フォト
無料ブログはココログ

Amazonウィジェット

  • Amazonおまかせリンク
  • おすすめウィジェット
  • Kindle

« 『デコボコの道」って、カッコ良すぎるんだよな健さん | トップページ | 『雇用の常識「本当に見えるウソ」』ったって、逆に「ウソに見える本当」ってのもある »

2012年8月28日 (火)

『あなたへ』季節はずれの風鈴

『あなたへ』(監督:降旗康男/脚本:青島武/原案:森沢明夫(幻冬舎文庫『あなたへ』)/製作:東宝映画/2012年8月25日公開)

Photohttp://www.anatae.jp/

 映画の冒頭と最後に二度出てくるシーン、最初はモノクロに近い表現で、最後はカラーで、ベランダに吊るされた風鈴に息を吹きかけながら、妻の洋子(田中裕子)が夫の倉島英二(高倉健)に言うでもなくつぶやく台詞「季節はずれの風鈴って、物悲しいでしょ」が印象的である。

 いつものように「寡黙で不器用な男」高倉健は今回は刑務官を定年退職したのだが、その後も技官として嘱託扱いで勤務をしている人だ。妻の田中裕子は刑務所に慰問で童謡を聞かせにきた歌手であった。しかし、どうもこの歌手は(多分)内縁の夫が刑務所に収容されていたようで、その(内縁の)夫が刑務所内で亡くなってしまったことから、高倉健との付き合いが始まって、結局、結婚したというようなストーリーが前段にあるようだ。

 その妻が53歳で亡くなってしまい、その遺言に従って妻の故郷である長崎県平戸市薄香漁港の海へ妻の散骨にいく話である。ストーリーはそれだけ。富山刑務所の官舎に住む倉島英二は、写生が好きだった妻と一緒に定年後に二人で旅行ができるようにと作った、ワンボックスカーを改造して作ったキャンピングカーで、それこそ妻と一緒の旅をするように、高速道路を一切使わないで道々の風景を見ながらの旅を、富山から高山、京都、大阪、山口、門司、長崎へと続ける。その途中で会った人々、種田山頭火に憧れて妻が亡くなったのを機会にキャンピングカーを購入し日本中を「放浪」している元国語教師を名乗る実は車上荒らしの男やら、北海道から「イカめし」の展示販売をするために日本中を車で移動しているのだが、どうもその妻には男がいるようだという疑いを持っている男とか、その男の部下である男が実は英二が薄香で世話になった女性の海難事故で死んだはずだった夫であった、などの「本来はあり得ない偶然」の登場人物であってもそれは映画である以上問題はない。それを「あるかもしれない」と感じさせる、脚本の作り方と役者たちの演技次第なのである。まあ、それが「映画」なんですね。

 そう、この映画ではそうした展開が「お約束」のように展開される。見ながら「多分こうなるだろうな」という展開どおりのお話なのである。じゃあ、それが退屈かといえばそうじゃなくてある種の緊張感をもって観ることができたのは、それは役者の演技の問題だろう。これは「仁侠映画」や『網走番外地』なんかのプログラムピクチャーの基本である。

 プログラムピクチャーの基本てなんだ。それは、お定まりのストーリーを凌駕する役者たちの魂のことである。基本的に、1950年代までは日本映画はプログラムピクチャーしかなかったと言ってもいいだろう。とにかく、各撮影所とも毎週2本づつの新作を生み出さなければならない状態の中で、作品の質なんてものにこだわる撮影所長なんてものはいない。脚本の精査なんてものとは程遠い審査しかなく、問題は「誰が主演か」「誰が監督か」「誰が脚本家か」というだけの名前だけで企画が通っていた時代である。それがプログラムピクチャーの実景。

 ということなので、その当時の話としては、多く語られるのは作品の内容ではなくて、ルーティーンのストーリーが如何に今回は「少しだけ」変わっていたのか、みたいな「少量変化」のことでしかない。つまり、それが例えばヤクザ映画ファンの論評であり、まともな映画評論の世界では一切無視されていた世界であります。

 まあ、プログラムピクチャーを語るっていうのも、昔の映画評論ではなかった話だからそんなもんだろう。要は、映画評論は「文芸映画」とか「芸術映画」とか「文化映画」を語っていればよかった時代があったのだ。1950年以降は、映画がプログラムピクチャーになってしまった時代以降になっても、こうした人材は残っていて、本当『キネ旬』あたりにはそのへんの残党というか、要は日本共産党新日本文学あたりの評論家が、基本的にプログラムピクチャー批判を繰り返していたもんだ。

 その人たちが高倉健をどのように評価していたのか、という資料は今もってないが、別にそれはどうでもよい。

 要は、昔から今まで、継続して高倉健さんはカッコよい、ということだけである。

 作品は、どんな作品でもよい。ただ、ひたすら健さんがカッコよければいい。

 多分、健さんの主演作はもう数少なくなるだろう。けど、最後まで「寡黙で不器用な男」健さんを演じて欲しい。もう、それだけでいいのだ。

 最後に、「季節外れの風鈴」って、要はそんな生き方の不器用な男っていうことでしょう。
 まさしく、俺たち「季節外れの風鈴」なんだよな、って勝手に観客の男が持ってくれれば勝ち、ってな言葉が「製作委員会」の発言で言われているような気が「確信」するのだ。

« 『デコボコの道」って、カッコ良すぎるんだよな健さん | トップページ | 『雇用の常識「本当に見えるウソ」』ったって、逆に「ウソに見える本当」ってのもある »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/549500/55512090

この記事へのトラックバック一覧です: 『あなたへ』季節はずれの風鈴:

» 『あなたへ』お薦め映画 [作曲♪心をこめて作曲します♪]
頑固な船長(大滝秀治)の船で散骨するシーンは、観ている方は感無量だが、あくまでも静かである。礼儀をわきまえ、察して見過ごさず、されど出しゃばらない。監督と高倉健のハイレベルな美意識を感じる。なりきることは無理でも、若い人にもちょっと真似してみて欲しい。…... [続きを読む]

« 『デコボコの道」って、カッコ良すぎるんだよな健さん | トップページ | 『雇用の常識「本当に見えるウソ」』ったって、逆に「ウソに見える本当」ってのもある »

2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

PEN PEN チョートクカメラ日記

自転車フォトグラファー 砂田弓弦

シュクレはお留守番

アローカメラ&我楽多屋

まだ東京で消耗してるの?