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2012年11月 7日 (水)

『アニメ映画ヒットの法則』は実は簡単な方法があるのだ。それがプロデューサーである

 著者の斉藤守彦氏から本が送られてきた。そういえば、元東宝宣伝部の芝裕子と一緒に来社されて取材を受けてからもう3年も経つのか。

『アニメ映画ヒットの法則 映画ジャーナリストが見た配給・興行・宣伝の現場』(斉藤守彦著/ナレッジフォア/2011年11月16日刊)

 斉藤守彦氏は「映画関連文筆業」を名乗っている映画ジャーナリストである。「映画評論家」ではない。その辺がいいところで、映画というものを「作品」というレベルではなく「商品」というレベルで見ている。映画というものは、商業映画というものは、映画評論家のように作品が当たったのかハズれたのかという観点は全く無視して語っていいものではない。基本的に映画のプロデューサーが外部から評価されるのは「映画が当たったかハズれたか」であり、関係者から評価されるのは「製作費をリクープして出資者にキャピタル・ゲインを与えられたか」である。つまり、「良い映画」は当たった映画なのである。

 しかし、そんな映画関連文筆業者であっても「We are NOT Publicity writers」と書くのであるから、それは不思議なものであるけれども、『批評や記事(報道)は、必ずしも誉めればいいてものではない。時には苦言を呈しなければいけない場合もある』と書いたものを読むとき、やはり斉藤氏のあたりにも配給会社からのプレッシャーがあるのだなあ、と感じる。つまり、配給会社の宣伝マンからの「誉めろよな」プレッシャーである。

 配給会社の立場からすれば、せっかく「タダで映画を見せた」んだから誉めてほしいってところだが、見た人はあくまでも個人なんだから、その個人なりの感想があるわけなので、誉めるばかりでなく、時には貶すこともあるわけだ。しかし、たとえ貶されようとも、その記事はその作品のタイトルについて「人々の目に触れる」ようにしたんだから、パブリシティにはなっているわけだ。その批評を読む人にとっては、「この批評家が貶したんだから、この映画は面白そうだ」と読む場合もあるわけなんだからね。

 配給会社ももっとおおらかになった方が、お互いの将来のためにはいいんだけれどもな。

 というところで、本の内容紹介を。

『第1章』は各映画の関係者からのインタビューに基づいた各作品背景の紹介。取り上げられる作品は『宇宙戦艦ヤマト』『崖の上のポニョ』『ハウルの動く城』『ルパン三世 ルパンVS複製人間』『時をかける少女』『ONE PIECE film STRONG WORLD』『AKIRA』『攻殻機動隊 S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D』『プリキュア(シリーズ)』『イヴの時間』の他、映画の興行に関わる人たちへのインタビュー。作品についても斉藤氏が取材するのは、監督ではなくプロデューサーや宣伝プロデューサーなど、映画を創作面からばかりでない側面から見なければならない人たちだ。つまりそこで語られるのは映画の芸術的側面(もあるけれども)だけではなく、むしろ商業的側面の方だ。

『第2章』は2008年から2012年の年間アニメ映画総決算。各年に公開されたアニメ(国内産・外国産含めて)の興行的側面からの論評。

最後が『特別対談』ということで、パイオニアLDC(現ジェネオン・ユニバーサル・エンターテインメント)から独立して、現在はアニメーション映画などを製作している株式会社ジェンコの真木太郎氏と斉藤氏の対談『業界に必要なのはオリジナル作品と人材を育成するための環境だ』である。

 たしかし、ジェンコは設立当初は故今敏監督の『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』やなかむらたかし監督の『パルムの樹』などのオリジナル・アニメーション映画を作っていた。この生き方に私なんかも注目していたのだが、それらの作品は大ヒットを飛ばすことはなく、一部のファンから高く評価されたものの、映画業界からは無視されて、その後、ジェンコもアニメーション映画の製作は行っていない。

 結局、真木氏も言っているけれども、オリジナル作品を書けないというか書いたことのない脚本家や監督が多すぎるということなのだろう。

 これは、結局出版社が当たったコミックをコンテンツとして持っている、そのコンテンツを更に売り伸ばし、合わせてキャラクターなどの版権ビジネスとしてアニメーションを考えている、更に、アニメーション現場から「こんな企画があるんだけど」といって上がってきても、それを出資者に提案するプロデューサーがいないという、出版社・アニメーション制作会社などの業界構造からくる問題なのだろう。

 今敏みたいな確信犯的に作品作りをする監督でもいない限り、そんな業界構造を壊すことは出来ないんだろうけれども、それにしてもプロデューサーがそんな確信犯的な監督に呼応して動かなければならないのだ。真木氏自身は自分もそんな確信犯的なプロデューサーだから、それをオリジナルを書けない脚本家やアーチストのせいにするけど、むしろ現場にオリジナル作品を作らせようとしない、企画力のないプロデューサーが多すぎる、というかほとんどいないということのほうが問題は多いのじゃないか。

 いまやオリジナル作品を作っているのはスタジオ・ジブリくらいしかなくて、その他の製作会社はほとんどがコミック原作のアニメーションばかりだ。って、私もそんなアニメーションばかりを作ってきたのだが、それはやはり出版社の社員であった規制がかかっていたのかもしれない。今から考えてみるならば、アニメーション発のコミック企画だってあったはずなのだが、それはあまり考えてはこなかった。

 ただし、私もオリジナル作品を書けない脚本家があまりにも多すぎるアニメーションの世界には、残念ながらあまり未来はないな、と考えていたのも事実で、その狭間でいろいろ考えていたこともあった。

 とは言うものの、斉藤氏が『アニメ映画は、現在の日本映画界において作家主義が通用する唯一の分野』という通り、まだまだアニメーションの世界では作家が力を持っているのは事実。問題は、そんな作家と問題意識を共有できるプロデューサーの存在だ。実は日本のアニメーションの世界ではプロデューサーの地位が低すぎるのである。

 スタジオ・ジブリの鈴木プロデューサーのような存在は日本にはいない。少なくともあと10人くらいの鈴木プロデューサーが出現しないと、日本のアニメーション界には将来はない、と言っておこう。

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