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2012年6月 9日 (土)

『ロボット』

 世界で初めてのロボットものSFのロボットは、機械工業製品ではなくて、バイオテクノロジカルな 生成物なのであった。「そんなの当たり前じゃん」というSFファンには叱られそうだが、初めて『ロボット』を読んだ驚きは、実はそんなところであったのだ。

『ロボット(R.U.R.)』(カレル・チャペック著/千野栄一訳/岩波文庫/1989年4月17日刊)

 しかしながら、この作品が発表された1920年というのは完全に「機械工業の時代」である。まだバイオテクノロジーなんて言葉はない。しかし、何故かバイオロイド。多分、そこには『フランケンシュタイン』(フランケンシュタイン博士が人の死体を継ぎ合わせて作った)という先行例があってのことなのかもしれない。更に、「人間の手によって作られ、やがて反旗を翻す」という点も、もしかするとチャペックの『ロボット』の先行例なのかもしれない。

 この辺は『オズの魔法使い』の「心のないブリキの木こり」とは全く反対の存在で、「人に対して反乱を起こす」というヨーロッパ型のロボット像である。対して、『オズ』の方は理屈っぽくてお喋りだが、融通が利かないという、これは『スターウォーズ』のR2-D2やC3POなんかの先行例である。いわば、人間のお友だちロボットという位置づけ。日本では『鉄腕アトム』や『ドラえもん』のような人から愛されるロボットが多く、どちらかといえば『オズ』型のロボットなのかもしれない。

 このように、ヨーロッパ型ロボットはどちらかといえば、人間に作られその後人間に反乱をするというロボットなのであるが、それはもしかすると神によって創造された人間が、その後、神をも恐れぬ存在になっていったような、キリスト教的な発想があるのかもしれない。対して、アメリカや日本のロボットは単純にテクノロジー礼賛の発想だ。

 とは言うものの、『ターミネーター』なんかはどちらかといえば、ヨーロッパ型に近いか。『メトロポリス』のマリアなんかは、あわれ人間に逆にいたぶられるアンドロイドである。『ブレードランナー』のレプリカントは完全にチャペック『ロボット』型のロボットだが、一方『ロボコップ』なんかは「人間の頭脳」をもったロボットだ。

 ということは、アメリカや日本のロボットはいろいろな多様性があるのだが、ヨーロッパではなんか皆暗くなってしまうというのは、どちらかというと基本的なヨーロッパ人の根暗さに起因しているのかもしれない。

 しかし、発想として面白いのは;

『例えば労働者がロボットに対して暴動をおこして、ロボットを壊し、そして人間がロボットたちに武器を与えて蜂起した人たちに向かわせ、ロボットがたくさんの人を殺したら……そしてそのあと、いくつもの政府がロボットを兵隊にして、とってもたくさん戦争があって、これでおしまいよ』

『これからはもう単一の工場ではなくなる。もうロボットもユニバーサル・ロボットではなくなるんだ。一つ一つの国、一つ一つの国家に工場を作り、その新工場が作り出すのは、もう何だか分かったろう? 民族固有のロボットさ』

 ということなんだけれども、どうなんだろう。「いくつもの政府がロボットを兵隊にして、とってもたくさん戦争があって」というのは、なんかとってもリアルであるけれども、しかし「これでおしまい」にはならないだろう。だって、本当の人間が死ぬから反戦運動なんかも起きたり、政治家もあまり若者が死ぬことに対する恐怖があるから、適当な時期に戦争を終わらせたりするわけだが、ロボット同士が戦う戦争になってしまえば、いくら兵士が死んだところでそれに対する倫理的な問題は起こりそうもない。だったら、その当事国は予算が続く限り戦争をやめることはしないだろうし、国内でも予算の濫費に対する反対運動は若干起こったとしても、逆に戦争によって国内需要は大きくなるだろうから、景気はよくなり、その点からの反対運動はあまり起こらないかもしれない。

 だとしたら、ロボットの存在とは何なのだろうか。

 最早、人のいうことだけを聞いて、その通りに動くことだけがロボットの存在意義なのではないことになる。現状では、それでは人が見える部分でしか操縦できないものにしか過ぎない。人が入り込めない部分、人が見えない部分にも入り込んで活動するロボットが出来たとしたらどうなのだろうか。それは、多分、彼らの人工知能によって動くロボットになるだろう。そのうちに、自分で学習機能を持ったロボットを、ロボット自身が作れるようになったら……と考えると、これはすごいことになる。

 もう人権とかの話ではなくなる。「人=ロボット」権の問題になるのだ。う~ん、これは面白い。

 要は、人がやりたがらない仕事をロボットに任せようというのがカレル・チャペック以来の対ロボット発想なんだから、そんな仕事ばっかりをやらされているロボットが(知能を持ったら)「これは我々だけがやらなければいけない仕事ではないでしょう」という反乱を起こすことは必定である。

 まあ、人は自ら作った物によって裏切られ続ける、という基本がここにもあった、ということですね。

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