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2011年10月14日 (金)

「あのこと」以来の小説が単行本で出始めたが

 2011年3月11日の「あのこと」以来の文学がいろいろ出はじめている。

 高橋源一郎氏の『恋する原発』が今発売中の『群像』11月号に掲載されている。

『恋する原発』(高橋源一郎/『群像』11月号所収)

201111

 そして、同じ『群像』の6月号に掲載された『神様』『神様 2011』が、9月に発売になっている。

『神様 2011』(川上弘美著/講談社/2011年9月21日刊)

 こちらは1993年の川上弘美氏のデビュー作『神様』と、その『神様』をベースにして「あのこと」以降変わってしまった事情をとりいれた「構造小説」なのだ。『神様』には熊の神様がでてくる。『神様 2011』には熊の神様に加えてウランの神様が出てくるのだ。あとは、まったく同じ構造の小説である。しかし、見える風景はかなり変わってしまっている。しかし、くまとのハイキングはまったく同じである。まったく同じだが、しかし、くまが採ってくれた魚の扱いは変わってしまっている。そう、まったく同じ構造をしているのだが、少しずつ変化をしているそのあり様。それが「あのこと」であるかのように。

 一方、高橋源一郎氏の『恋する原発』はまた別の視点から「あのこと」を描いている。

 主人公のイシカワはAVのディレクター。そう、「大震災チャリティ・アダルトビデオ」を作ることになった、アダルトビデオ会社のディレクターだ。「フクシマ第一発電所前集団セックス」を実現するために『エダノ長官がいる……。ホソノ原発担当大臣がいる……。ヤマモトモナはいないけど……。オザワイチロウがいてハトヤマユキオがいてマエハラセイジがいる。もちろんタニガキサダカズがいてイシハラノブテルがいてコウノタロウがいる。エリザベス女王がいてアサハワショウコウがいてホーキング博士がいる。クロサワアキラとディズニーとパゾリーニが抱擁している。フセイン元大統領とブッシュ元大統領(父と息子)が抱擁している……。』男はパンツ一枚、女はブラとパンツで。

 不謹慎? 顰蹙もの? 極悪非道? 被災者を何と心得るのか? 福島県民の神経を逆なでする酷い小説。などなど、そんな世界からの非難を待っているのだろう、高橋氏は。しかし、これがまったく起こらないんだな、この日本では。

 まずひとつ言ってしまうと、『群像』が数千部しか出版されていない超マイナー雑誌だってこと。というか、純文学系の文芸誌の世界では『群像』もメジャーなのだけれども、所詮純文学系の文芸誌自体が出版社にとってはマイナーな存在であって、結局、そこに掲載された作品を単行本化することでしか、その雑誌の赤字分を補えないということなのだ。ということで、講談社も<落ちぶれましたねえ>、この『恋する原発』を11月中に単行本発売をしてしまうのである。まあ、高橋源一郎ならば数万部は読めるということでの、発売決定なのだろうけれども、個人的にはもうちょっと待ったほうが面白い展開になると思うのだがなあ。

 要は、「不謹慎」だのという一般社会的な論議は、多分、起きないだろう。高橋氏が予想したほどにはね。まあ、朝日新聞あたりが論評をして、それを読んだ人たちが、大本の作品すら読まないで、高橋氏を非難すれば、想定通りなのだろうけれども。そんなにうまくいくかな。

 しかし、いまや日本の「一般社会」を支えている人たちは、まず小説なんか読まない人たちなのだ。小説どころか、新聞すら読まない。情報はテレビの情報バラエティ(ニュースじゃない)とネットからもたらせるものだけを受け取っている人たちだ。そんな「衆寓」が日本の実相である。そんな「衆寓」に向かって小説をだそうにも、だれも読んでくれないという厳しい情況を理解する必要があるだろう。

 ということで、この多少乱雑な小説は、多分高橋氏の中では、あまり高い評価の作品とはならずに終わるのだろう。

 講談社は、このまま(加筆もせずに)出版するのだろうか。それは、ちょっとなぁ……。

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