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2012年2月18日 (土)

『プリズン・トリック』も後出しジャンケンありだぞ

 本日も「ネタバレあり」です。要注意!

 さんざっぱら読者を翻弄していて、最後にはやっぱり「後出しジャンケン」って、最近のミステリーでは、これありなんですかね。

『プリズントリック』(遠藤武文著/講談社文庫/2012年1月17日刊)

『開け放たれたドアの向こうに、人が倒れているのが見えた。ドアの間に見えるのは肩から上の部分で、他は壁に隠れて見えない。肩の部分だけでも、官給品のパジャマを着ているのが分かる。そのパジャマから出ている頭は……。

「ひっ」

 野田は吐き気を催した。その男の顔は、短く刈った頭部から顎にかけて一様に、赤く焼け爛れていた。一見して、生命活動が途絶えているに違いないと確信できた。思わず眼を背けた。怖い物見たさで、いま一度見ようとして顔を上げた。視線が男の顔に到達する前に、開け放たれたドアで止まった。ドアの内側に貼った模造紙が、斜めに外を向いている。野田の位置からでも模造紙に大書された文字が見えた。

「石塚、死すべし。

         宮崎」

 野田の全身は小刻みに震えていた。咽喉が激しく渇いた。倒れている者は石塚という名の者か? パジャマを見れば、受刑者であることは明らかだ。息絶えているか? 殺したのは宮崎なのか? それで逃げた? 受刑者が受刑者を殺して逃げるなど、前代未聞だ。刑務事故どころの話ではない。スキャンダルだ。』

 市原刑務所の刑務官たちは即座に宮崎の立ち回り先を求めて動き出す。まずは宮崎の妻が留守を守っている家だ。

 しかし、捜査に乗り出した千葉県警は、顔と指が薬品で焼け爛れた死体を見て、実は殺されたのは宮崎であり、犯人は石塚、あるいは石塚になりすました人物であることを喝破。石塚、あるいは石塚になりすました人物を追うのである。

 警察庁から千葉県警に出向中で、この事件の捜査副本部長であり広報担当官となる武田陽司。そして、千葉県警の刑事たち。

 元雑誌記者で、長野県安曇野市の第三セクター、安曇野トマトファームの栽培施設建設予定地の土壌調査についての虚偽評価に関する、長野二区選出の代議士、高橋甲子郎官房長官の関与に関するスクープで、結果として高橋の長女を自殺させてしまったことから、雑誌記者を辞め、現在は損保会社の調査員をやっている滋野隆幸。そして、信濃毎日新聞社会部の記者、浅井由梨。

 業務上過失致死罪で市原刑務所に収監されて、満期出所になるが家族からは縁を切られて、帰るあてのない中島幸平と、何故か事件の責任者ということにされてしまった若い刑務官、野田邦夫。

 ストーリーはこれらの登場人物の間を、次々に視点を変えながら動いていく。当然それらの人たちの間では、事件はそれぞれの見る立場から異なって見えてくる。そして、しばしば出てくる主語のない人物の描写。赤いニシンもいっぱいいる。

 それらはすべて読者をミスリードするためのフックであることは、重々承知の上で読むわけなのだけれども、何故か、なかなか前へ進まないストーリーにイライラしつつ読む進んでいくのである。

 あるいは、それもミステリーを読む楽しさでもある。まあ、それも良い。

 しかし、そうやって読者を翻弄してきて、一番最後になって単行本出版の際にはなかった一章『戸田和義の手紙』が付け加えられている。これを読んだら、本当に村上資祐は壊れちゃうよ。っていうか、読者も壊れちゃうんじゃないかなぁ。

 戸田の手紙の最後の部分に戸田の本心が書かれている;

『私がこの手記を公表しようと思い立ったのは、ただひとつの理由からだ。真の芸術を広く知ってもらうためにほかならない。市原刑務所での事件の細部が明らかになっていくのとは裏腹に、一連の事件にこめた私の芸術性への理解が全くなされていないことを、無性に腹立たしく思った。

 村上が警察やマスコミに送りつけた手記(「終章」のこと:引用者注)の中には、私が事件に込めた芸術性を示唆する言葉が、あちこちにちりばめられているというのに、世間はそれに気づいていない。あまりにも愚かすぎる。頭の悪い連中が、勝手に事件を読み違え、愚かな発言をしているのを黙って見過ごすわけにはいかない。

 この手記が明らかにされる前に、私は村上に全てを教えるつもりだ。かれが壊れるのを見るのは、何にも代え難い至福だ。今から身体が震え、失神してしまいそうだ。

 至福を与えてくれる者を「友」と呼ぶのであれば、正しくきみは「友」だ。きみ以上の「友」はいない。』

 完全に狂っている。既に、村上の前に、戸田が壊れているのである。

 下手をすれば、読者も壊れちゃうんじゃないかなあ。え? 今の読者はその程度じゃ壊れないですって? ならばOK。

 

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