『東京人のしきたり』じゃなくて、これは日本人のしきたりなのである
別に書かれていることは「東京人だけ」の生き方ではないような気がするのだけれども……。
『東京人のしきたり そのスカシっぷりにはけっこう笑えるね!』(大野益弘著/KAWADE夢文庫/2008年4月1日刊)
まえがきに書かれている東京人の定義によれば;
【東京人】東京都内に住民登録し、勤務先や学校が都内にある人。または東京近郊に住み都内に勤務先や学校がある人。あるいは東京都内に住みながら東京近郊の勤務先や学校に通っている人。もしくは数年前まで都内で暮らしていた人のこと。
【追補】東京人は江戸っ子にあらず。したがって三代続かなくてもよいものとるす。
【再追補】前述した「東京人」のうち、東京マインドを持ち、東京に慣れ親しみ、東京生活をエンジョイしている人のこと。必ずしも、東京に対する郷土愛がなくてもいいが、東京のリズムにのりながら、押し寄せる人や物、情報の波をかき分け、けっこうこの生活も悪くないじゃん、と思っている人を指す。
ということであれば、かなりの人が東京人ということになってしまう。
ま、それはそれで構わないんだけれども、だって、東京人って、江戸っ子もそうだけれども、所詮田舎者の集まりだからなのである。実際に、先祖から何十代も東京(江戸)在住だなんて人はまずいないんじゃないか。
本書は
其の一 意外にカワイらしい東京人の【ホンネ】
其の二 摩訶フシギな東京人の【生活】
其の三 ビミョウに可笑しい東京人の【文化】
其の四 けっこう笑える東京人の【住む街】
其の五 自由自在、でもない東京人の【交通】
其の六 なんだかヘンな東京人の【地方観】
というテーマに分けて「東京人のおかしさ」について書かれているのだが、しかし、それは結局「日本人のおかしさ」に繋がるものであって、別に東京人だけがおかしいのではないことに気づく。例えば「大声をはり上げるのは苦手」「値切らない」「面倒なことにはかかわりたくない」「人がいっぱいいるところは嫌い」「手順を踏まないと他人と親しくなれない」「貸し借りはつくらない」などという、冒頭のいくつかのテーマを見ても、それは東京人だけの特色ではなく、やはり日本人全体の特色でもあるわけで、もしこれが東京人の特色だというならば、それはやはり東京が日本中から人が集まって出来上がった街だからそうなる、ということの結果に他ならない。
ひとつだけ、ああやっぱりこの人はこんな時間にテレビを見ていないんだな、というのが『東京人なら知っている「数字クイズ」』という部分。まあよくある「1・□・4・6・8・10・12」の□の中に入る数字はなんでしょう、という東京のテレビ局の問題なのだが、『東京にも東京メトロポリタンテレビジョン(TOKYO MX)というUHFのテレビ局ができたのですが、テレビショッピングや都議会と東京FCばかりでいまひとつ面白くない』と書いてあるのだが、やっぱり大野氏はTOKYO MXの看板番組「5時に夢中!」を知らないんだな。
「5時に夢中!」は毎週月~金の帯で放送されている情報番組なんだが、実はこの番組の日替わりコメンテーターが凄い事になっている。つまり、月:マツコ・デラックス、火:岡本夏生と北斗晶、水:中村うさぎ、木:岩井志麻子、金:中尾ミエと上杉隆という、超危険なコメンテーターで、勿論お約束通り過激な発言は飛び交うわ、放送禁止用語なんかも平気で話しちゃうような人たちなのだ。VHF局の番組では見られないお下品さがウリのこの番組は、やはりUHFというマイナーな存在を逆手に取った発想法なのだろう。う~ん、私もリタイヤしたら毎日見ちゃうかもね。
こういう番組の存在を許すだけ、都民のバランス感覚が優れているということなんだろうし、この辺だけは石原慎太郎もさすがに言論の人なのかもしれない。
と珍しく石原慎太郎を褒めたところで、今日はオシマイ。