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2012年2月 1日 (水)

『あんぽん』はちょっと日朝関係、在日問題に捉われすぎ?

 ウォルター・アイザックソンが書いた『スティーブ・ジョブズ』と比較しながら読むと面白いかも知れない。

『あんぽん 孫正義伝』(佐野眞一著/小学館/2012年1月15日刊)

 それは佐野眞一氏の方が徹底した取材に基づいて書いているからなのだ。結局、ウォルター・アイザックソンの方は佐野氏ほどの徹底的な周辺取材は行っていないようだ。つまり『スティーブ・ジョブズ』に書かれていることの大半は、以前どこかで読んだことばかりなのだ。ということは当然アイザックソン氏は、それまでにかなり出版されている「ジョブズ本」を読みこなしており、それに基づく取材をジョブズ本人からしているのだろうけれども、でもそれだけでは不十分である。ジョブズがアブドルファンファター・ジョン・ジャダーリというイスラム教徒のシリア人と、ジョアン・シーブルというドイツ系移民の子の間に生まれたことは有名であり、その子供がウィスコンシン州出身の高校中退のポール・ジョブズとアルメニア系のクララとの間の養子となった、という部分について、何故、アイザックソンは追究しなかったのだろうか。孫正義が「在日」の子だったということに関して、かなりしつこく追究した佐野氏に対して、このアイザックソン氏の、あっさりとジョブズ氏の言うことだけを受け入れるというのは、アメリカ式の「出自を問わない」精神なのか、それとも「出自を必要以上に問う」日本風の取材方法にはなじまないのか。

 しかし、この佐野氏の孫正義氏に関するその出自を問うやり方は徹底している。勿論、これまでに出されていた「孫正義伝」の胡散臭さを感じていた佐野氏は、初めは自分が「孫正義伝」を書くことに抵抗があったようだ。しかし、そのバックボーンを調べるに従って、孫正義の「うさんくささ」がどこにあるのかが気になったようだ。特に大きいのは父・孫(安本)三憲の存在だろう。

 在日として過酷な人生を生きてきた三憲にとって、次男・正義や四男・泰蔵(東大卒、現在ガンホー・オンラインエンターテインメント会長)の存在は大きなものだし、それこそ希望の星だったに違いない。

『孫は「経済白書」が「もはや戦後ではない」と高らかに謳った翌年、鳥栖駅前の朝鮮部落に生まれ、豚の糞尿と密造酒の強烈な臭いの中で育った。

 日本人が高度成長に向かって賭けあがっていったいったとき、在日の孫は日本の敗戦直後以下の極貧生活からスタートしたのである。

 その絶対に埋められないタイムラグこそ、おそらく私たち日本人に孫をいかがわしいやつ、うさんくさいやつと思わせる集合的無意識となっている』という言い方で、

あるいは『朝鮮民族の誇りそのままに、堂々と白いチマチョゴリを着て葬儀に出席したこの二人の女性こそ、孫正義の祖母であり、孫正義の義理の叔母だった。

  <中略>

 孫正義はそのことをおそらく知らない。山野炭鉱のガス爆発事故が起きた昭和四十年は、今回の大災害で放射能漏れ事故を起こした福島第一原発の用地買収が終わり、まもなく建設が始まろうとしている頃である。

 その福島原発で放射能漏れ事故が起きたことに衝撃を受けた孫が、脱原発のための再生エネルギー法案の成立に奔走する。孫一族はまさに日本のエネルギー産業の最先端、炭鉱で言えば切羽の部分を担い、これからも担おうとしているのである。』とつなげるのはどうなのだろうか。孫を「いかがわしいやつ、うさんくさいやつ」と見るのであれば、もっともっとそうした見方を徹底しなければいけないのではないのではないだろうか。

『山野鉱のガス爆発について詳しく調べた地元の郷土史家によれば、「爆発したのにヤマを早期再開することを考えて、施設関係の電源を切らなかったという話もあった」という。

 何やら今回の福島第一原発事故を連想させる話である。東電はメルトダウンするかもしれないとわかりながら、原子炉の温存をはかるため、緊急措置を遅らせたと言われている。

“国策”に直結したエネルギー産業は、人名よりもいつも企業の延命の方を優先させる。

 三井山野鉱山爆発事故では、死者の約半数が「組夫」と呼ばれる下請けの鉱夫だった。孫正義の叔父の国本徳田も「組夫」だった。

 この構造は、エネルギー産業の花形が、炭鉱から原発になってもまったく変わらない。原発作業でも、最初に危険な目にさらされるのは放射線量が最も高い現場で働かされる“ジプシー”と呼ばれる下請け労働者である。

 炭鉱の“ジプシー”労働者だった「組夫」の叔父がガス爆発で死に、その甥がそれから約半世紀後に、“反原発”の狼煙をあげる。朝鮮半島から強制連行された一族の血は筑豊にとどまることなく、いまや無人のゴーストタウンとなった福島の原発地帯まで延びている。』という言い方をしてしまえば、最早、孫一家の海峡を越えた怨念が福島まで延びて、いまやその「恨み」を果たそうとしているかのように読めてしまう。

 まあ、それもないではないだろうが、孫正義にとっては「いまや再生可能エネルギーに賭けた方が、今後300年の日本、今後300年のソフトバンクを考えたら勝てる」と考えただけなのではないだろうか。

「在日」に対する差別は一部の部分では今でもあることは知っている。しかし、孫正義が生まれた頃から一般社会での「あからさまな」差別はなくなっている。在日の人たちの日本同化もかなり進んでしまい、もはや日本人なのか韓国(朝鮮)人なのかなんてのは、まだ残っている一部の韓国(朝鮮)人のみのアイデンティティを求める人だけの問題になっているに過ぎない。あとは、「モノを知らないネット右翼」の連中の在日差別くらいなものだろう。

 そうした意味で、佐野氏が言うような反「在日」差別感情が孫正義のいまの活動の原動力になっているという発想は、あまりにも旧態依然の発想でしかない。

 もちろん、それも少しはあるかもしれないが、しかし、もっともっと孫正義の発想は前にいっているのではないだろうか。でなかったら、孫の行動は日本でとどまっているはずだ。いまや、孫の発想は日本を飛び越えてしまっている。アジアや世界全体を相手にするようになるだろう。

 そんな時に、日朝関係なんていってたら、もう遅いのだ。もう、狭いのだ。それは長い歴史のなかでのホンの一部分でしかない。

 多分、これからの経営者とは、孫のように世界スケールでモノを考えなければならなくなるのではないだろう。だとしたら、そんな狭い国と国の、民族と民族のことなんて、てんで素っ飛んでしまうのではないだろうか。

 勿論、佐野氏の民族的良心から、こうした形で「在日問題」を取り上げることには反論する気はないのだけれども………。

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