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2012年4月19日 (木)

『ルポ 賃金差別』

『たとえ架空のカテゴリーであっても、差別は心地がいい。自身の賃金を下げられても、賃下げに怒るより、その下がいるということで人は妙な安心を感じることができる。こうして、賃金差別と向き合うことを避けてきた私たちは、その結果、多くのツケを抱え込むようになった。』というのが、つまりは差別の基本構造なのだろう。

『ルポ 賃金差別』(竹信三恵子著/ちくま新書/2012年4月10日刊)

 しかし、和光大学の学生のおバカっぷりも大したもんで、労働問題・ジェンダー論などを教える竹信教授の授業を受けている学生が、『賃金は会社が決めるものでしょう。働き手がいろいろいうのは変です。会社は慈善事業じゃないんですから』なんてことを、平然とレポートしてくるというのだ。うーん、こういう学生は即入社内定だな。なんて冗談は後にして、今の若者のこれは当たり前の賃金論なのだろうか。そこまで、ニュー・リベラリズムは徹底しているということなのだろうか。こうなってしまうと、正社員・契約社員・派遣労働、親会社(あるいは発注元)・子会社・孫会社・元請け・下請け・孫請け・ひ孫請けなどの間にある「賃金差別」なんてのは当たり前ということなのかもしれない。要は、自分はその流れの中のなるべく上流にいればいい、「だって、会社の従業員の賃金なんかには興味はないモンね」という。

 しかし、ものはそうはいかない。本書には広島電鉄の事例が書かれている。契約社員の正社員化を実現させた労働運動についてだ。つまり『まず、労組への加入対象を契約社員にも広げ、そのうえで、賃金交渉で、正社員と契約社員に同等の賃上げ率を求める要求を掲げる。会社側は、正社員化には同意したものの、雇用契約に期限がない無期雇用にすることだけは飲み、賃金に差のある新しい正社員制度を作ろうとした。これに対し広電支部(私鉄中国労働組合広島電鉄支部:引用者注)は、高齢者の昇給を抑制するという痛みを引き受けることと引き換えに、同一価値労働同一賃金による正社員化を求めた』というもの。会社にとっても、交通業界には死活問題の「安全の確保」という観点から、最終的には組合の要求を飲んだものだ。 

 この中の論点は、「高齢者の昇給を抑制するという痛みを引き受ける」という点だろう。終身雇用・年功序列賃金制度の場合、当然高齢者になればなるほど高給取りになるわけで、そこを65歳までの定年延長によって年金支給年までの職場を確保し、生涯賃金では従来通りの収入を確保するという説得をしたそうだ。

『ドイツでは、派遣社員が仕事を失ったら次の派遣先が見つかるまで派遣会社が引き取って面倒を見る常用型派遣が原則とされていた。フランスの場合は、「派遣社員は、穴埋めした前任者と均等待遇」と決まっているので、正社員との賃金差は開きにくい原則ができていた』というのだが、そうした労組側の認識がない日本では、『容易に、派遣会社をりようした「かごぬけ」的な賃下げが起きる』というのである。

『グローバル化と少子高齢化で外国からの労働者を受け入れる必要も生まれているのに、透明な賃金決定のルールなしで、こうした働き手の納得を得られるのか。また、男性が多く従事していた製造業が海外へ脱出し、女性が多いサービス産業化が進むなかで、性別を超えた客観的な賃金評価ができなければ、働き手の賃金は下がり続けるのではないか。』という竹信氏の危惧はまったくそのとおりだ。

 賃金交渉のできない派遣社員の増大は、当然、いずれ正社員まで巡ってくるだろう。もし派遣社員と同じ仕事をしている正社員なんてものがいて、じゃあ正社員だって派遣社員と同じ賃金でいいじゃないかとなって、その時になって賃下げ反対なんて叫んでも、もう遅いのだ。同一価値労働同一賃金という発想は産別組合の強いヨーロッパでは、当たり前のような考え方ではあるけれども、日本でもそろそろそうした発想、あるいは産業最低賃金について考えなければならない時期だろう。

 だいたい、セーフティー・ネットもない国で、最低賃金も生活保護以下のレベルに抑えられているおかしさを考えなければいけない。

『人が働くことは、生活の基盤だ。だから、働く人に保障されている労働権は、どんな働き方の人も行使できなければならない。派遣労働はその意味で、本来はかなり厳しい働き方と受け止められていた。その認識が社会にあるから、人々は、さまざまな規制をかけて、なんとか派遣労働を人間らしい労働にしようと工夫する』ヨーロッパには、まだまだ学ばなければならないことがいっぱいある。

 残念ながら。

 

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