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« 『初音ミク革命』が本当に革命的なのは、メディアの力にまったく頼っていないということなのだ | トップページ | 鉄道オタクは健全に生きている »

2011年11月 2日 (水)

『もう読みたい本がない!』なら読まなきゃいいじゃないかよ

『もう読みたい本がない!』って言うんなら、読まなければ? というのは簡単だ。

 しかし、そうした読書家というか愛書家の齊藤氏のややもすれば性急で稚拙な本なのだが、齊藤氏にはもう少しボキャブラリーを豊富にして、できればもう少し経済学をお勉強してから本を書けば、とだけ言っておこう。

『もう読みたい本がない!』(齊藤祐作著/幻冬舎ルネッサンス新書/2011年10月25日刊)

 齊藤氏が本が好きなのはよく分かった。しかし、だからといって、齊藤氏言うところの『コミックや、ライトノベルや、ケータイ小説などの「軽い出版物」だけでなく、番組本や、タレント本や、ハウツー本や、オカルト本や、ダイエット本や、家庭用及び携帯用ゲームの本などのような、「消費財」としての要素が強い出版物』をなぜことほど左様に否定するのだろうか。『純文学や、ノンフィクションや、社会科学書や、一般教養書や、啓蒙図書などのよな「文化財」としての要素が強い出版物や、「重厚な出版物」がベストセラーのランキングのトップ10を殆ど独占』していた時代はとうの昔に、それこそ齊藤氏が生まれる前に存在しなくなっていたのである。

 そんな、自分が生まれもいない前の時代にもどって齊藤氏は何をしたいのだろうか。その時はその時でいろいろ悩みを抱えていた出版業界ではあるのですよ。昔に戻りゃあいいってもんじゃない。むしろ、今の時代で今の時代の問題を解決するべきじゃないのか。つまり、『コミックや、ライトノベルや、ケータイ小説などの「軽い出版物」だけでなく、番組本や、タレント本や、ハウツー本や、オカルト本や、ダイエット本や、家庭用及び携帯用ゲームの本などのような、「消費財」としての要素が強い出版物』が氾濫する今の時代において、如何にマトモな精神で、生きていくか、どうやって「いい書籍」にたどり着けるのか、を考えるべきである。

 いまさら、時代を昔に戻すことは不可能なのだ。齊藤氏がいう『出版流通等監視委員会(仮称)』を作ったところで何も解決しない。それこそ「新刊点数制限」なんてものを作ったら、新規参入制限に繋がってしまい、そこに出版の自由という理念はどこにいってしまうのだろうか。出版は誰がやっても自由、誰が始めても自由、誰もが出版社・出版者になれるという、まさしく放送や新聞にない自由さがあるからこそ存在の価値があるのだ。齊藤氏が言うような「規制業種」になってしまったら、そんな自由な出版業界の面白さが無くなってしまうように感じるのだが如何。

 更に言ってしまうと、「再販制度(再販売価格維持制度)」と「委託制度(委託販売制度)」をやめれば、出版業界にある諸問題が一挙に解決するというのだが、実はそんなに簡単な問題ではない。

 じゃあ、再販制度も委託制度もないアメリカの出版業界がどうなっているかを見るべきだろう。本好きなら、とりあえずバーンズ&ノーブルとボーダーズがどうなっているか位は知っているよね。

 つまりそういうこと。再販制度と委託制度は切っても切れない制度なんだけれども、それが無くなった時の問題をシミュレートすると;

 再販制度が無くなったので、販売価格は書店が決められる。じゃあ、そのときにどんな問題が起きるかと言えば、大型書店チェーンが町の本屋さんよりは安く本を売れる、ということなのだ。つまり再販制度が無くなってしまえば、出版社から書店に(間に取次が入るけれども)本を卸すときの価格も変わってしまうということ。つまり、1,000部仕入れる大型書店チェーンと10部しか仕入れない町の本屋さんでは、当然仕入れ値が変わるわけだ。これは営業上の当然の処理ですね。結果、読者に売る値段も大型書店チェーンの方が安くなるわけです。つまり、大型書店チェーンがますます販売力をつけるということ。

 もうひとつ。じゃあ、そんな大型書店チェーンが大量に売れ残った商品を抱えてしまった。さあ、どうするか。出版社は次のベストセラー狙いの本をその大型書店チェーンに大量に仕入れて欲しい。しかし、前に卸した本が見込み違いで大量に残ってしまっている。当然、大型書店チェーンは「前の商品の返品を認めてくれたら、新刊を大量に仕入れます」という返事を出版社に返すわけだ。まあ、出版社はその要請には応じるわけですな。しかし、町の本屋さんが「前の売れ残りを引き取ってくれれば新刊を仕入れます」なんて言っても、多分それは出版社側から委託販売じゃないから「じゃあ、いいです。新刊売らなくても」ということになるだろう。で、ここでもますます大型書店チェーンの力が大きくなるということなのだ。

 ということになるのです。つまり、再販制度と委託制度は齊藤氏が言うような問題もあるかも知れないけれども、もう一方、ちゃんと業界を守っている制度でもあるのです。

 そう、つまり再販制度と委託制度は齊藤氏は目の敵にするけれども、現状では「まだ、町の本屋さんを守る制度的保守」にはなっているのだ。これを、今すぐなくせというのは、齊藤氏自身が批判している、まさに「新自由主義」そのものじゃないのか?

