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2012年2月24日 (金)

『矮笑小説』は現代のミステリー小説状況を語っているのだ…多分

 業界小説というんだろうか? あるいは業界裏情報小説? それとも裏業界小説? それじゃあ別の意味になってしまうね。

『矮笑小説』(東野圭吾著/集英社文庫/2012年1月25日刊)

 こうした小説を読む楽しみといえば、そこに描かれている人の実像というか、「誰がこのキャラのモデルなのか」ということを想像しながら読むと言うことである。勿論、そこに描かれている人物は、モデルとされた人からはかなりデフォルメされているが(デフォルメされていなければヘタをすれば訴訟騒ぎになってしまう)、しかし、何となく描かれているキャラから実際の人物が透けて見えてくるのだ。

 例えば、大衆文学の大御所でゴルフといえば、故丹羽文雄氏が有名だが、平泉宗之助先生は果たして。とか、日本を代表する女流ミステリー作家で仙台在住でめったに東京に出てこない花房百合恵と言えば、京都在住でその作品がテレビドラマになる時は、娘の山村紅葉をキャステイングすることを条件に映像化を許諾していた、故山村美沙氏みたいだし。いまや五本の指に入るベストセラー(ミステリー)作家の赤村ミチルは、なんか高村薫っぽいよなあ。なんてことを読者は勝手に想像しながら読むわけである。

 まあ、この作品に沢山出てきて、エピソードによっては主役をつとめる熱海圭介とか、唐傘ザンゲ、大凡均一なんかは、とくにモデルはいないのだろうが。

 しかし、それにしても彼らの作品、熱海圭介の『撃鉄のポエム』『狼の一人旅』『銃弾と薔薇に聞いてくれ~撃鉄のポエム2』にしろ、唐笠ザンゲ『虚無僧探偵ゾフィー』『煉瓦街諜報戦術キムコ』『魔境隠密力士土俵入り』、大凡均一『深海魚の皮膚呼吸』『殺意の蛸足配線』、青桃鞭一郎『まったり殺して』『こってり殺して』、腹黒元蔵『御破算家族』『納涼茶番劇』、古井蕪子『腰振り爺さん一本釣り』『ぷりぷり婆さん・痛快厚化粧』、大川端多門『怪盗泥棒仮面』『怪人髑髏対探偵骸骨』って、すごいタイトルですね。いかにも何も考えていない、あるいは作家に勝手にタイトリングをさせてしまう、灸英社という会社の懐深さというか、何もしていなさが出ていて、なんでこんな会社が大手の文学系出版社なんだよ、という感じがするのだが、これは東野圭吾氏の「対集英社感」なのだろうか。あるいは、東野氏なりの「こんな売れそうもないタイトルの本を一回でもいいから出してみたい」という意志のあらわれなのだろうか。まあ、『矮笑小説』も相当なタイトルではあるけれどもね。

 しかし、この灸英社の獅子取という編集長だか出版部長だかは、相当な人だ。なにせ、ゴルフ接待から、カバン争奪戦、スライディング土下座から、原稿を取るためには未婚の女流作家にはプロポーズまでしちゃうのだ。東宝50年代の社長シリーズでもあるまいに、いまどきそんな「ゴマすり」を「する」………いや、「できる」編集者なんていないのだ。

 この獅子取部長のやり方は間違ってはいない。方法はどうあれ、売れっ子の、つまり現時点で売れる可能性の極めて高い作家の原稿を取れるならば、何だってやってやる、という、もしかすると高度成長時代の日本サラリーマンなら、(出版社じゃなくても)相当の人がやっていたマインドなのである。多分、獅子取部長はそんなころの入社なんだろうな。結果として、こんなに現場にズッポリはまってしまった彼は出世はできないだろう。多分、取締役の前の段階で終わりだろう。しかし、それでもいいのだ。取締役になってつまらん経営問題なんかを抱えるよりは、一生現場で作家先生にゴマをする生活、それもきっと、極めて充実した人生なのだ。現場編集者としては「ベストセラーを出してナンボ」ですもんね。

 とすると、東野圭吾氏もそんな「現場にズッポリはまってしまった」編集者が好きなのだろう。勿論、いまや東野圭吾っていえば、どこの出版社だって書いたものが欲しい人であり、それが小説であれば、もう嫌が上でも自社に欲しい「名前」であり「作品」である。

 ところが、今の「草食系編集者」は、獅子取部長のようなことは、「カッコ悪くて」出来ないのだ。まあ、大手出版社の編集者が、プライドが高くてそんなゴマすりはできないというのならまだ分かるが、いまやそうじゃない出版社の編集者もダメなのである。というか、むしろ大手出版社の編集者のほうが平気でゴマをすってるぜ。

 頑張れよ、中小出版なのだけれども、結局、大手の出版社に入った編集者はそれなりに社内でもまれて、ゴマのすり方も教わることになるのだ。しかし、中小出版社の場合、どこかに「強烈な創業者」がいない限り、そんなゴマのすり方を教えてくれる先輩もいないし、そんな職場だから、編集者もどんどん草食化してしまうんでしょうね。

 中小出版社の編集者諸君。幻冬舎の見城徹氏の本を読もうよ。もうとんでもなく、アナログだぜ。

 そして、真似しようよ。

 そうすれば君らの会社も大きくなれる「かも」知れないよ。

 大きくなれば、それなりにいいことが、少しは、あるんだよ。

 

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