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« 『じじいリテラシー』は女ならではのおやじ転がしの本なのです | トップページ | 台東区 今戸 慶養寺 »

2012年3月17日 (土)

『PK』はタイムノベル。タイムパラドックスに満ち溢れています。

「PK」というのは、ご存知の通りペナルティ・キックのことなんだが……。作品はあまりペナルティ・キックとは関係ない。が、それ自体がペナルティだというのだろうか。

『PK』(伊坂幸太郎著/講談社/2012年3月7日刊)

 次郎君という昔の友達のむちゃくちゃ話をする父親に育てられてた、57歳にして初めて大臣の職に就いた代議士とその秘書官の話と、どうもその父親でありそうな作家の話が螺旋構造でつながっていき、その代議士が若い頃マンションのベランダから落ちてきた幼児を助けた話が続く中、どうもその秘書官が次郎君? という『PK』。

 作家の家に個人宅向けの警備システムの飛び込みセールスにやってきた青年が、自分のことをスーパーマンだと言って、しかし、それは「あの」スーパーマンではなくて「未来がわかる」スーパーマンなのだが、その結果、放っておいたら将来身勝手な殺人事件を起こす人間がわかるので、そんな殺人事件が起きないように、その前に次々とその将来の犯人を殺しているスーパーマンの話と、『PK』に出てきた代議士が助けた幼児というのが実はそのスーパーマン青年であり、代議士が十年後に1万人の被害者がでるような物騒なことを実行することがわかり、代議士を殺そうと思い会いにいくのだが、それが誤報だとわかり、すんでのところで殺さずにすむのを建物の外から透視していたのが、実は「あの」スーパーマンだった、という『超人』。

 他人と握手をすると6秒間だけ時間を止めることができる青年が選んだ職業は、子どもたちを握手が沢山出来る戦隊物ショーの出演者の話と、将来、耐性菌の蔓延を防ぐために過去の世界にゴキブリを送って耐性菌の抗生物質をとってくるが、そのためには人間一人が姿をなくしてしまわなければならず、その消されてしまう青年の話と、先の時間を止めることができる青年が突如現れそのゴキブリを奪ってしまい、そのあとに『あなたの今までのやり方よりも、より効果的に、求めていた結果が得られます』という言葉が残されていることから、初めて二人の青年の時制が違うことが分かる、『密使』。

 この三つの中篇が、同時に螺旋構造でつながっている不思議な作品が、本のタイトルでもある『PK』なのだ。

『グラウンドは緑の海だ。照明で照らされ、色鮮やかな芝が広がっている。ロスタイムは、砂の山が風で少しずつ削られるが如く、じわりじわりと減り、今や掻き消える寸前だ。観客は固唾を飲み、その視線の移動だけが音を立てている。

 唐突に波がうねった。水面すれすれを紡錘形の魚が突っ切るかのように、ボールが芝を揺らし、右サイドへと飛んだ。

 走り込んできた小津が脚を動かし、右足でボールを受け止めた瞬間、競技場の五万人の観客たちの声が、それはすでに声とも言えぬ、無言の叫喚とでも呼ぶべきものだったが、地面を震わせた。オフサイドの旗も上がらない。』

 という『PK』の書き出し部分。

『その彼は、目を凝らし、それが、緑色のコスチュームを着た人間だと認めた。顔から足まで完全に覆われ、大きなベルトをした姿は、子供向けのテレビに登場してくる戦隊物の恰好だった。「うちの息子と一緒にテレビを見ていますから、間違いありません!」

 車に乗る直前、その緑の男は、ベルトから何やら小箱のようなものを外し、顔を寄せ、不気味な音でも耳にしたのか、体をぶるぶる震わせ、「気持ち悪い!」と叫んだかと思うと、ひどく慌てた様子で、「失言に気を付けないと」と呟いたらしかった。』

 という『密使』のラスト。

 つまり、『緑の海』で始まって、『緑色のコスチューム』で終る三部作のキーワードはタイムトラベル。

 っていうか、こんなにタイムパラドックスに満ち溢れてていいのかなあ。それこそ、ペナルティ・キックを相手に与えてしまうミスだと思うのだけれども、いまやそんなことは考えなくていいのかな。

 タイムパラドックスはAの世界とA'やA''の世界で分けてしまえばいいのか? じゃあ、そのA'やA''の世界はどこにあるんだ、ということはSFの世界では考えなければいいものなのだろうか。う~む、この辺のSF的世界観ってよくわからないな。

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