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2011年8月12日 (金)

失敗学実践講義

『未曽有と想定外』で、東日本大震災についていろいろ述べた畑村洋太郎氏はNPO法人失敗学会会長にして東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会委員長である。まさしく、企業がおこすトラブル、失敗、事故についての畑村氏の検証作業がますます重要になってくる。ただし、それは実は簡単なことなのだけれどもね。その簡単なことを私たちは忘れてしまいがちだし、そんな「簡単なこと」から大きな事故が起きているのだ。

『失敗学実践講義 文庫増補版』(畑村洋太郎著/講談社文庫/2010年5月14日刊)

 この『失敗学実践講義』で取り上げられる事故は下記の通り。

第1講 六本木ヒルズの大型回転ドア事故

第2講 日本航空の連続トラブル

第3講 JR福知山線脱線事故

第4講 みずほ銀行のコンピュータ・システム・トラブル、東証「付け合わせシステム」トラブルとライブドア事件に伴う全株式取引強制停止。

第5講 三菱自動車のリコール隠し

第6講 頻発する大手企業の火災事故

第7講 JCO臨界事故

第8講 H2Aロケット6号機の打ち上げ失敗

第9講 JR羽越線脱線事故

補講  JAL破綻/トヨタのリコール

 基本的には、各社とも事故や失敗が起こらないような組織作りやマニュアル作りなどは手がけているのだが、その組織作りやマニュアル作りのちょっとした「抜け」が事故や失敗の原因なのだ。

 基本的なことを言ってしまえば、『技術が進化し、社会が成熟したことで、誰もが「安全であることが「当たり前」と思うようになりました。ところが、現実には、「当たり前」と思っている安全は「絶対」なものではないので(そもそも安全が絶対であるはずははないのですが)、こうした認識と実態のギャップが原因となって危険が想定されていない場所でいまなお多くの事故が起こっているのです』ということなのだ。

 つまり『マニュアルを参考にするのではなく、身のまわりにある具体的な危険に焦点をあてえ、そこから安全について考え直すのです』つまり「マニュアルを変える」ということなのだ。

「マニュアルに従っていれば問題は起きない(はず)」という考え方は、実はこの3月の福島第一原発事故に際しても確認されていたことなのだ。つまり、東電の社員やその下請け社員は決してマニュアルに反していることを行っていたわけではない。逆に、マニュアルを遵守していたがために、あのような惨事になってしまったのである。

「地震が起きたらこうすればよい」「津波がきたらこうしろ」というようなマニュアルは当然、地震が多い日本の、海に近いところのある原発なら盛っているはずである。で、多分地震が起きたときには、そのマニュアル通りの対応策を講じていたはずである。ところが、そのマニュアルの通りには現実はならなくて、それこそ「マニュアルで」想定した以上のことになってしまったわけである。これが「想定外の出来事」という理由なのである。

「マニュアル通りの動きをしろ」あるいは「マニュアルに捉われるな」というような指示を出すのは現場の責任者だろう。それは、現場の状況を一番知っているのがその立場の人だからである。しかし、現場の責任者がそのような自分で判断した決断を下せないことになってしまうというのは、どこかやはりその組織の中で動脈硬化を起こした部分があるということなのだろう。

 で、結局はそういう風な社内風土を作った経営トップの責任になってしまうわけだが、それは経営トップに話を持っていかなければ、最終的な解決にならないから、という話であって、本来的にはその下の段階でも解決できる話でもあるのだ。まあ、多分それも社内風土の問題なのかなあ、つまり、上が決めたこと、社内マニュアルなんか、などに対しておかしいと思った人が平気でそれを批判することができるかどうかということ。そうした批判を上の人間が「普通に」受け止めることができるかどうか、ということ。

 多分、昭和30年代ころの日本企業は、そんなおかしな規則と、それに対する批判が沢山あたわけで、それを下からの突き上げと上からの反省もあって、だんだんと改善されてきた。その結果が、昭和50年代以降の日本の企業風土なわけで、それから15年位はそのままでもうまくいったわけですね。それが、昭和から平成になったあたりで、世の中はマニュアル社会になってしまった。

 個人は、会社なり何なりが決めた「マニュアル」に則って仕事をしてるかどうかが大事なことになり、問題は仕事の「結果」ではなくてその経過において、ちゃんと規則を守ったかどうかが大事になってしまい、(大)企業は経済産業省あたりが作った「マニュアル」通りに(大)会社を運営しているかどうかが大事になり、その(大)会社独自の判断でどれだけの仕事を成し遂げたのかは、割かしどうでもよいことになってしまっている。

 サラリーマンにとっては、大事なのは仕事の経過ではなくて、あくまでも「結果」でしょ。それこそ売り上げを沢山出した奴が偉い、ってことにならなければいけないのだ。多少、脱法行為をしてもね、というのが裏側にある。企業も沢山売り上げを上げて税金を沢山納める会社が偉いのだ、多少、賄賂を使ってもね。というのが、いまやすべてクリーンでなければいけない社会になってしまった。クリーンであることはよい事なのだけれども、だからといってマニュアルで決めたやり方だけが正しいという言い方の社会はないだろう。

 つまり、「マニュアル社会」というのは、自分で判断することをやめてしまった社会ということだろう。で、そのときに頼るのは「国が作ったマニュアル」ですか? もはや、それこそファシズムじゃないですか。

 そんな、官僚ファシズムに陥らないためにも、畑村洋太郎氏の本を読んでおくのは有効だ。『失敗学のすすめ』がその基本にあり、この『失敗学実践講義』がその実践のなかでの応用だし、『未曾有と想定外』は、今回の東日本大震災に関する記述であります。

 まあ、この3冊を読んでれば畑村氏の、たとえばテレビなんかでの話もよくわかると思うのだが、まあ「人間は失敗をする」ということが前提にあれば、どんな事故も普通に対処できるのであろう。

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