 ということで、この本で再三齊藤氏が言っている「自民党、民主党、経団連、連合、その他旧守派からのバッシング」なんてありません。本当はバッシングを受けたかったのかな。しかし、残念ながらそれは叶わないのです。要は、それほど「自民党、民主党、経団連、連合、その他旧守派」には届かないメッセージなんですね。

 まあ、申し訳ないけれども、この程度の言論じゃ出版業界の話題にもなりません。素人の言論以前に、経済原則も分かっていない人の言論じゃね。おまけに、少子化問題はまだしも、ダム建設や特殊法人問題が何で出版業界の問題とリンクするんだよ。勿論、無関係とは言わないが、それはあまりにも「風が吹けば桶屋が儲かる」的な議論でしょ。

 ついでに言っておくけれども、この程度の本の内容も精査できない幻冬舎ルネッサンスの出版部・編集部ってどうなのよ。出版社にいる人間としては、もうちょっと出版業界のことを分かっている人に書かせた方がいいなじゃないか。あるいは、もうちょっと、出版業界のことを分かっている人に編集させた方がいいんじゃないか。と、思うんですけれどもね。

 でも、幻冬舎ルネッサンスがこれでいいと思っているのなら、それでもいい。要するにそんな会社は近々に潰れるだろう。

 そうやって、潰れる会社、興される会社が次々にあってこその出版業界なのだ。それが正しい状況。

 まあ、産業としては、まったく日本国からは相手にされていない、たかだか業界売上が2兆円以下の業界ではあるけれども、でも、それなりに生きていくには面白い業界ではあるのですね。

 

Epsn0101_2

EPSON RD1s Elmarit 28mm F2.8 @駒沢 (c)tsunoken

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書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

 初めまして。
 私は『もう読みたい本がない!』(幻冬舎ルネッサンス新書刊)の著者本人ですが、ここまではっきりと書かれてしまった以上、どのような意図をもって本書の出版に踏み切ったのか、明かそうと思います。

  実は、私が『もう読みたい本がない!』の出版に踏み切った最大の理由は、日本のB層社会化を強く危惧しているからです(なお、A層からD層についての説明は『ゲーテの警告-日本を滅ぼすB層の正体-』{適菜収著、講談社+α新書、2011年}などで詳しく書かれています)。
  なお、本書では「●層」という表現は使いませんでしたが、現代の日本ではB層と呼ばれる人たちが、政治や、経済などを動かすようになっています。そして、その結果が本書で述べたような出版物の軽薄化や、「消費財」化などに繋がっています。
  そこで、私は本書のような、B層と呼ばれる人たちから嫌われる著作を敢えて出すことで、日本のB層社会化に真正面から立ち向かいたいという意思を、明確に示そうと思った次第です。

  もちろん、tsunokenさんのおっしゃる通り、今の日本で、「重厚な出版物」がベストセラーのランキングのトップ10を殆ど独占していた時代を復活させることは、なかなか出来ないでしょう。
  ただ、私は本書の第4章の小見出しでも書いたように、「コミックや、ライトノベルや、ケータイ小説などを1冊も読むな!」と訴えているわけではありません。
  ただ、これらの軽い本と並行して、「重厚な出版物」も読む習慣を付けていないと、社会そのものがデタラメになって、ひいては日本そのものが滅茶苦茶になってしまいます。
  だから、ここは著者が「軽い本だけでなく、重厚な本も読む習慣を付けておかないと、大変なことになりますよ!」と警告している風に解釈した方が無難かと思われます。

  また、tsunokenさんは「『新刊点数制限』というものを創設して、何をしたいのか?」という疑問も強く感じておられると思われますが、実はこれは、売れ線の本ばかりを乱造することが果たして良いことなのか、出版業界全体に一度考えさせる狙いがあります。
  もちろん、そんなことをしたら老舗などの既得権を保護することになると思われるでしょうが、要は、大衆に受けの良い本を乱造するのを止めればそれで良いのです。
  だから、これは著者が、「目先の売上や利益に振り回されないで欲しい」と出版業界全体に訴えているのだと解釈した方がよろしいかと思われます。

  ここまで、色々書いて来ましたが、要するに私は、出版社や書店は資本の論理に翻弄されない強い信念を、読者は教養を持つことが出版業界全体の再生に繋がると訴えたかったのです。
  もちろん、私のような出版業界の外部にいる人間がこんな本を本気で出すのは変かも知れませんが、本来であれば出版業界全体が自己改革をして、出版不況を克服していれば、こんな本をわざわざ私が出す必要も無かったはずです。
  だから、これは出版業界全体を何とかしたいという野心を持った、26歳の若造の「闘争宣言」として、多くの人に読んで頂ければ幸いです。

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