生きるだけ」の素晴らしさがひしひし感じさせられる最後のひとことなのである。

 別にイスラム教徒じゃなくてもね。

 

 

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