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2011年8月 5日 (金)

『真贋』は吉本隆明の真贋を問う本でもある

 最近の吉本隆明氏の本は読みやすいのは何故だろう。

『真贋』(吉本隆明著/講談社文庫/2011年7月15日刊)

 昨年10月20日のエントリー「『15歳の寺子屋 ひとり』は吉本隆明がいいおじいちゃんということなのだろうか」で「吉本隆明老いたり」なんて失礼なことを書いてしまい、15歳にもなったら書いてある内容が分からなくてもいから『共同幻想論』くらい読め、なんて毒づいていたわけだが、この本を読んでみると、別に失礼ではなかったと考えるようになった。つまり、「老いたり」ということは別に失礼なのではなくて、「良い年老い方をしましたね」ということなのだ。

 本書は聞き書きで、実際には編集者が書いているようだ。その辺にも分かり易い書き方になっているのであろうが、いずれにせよ『共同幻想論』や『言語にとって美とは何か』といった、吉本氏が若い頃書いていた本とは異なり「難解な表現」というものはない。

取り敢えず、目次から拾ってみると;

1 善悪二元論の限界

2 批評眼について

3 本物と贋物

4 生き方は顔に出る

5 才能とコンプレックス

6 今の見方、未来の見方

という構成。

 つまり、若いころは難解な表現をしないと言えないことがあると考えてしまうものだ。確かにそれは事実ではあるけれども、年をとるとだんだんそんなことが面倒くさくなる。そうすると難しい言葉を使わずに表現をしていくようになる。難しい表現をしなくなるとと、当然難しい内容のことは言わなくなる。で、割かし当たり前のことを言うようになる。となると、15歳の子どもでも理解できるような話ができるようになる。ということなのだ。

 本書も、そんな延長線上にある本である。特に難しい内容の本ではない。割と「当たり前」のことを言っているにすぎない。まあ、三島由紀夫の育ち方から母親が名付けた「暗い一生」という捉え方をあげて、三島の生き方を「強烈な意志で自分を変えようとした人」として捉え、『ああいうタイプの人は、持って生まれた観察力が優れているというよりも、人工的につくり上げた能力で世の中を見ている部分が多いと思います。だから、三島さんの小説は非常にいいのですが、どこか人工的なにおいがします。そもそも小説は人工的に違いないのですが、そういう意味でなくて、なんとなく空疎な乾いた感情の印象を感じるときがあるのです』と切って捨てる部分はあるのだがね。

 まあ、人間最後は宗教に行くのかなとも思うが、吉本氏はやはり親鸞に行くのだった。

『ある意味で仏教にとどめを刺した人です。はたして、その考えがいいか悪いか。天台宗や空海が興した真言宗など、宗派はろいろありますから、ほかの宗派の人は親鸞の考え方を決していいとは言いません。しかし、近代以降の日本の知的な人たちに言わせれば、ほかのは宗教だが、親鸞の考えだけは宗教にとどめを刺した宗教だととれるわけです。そこは僕にとってはものすごい魅力です』

という具合に。

『マルクスは哲学的ではありますが、政治的ではありません。多少政治に関係して、第一インターナショナル(社会主義運動の国際組織)のオーストリア書記になって活動した時期もありますが、彼の哲学自体は政治的でなくて、自然哲学です。

 世界的に言えばマルクス、日本の生理学者で言えば三木成夫、文学者で言えば柳田国男、折口信夫といった人は、歴史問題についても、起源をおさえています。人間の精神活動の起源は宗教ですから、どういう宗教を持っていて、それはどういう特徴があるかということを的確にとらえて書いているのです』

と、彼の宗教観を書いている。もうマルクスも宗教家に入れてしまうような勢いだ。

 なるほど、そういう方向に吉本隆明は行っているのだったのか。

 となれば、もうよしもとばななのお父さんというスタンスでもまったく問題はないということね。

 でもなあ、文庫本の棚は著者別50音順なので、当然「吉本隆明」の次が「よしもとばなな」の訳であるのだが、なんか抵抗があるんだよね。

 って、そんなことに抵抗があるのは私だけ? (「うんうん」「そうそう」という声)そうか、最早年寄りは引っ込めってことね・・・。

 

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