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« 阿波踊りの朝に思ふこと | トップページ | 『「東北」再生』はページ数は少ないが、なかなか読ませる本だ »

2011年8月30日 (火)

『日本経済の底力―臥龍が目覚めるとき』といっても、そんなスゴイ論文じゃないんだよね

 学者が書いた本であるし、もうちょっと凄いことが書いてあるのかと思ったのだが、まあ、普通のことですね。

『日本経済の底力―臥龍が目覚めるとき』(戸堂康之著/中公新書/2011年8月25日刊)

 まあ、そう思ったんですよ。

 つまり、そろそろ東日本大震災に関する冷静な判断から書いた本が出版されてもいい頃だろうな、いわゆるジャーナリスティックな視点からワアワア騒ぎ立てるのではなく、ね。で、東大の教授が書いた本なので、それを期待したのだが・・・まあ、私のような素人が考えたのと余り大差がないというのはどういうことだろう。

 論は『第1章 復興と成長』『第2章 経済成長の鍵 その1―グローバル化』『第3章 グローバル化の方策―TPPを中心に』『第4章 経済成長の鍵 その2―産業集積』『第5章 震災前の産業集積の実態』と、実情に対する検証が続き、さすがに経済学者らしい分析ではあるなと思わせるのであるが。

 結局、『第6章 「つながり」と「技術」による集積』『終章 日本人の底力』というある種「文学的」な「つながり」というタームを使用することによって、それまでの経済学的な分析は一切亡きものとされてしまい、「なによ『つながり』って、そんな文学的表現で終わっちゃうの?」というところである。

 で、『終章 日本人の底力』になると、それまで朗々と述べていた経済学的論旨も総て無視して『一つは、企業のグローバル化である。日本が輸出大国というのは間違いで、日本は貿易や海外直接投資から見ても、先進国で最もグローバル化していない国の一つである。しかし、企業はグローバル化することによって生産性を上げ、競争力を伸ばしていくことができるため、日本企業のグローバル化が低調であることが、日本経済が他国に後れをとっている原因になっている。だから、TPPをはじめとするEPA(経済連携協定)を外国と結んで、同時に企業を海外市場とつなげる支援策をも実施することで、貿易や投資を活発化して大幅なグローバル化を進めることが必要だ。

 もう一つは、地方の産業集積の創出である。地域に産業が集積することで、経済活動が効率化して経済成長は促進される。しかし、日本は東京一極集中で、被災地東北を含む地方に十分に産業集積が育っていない。地方に元気がないのが、日本経済の成長の阻害要因になっている。だから、東北をはじめとする各地に特区を設置し、大胆な税制優遇、規制緩和をするとともに、企業、大学、自治体とのネットワークを強化する施策が必要である』って、ほとんどこの本全部を通していっていることをまとめただけじゃないか。つまり、本書にかんしては、この『終章』だけ読んでればよろしい、と言う事になってしまうのだ。

 うーん、基本的にはイイことが書いてあるのだがなあ。

 基本的に言いたいことは「東北地方特区」だろう。本書115ページの地図にもあるとおり、これは自動車関連企業の問題なのだけれども、それ以外の産業も、そのほとんどが高速道路周辺に位置しているのだ。勿論、それは物流のことを考えての措置なのであるけれども、「地震」というよりも、その二次的災害であるところの「津波」にやられた沿岸地区にはほとんど自動車関連企業はないのだ。多分、これは電器関連でも、IT関連企業でも、同じだろう。要は、いまや経済は「物流」で動いているのだ。「物流」と関連ない沿岸地方は、海産物やら観光やら、なんかやらだけで暮らしている、言ってみれば過疎の村みたいなものなのである。

 勿論「過疎の村」には、それはそれなりの面白さがあって、その面白さをちゃんと主張できる部分があれば、それは観光資源にもなるのだが……。

 つまり、こうした「高速道路周辺に集積する新型の企業(工場)」と、沿岸地域にある「旧来の産業・工場」を如何にすれば、その相互交流が生まれるかということなのだ。それを可能にするのは、あるいは可能ならしめるため、ひとつには「特区」構想としての法人税ゼロ構想ではないだろうか。そう、東北地方は法人税0パーセントにしてしまうのだ。法人税緩和というのは今までの特区構想でもあったけれども、0パーセントというのは、世界中どこを見てもないだろう。多分、時限立法にしかならないだろうが、これは企業にとってはかなり魅力があるのではないだろうか。

 だって、東北地方に本社を置けば税金を払わないでいいんですよ。まるで宗教法人だよね。もう、世界中から企業が本社を置きたがるんじゃないの。勿論、登記上の本社じゃだめですよ。ちゃんと本社機能があるオフィスがなければ駄目というところで。そう、日本会社「宗教」法人です。そんな法人税ゼロにしちゃったら、税収がなくて困ってしまうじゃないか……ということもなくて、結局その企業に勤めてる人たちは、やはりその企業の本社のある場所に異動するだろうから、そこでの所得税(これは国税だけど、そこから地方還付税があります)や住民税は取れるわけで、あと足りない部分は消費税あたりで賄えばいいんでないの。

 そうすると、東北地方にどんどん会社が来てしまう。それこそ仙台あたりが経済都市として、とてつもなく大きくなってしまうかも知れないのだ。で、適当な時期に、少しづつ法人税を上げるというのはどうかな。まあ、その辺は状況を見ながらでいいのでしょうが。

 で、すこし会社がいなくなって、人が減ってラクチンになった東京が政治都市として首都機能だけを持つってのもいいのかもよ。ようするに、経済都市としても政治都市としても、機能しなければならない(最近は最早その機能もだめになっているのでは、という気持ちもあるが)という、今の東京がいびつなんだって。

 ついでに、政治首都機能も仙台に持ったかれたらどうすんのよ、って? そんなの、もっと楽じゃん。それこそ、戦国時代に伊達政宗が政権を取ってればそういうふうになっていたわけで、全然問題はない。たまたま、徳川家康が勝っちゃったから、その後の300年の徳川時代が始まったわけで、伊達幕府が100年位続いて、その後、誰が政権取っても、多分世の中の進展にはあまり関係なかったような気がするのだ。いずれにせよ、19世紀には日本が鎖国を解くしかなかったんだよね、ということで。

 ということで、ちょっと横道にズレてしまったが、要は、日本(中小)企業のグローバル化、集積化、そして対外投資の積極化しか日本の生きる道はない、というのは賛成。ただし、それを言うためだけに中公新書一冊分を使わなくてもいいでしょ、というのもある。

 まあ、学者の論文なんてこんなものか、と言ってしまえばそんなもんだが、基本的な間違っていないことを言っている筈の戸堂氏、もうちょっと進めた論議を期待したい。

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