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2012年10月15日 (月)

楽天の実験が目指すものは

「楽天が書籍二次卸業に参入する」という情報は『日経新聞』なんかにも掲載されていたので、ご存知の方は多いと思われるが、その意味するところまでは理解されていないのではないか。

2012_10_14_002_2(c)Shinbunka

 書籍流通というのは出版社からトーハンや日販という取次という名の「卸売業者」の手を通じて書店に届き、読者に届くという流れが、通常の方法である。

 ところが、この方法だと客からの注文品(要は、書籍店舗になかった商品)を受けた書店は、それを取次に発注するわけなのだが、その場合、注文品の店着まで早くて3日~1週間ほどかかる。それでも確実に届くならまだしも、客注品の3割くらいはどこにいったか分らない状態になってしまう。従って、書店店頭ではそんな曖昧な説明を客にしなければならない。

 そうした現状を見て、ドイツのリブリ(ドイツの取次業者)のような「今日発注した本は翌日に必ず店に届く」という状況に変えられないか、ということで日本出版インフラセンター(JPO)が経産省から受託した「フューチャー・ブックストア・フォーラム事業」の一環として、楽天を巻き込んで「客注実証実験」を始めたというわけなのだ。

 JPOは9月4日に書いたように、「コンテンツ緊急電子化事業」(緊デジ)なんていうくだらない事業に傾注するよりも、こうした目先の問題にもっと取り組むべきだろう。つまり、それこそが書店がアマゾンに勝てる数少ない要素かも知れないからだ。

 問題は、「何故、取次便では客注品が3日~1週間もかかってしまうのか」という問題である。その理由がわかれば、問題は解決するはずである。

 多分、それは取次の客注品にたいする考え方の問題なのだ。つまり、新刊などと違って「客注品」は店によってその多寡がかなり異なる。取次会社と契約している運送会社は荷物の分量(箱の数)によって運賃を取次会社あて請求するから、取次会社としてはなるたけ箱数を減らすために、客注品の箱が取り敢えず一杯になるまでは発送を控える。取次は書店という一種の「流通拠点」に物を卸すのが仕事なので、それでいいという発想だし、運送会社もそれでよしとして既得権益を守ろうとしている。まさしく、これはユーザーのことを考えていない「業界内発想」ってやつね。ヤマト運輸や佐川急便などの「小口運送」を手がける運送会社がこの「取次―書店」間の輸送に手をつけられないのも、この既得権益のためなのである。

 その間、アマゾンは「個人の客」が相手なので、当然「一冊からの超小口」運送を「無料」で始めてしまった。それは当然で、日本では書籍は「再販価格商品」なので割引はできない、じゃあどこで割引をするのかといえば「配送費無料」というサービスに変えたわけだ。で、アマゾンで注文すれば、アマゾンに在庫がある商品ならば、うまくすると当日、遅くとも翌日配達をしてくれる。これでは既存のリアル書店がアマゾンに勝てるはずはない。あとは、如何にして書店在庫点数を増やして顧客の「衝動買い」を実現するかということがリアル書店の対アマゾン競争策となるので、ジュンク堂のような「図書館のような」書店が増えざるをえないのだ。

 そこで、読者が新聞広告の切り抜きなんかを書店に持ってきて本を探し、しかし、書店で見つからなかった時に、書店にその本の注文をしたときに如何に早く読者にその本を届けるのか、というのが書店側の喫緊の課題となる。そこに、もともと「個人の客」を相手にビジネスを行っていた楽天が参入する隙間があったわけだ。楽天はヤマト運輸で流通を行うようだ。もともと小口運送を手がけていたヤマト運輸であるから、問題なく処理できるであろう。

 問題は楽天だって日販から書籍を仕入れているのであるから、書店と同じ立場。それでもって運送費と楽天のマージンは出せるのかといった問題はあるのだけれども、そこは交渉の問題である。「ヤマト運輸・日販・楽天」の三者の間でどのような交渉が行われているのかはわからないが、それぞれ「三方損・三方得」の落としどころはあるはずである。

 こうして「実証実験」は始められる。この実験の場合、実は書店側にアマゾンにない一大メリットが生まれるのだ。それは何かといえば、「返品」という問題なのである。

 アマゾンであれ、書店であれ、客は本の中身を見ないで注文するわけである。

 買った本が届いて「なんじゃこれ」ということはあるはずである。私なんかも何回アマゾンでそんな思いをしたものか。当然である、書店店頭で多少読んでみて買うのと、不見転で買うのとはまったく本の買い方としては異なる。「書店店頭で立ち読みをして、中身を確認して」買うのが本来の本の買い方である。

 それができないアマゾンの場合、まあ、高くてもせいぜい1,000~3,000円程度の出費なのであきらめもつくが、しかし、やはり面白くないことにはかわりはない。

 ところが、この楽天を通した客注の場合、流通は楽天を通したとしても、実際にお金の流れは「書店→取次」である。ということは通常の書籍流通の流れとはまったく一致している以上、取次は書店からの返品を受け付けないわけにはいかない。

 つまり、この方法で本を注文する限り、買ってみて読んでみて、予想とはまったく違ったことが書いてあった場合、客は「返品」できるのだ。

 これは「アマゾンにない一大特典」である。

 これで安心して、不見転で本を注文できるということなのだ。うれしいですね。しかし、今のところこの実証実験に参加するのは大垣書店、廣文館、啓文社、今井書店、田村書店、啓林堂書店、なにわ書房という関西系の7法人だけである。早いところ全国の書店で実施して欲しいものだ。

 その結果は……、楽天によるトーハン、日販の「中抜き」なのだ。次にくるのは。

 

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