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2012年6月19日 (火)

『りっぱな兵士になりたかった男の話』は「考えない男はむなしい」って話なんだよな

 なるほど兵士としては立派なのかも知れないが、人間としてはサイテーな人生を送ることになってしまった男の話なのだった。

『りっぱな兵士になりたかった男の話』<グイード・スガルドリ著/杉本あかり訳/講談社/2011年6月20日刊)

『りっぱな兵士は、いつでも次の決まりを忘れてはならない。

一 どんなときでも命令第一
二 けっして上官に口ごたえしてはならない
三 「はい!」の返事を心がけること
四 軍服のボタンとブーツを、いつでもピカピカにみがいておくこと
五 疑問をもってはならない
六 盗み聞きをしてはならない
七 祖国を愛すること
八 勇気と犠牲の精神をもって、どんな困難な状況にも立ち向かうこと
九 いつでも銃の手入れをかかさないこと』

 という九則を『りっぱな兵士養成所』でクルップ軍曹から教わったカスパール新兵は、クルド大佐から『風の山』山頂の風車小屋の監視を命令される。『次の命令を下すまで、山の上で監視を続けてくれ』というのがクルド大佐の命令である。当然、『はい、大佐! 次の命令が届くまで、山を下りたりはしません、大佐!』と答え、山頂へ向かうのであった。

 カスパールが山頂に赴いて1週間ぐらい経った頃であろうか、敵機の空襲に襲われた街はことごとく破壊されてしまい、その2週間ほど後、戦車部隊に襲われた町は完璧に破壊され、敵に降伏してしまう。しかし、カスパールは大佐からの新しい命令が来ない以上は山頂から下りるわけには行かない、それはそうだ、しかしクルド大佐は最初の夜の爆撃の際に死んでしまったのだ。

 で、結局カスパールは2年とちょっとすぎた頃に、命令を破って、『りっぱな兵士であるための九か条』を破いて、山を下りるのだった。そう、『りっぱな兵士であるための九か条』は「立派な大人になるための何か条」ではないことが分かったからなのだった。

 こんな兵士の話といえば、日本では横井庄一氏と小野田寛郎氏の話が有名だが、将校でいろいろ情報を得ていて日本の敗戦も知っていた小野田氏に比較して、下士官で敗戦を知らなかった横井氏に近いものがある。

 本の惹句では「ユーモアをまじえて描く、戦争のむなしさ」と書くが、むしろそうではなく、「戦争のむなしさ」なんてものを描くのは当たり前であって、そおいうことじゃなくて「モノを考えない人間の愚かさ」こそがポイントなのだ。この辺、ちょっと編集者の意識の低下が感じられる。お前らバカじゃねえの! ってね。

 戦争、あるいは軍隊というものは基本的に「上官の言うことはきけ」ということなのだ。それは帝国主義軍隊だろうが、民主主義軍隊だろうが、共産主義軍隊(革命軍)だろうが皆同じだ。だって、戦争状態になったときに、軍規を犯すような奴の存在を許したら「敵に負ける」という単純な図式があるからだ。それは上から目線で見た問題なんだからしょうがない。しかし、そんな命令を下された「兵」だって人間である。当然そこには人間としての状況評価があるはずであり、それは「上官の命令」とは相容れない。それはそれで、キチンと評価するべきなのである。まあ、評価するのは上官ではなくて部下たる「自分」だけどね。

 ということで、『どんなときでも命令第一』ということで、上官の命令だけを信じて、それ以外の一切の情報に対して耳を塞いでしまうという状態は、決して戦争中の出来事や軍隊だけの問題ではない。通常の戦争がない状態でも、それこそ民間の会社だって「上司の言うことは絶対」みたいな発想法はあるのだ。じゃあ、本当に上司の言うことを絶対正しいと考えて仕事をして、結果としてそれが間違ったとしても、しかし、それは誰も助けてはくれない。上司は勝手に処分でもされてしまったり、異動になったりしてしまうだけだ。結局、最後は自分で考えて物事を決めなければならないのだ。だとしたら、「上司の言うことは聞くけど、でも、絶対正しいというわけではないよな」というような、言っていれば批判的合意というスタイルで進んでいくしか部下の立場はないだろう。当然それは上司との軋轢になる。しかし、その軋轢を忌避してしまっては、部下としての明日はない。

 いい会社というものは、この軋轢を歓迎する会社である。上司の言うことを、部下が自分の責任回避のために、単純に受け容れるような会社は、多分、早晩ダメになるだろう。むしろ、上司の言うことに一言一句反反撥するような部下がいて、上司と部下との論戦があるような会社の方が、その後の展開が面白くなりそうである。

 本来、日本企業はそんな活性的な会社であったはずである。戦後の高度成長期にはそんな会社が一杯あったはずである。それが、今、停滞期になって、それこそ「上司が言ったからさ」という発言が出てきてしまうような企業が沢山出てきたら、最早、日本経済は終わりだ。

 なんか、最近はそんな企業が多くなっているような感じがあるのだが……。

 

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