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2012年6月28日 (木)

『私、社長ではなくなりました。』って、当たり前でしょ。こんな惨状を作ったんだから

 って言うより、この人「会社ごっこ」「社長ごっこ」をやりたかだけじゃね? というのが最初の読後感である。だってさ……。

『私、社長ではなくなりました。 ワイキューブとの7435日』(安田佳生著/プレジデント社/2012年3月1日刊)

 だってさ、なんで『名古屋支社をニューヨーク風に、次に福岡支社をバリ風に、そして大阪支社をメキシコ風に』して、東京の本社オフィスを『入口を入ってすぐの場所にカフェスペースやワインセラーを設け、床面には大理石を敷き詰めた。一般の人がお店と間違えて足を踏み入れることもあった』なんてオフィスを作る必要があるんだろう。『社員のモチベーションを上げるための福利厚生の一環だった』というのはウソだね。まさにここに売上数十億円、社員一人当たりの売り上げがたかだか一億円程度の中小零細企業でしかなかったワイキューブを、数千億、数億の売り上げを持つ大企業であるように錯覚してしまった、安田氏の「素人経営者ぶり」が見事にあらわれているのではないか。

 そんな「贅沢」は、もっともっと売り上げが多く、社内留保の大きい会社がやることである。しかし、当時のワイキューブには「社内留保」なんてものはほとんどない状態で、そうした「贅沢」も結局は銀行からの借入金を費やしていたわけだ。こうしたオフィスの作り方で言えば、よく引き合いに出されるのがグーグルのオフィスであろう。たしかに、そこは遊園地かと見まごうグーグルのオフィスは、レストランなんかも普通のアメリカン・フードだけじゃなくて、オーガニック・フードや日本食まであって、それがすべて無料で供されるというので、日本企業もいろいろ見学にいっているようだが、しかし、それはグーグルの猛烈な働き方(働かせ方)との相関関係なのだ。つまり、家に帰って通常の家族と一緒のディナーをとる時間もないほどに働かされるグーグルである。その代わりグーグルは基本年俸制の会社だから、残業代なんてものはない。上から与えられた(あるいは上申した)ミッションを予定通りこなすためにはいくらでも会社にいたままで、残業代もないままに仕事をしなければならないのだ。で、そのための「福利厚生施設」ってわけなのですね。これはグーグルがお手本にしたアップルも同じ。つまり、福利厚生施設が充実しているというのは、その裏側にそれだけ沢山働かなければいけないという企業風土があるっていうことなのだ。

 まあ、そこからすれば日本の出版社なんかは福利厚生面では最低ですけれどもね。とはいうものの、日本の出版社員(典型的な中小企業従業員)は逆に、そんな会社の福利厚生施設なんかのお世話になるのはいやだってなもんで、皆外に行ってしまうから、まあいいのか。

 問題は、ワイキューブという会社がそれだけのアメリカの会社のような厳しさで経営をしていたのかどうかというところだけれども、どうもそれは本書を読んでいても感じられない。多分、経営的な面では日本風、福利厚生ではアメリカの一部会社風だったんじゃないかな。それでは、企業風土っていうものが作れない。

 安田氏はリクルートの出身だ。リクルートと言えば、東大新聞の広告部長をやっていた江副浩正氏が「売り手市場の東大生」をバックに、企業から募集広告を集めていて、それがきっかけでできた会社である。そこから「就職情報は金になる」と考えた江副氏が始めたリクルート。私が就活で行った時に感じた「なんか違う」感は安田氏の時にも変わっていないようで、基本的な「体育系体質」の会社であることは同じなようであるようだ。

 であるならば、そんなリクルートとは違う分野で起業すればよかったのに、結局、リクルートと同じ分野で起業してしまったところに、安田氏の敗北の原因があるのかもしれない。結局、リクルートのビジネスモデルを中小企業向けにリデザインするだけで立ち上げてしまったワイキューブなのである。それはあまりにも「安易」でしょ。それでいて、「大企業の真似」をしてしまった安田氏。これじゃあ、やっぱり「会社ごっこ」「社長ごっこ」と言われてもしかたがない。

 というか、こういう(超アマの)人でも社長になれるんだ、ということでは若い人には(俺も社長になれるかもしれない、ということで)希望の星なのだ(ってのは嘘々)。

 まあ、キャシュフロー経営ってのは、起業したての会社では仕方がない。しかし、同時に、ストックを順次考えていくのが普通の経営者である。とにかく、借金は投資に回すべきで、そこからなにものをも生み出さない福利厚生に回すのは、普通の経営者ではありえないことだ。福利厚生が社員に対する投資である、なんてことが書いてある経営学の教科書は、世界中を探したってある筈はないのだ。多分、社員自身がそんな会社の経理状態なんかはわかるわけはないから、福利厚生施設が会社の足を引っ張ることになるなんてことは考えていないはずだ。多分これは会社が儲かっているからやっていることなんだろうな、という風に理解する筈だ。とすると、この経営者は二重に社員を裏切っていることになりはしないか?

 というわけで、ワイキューブが倒産(民事再生)してしまったのも、やむを得ざることだと私なんかは思うのだが、じゃあ、さてそんな状況に陥らない方法はあったのだろうか。

 結局、やはり安田氏言うところの「福利厚生」に問題は集中してしまうのだけれども、それだけじゃない問題もありそうだ。

 要は、安田氏が「新しいビジネスモデル」を作っていなかったことなのだろう。結局、リクルートの後追いをしながら、社内的にはリクルート以上の環境を作っただろうが、ビジネス的にはリクルートを越えるビジネスモデルを作れなかったことが、基本的な問題なのである。

 じゃあどんなビジネスモデルがいいかって分かるかって? 分かってたら今頃は既に起業してるわぃ。

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