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2011年7月 6日 (水)

サヴァイヴ

 今年も7月になると自転車関連の読みものが出てくる。当然、それは先週末から始まっているツール・ド・フランスが始まって多少は国民の目も自転車の方に行くだろう、という思惑の賜物なのだけれども、残念、今年は去年までのブイグテレコム、今年からはヨーロッパカーとなってしまったチームに所属する新城幸也も、レディオシャックの別所史之も出場しないツールになってしまった。

『サヴァイヴ』(近藤史恵著/新潮社/2011年6月30日刊)

 例えば、高千穂遥氏のように自ら自転車乗りになってしまい、まさに「坂バカ」になってしまう人もおり、その体験を元に小説やエッセイを書く作家もいるのだが、近藤氏は自らは自転車乗りであることは公言していないし、たしかにツールなどのレースは見に行っているようだけれども、国内レースをどれだけ知っているのかは知らない。

 まあ、野球経験者だけが野球小説を書けるわけではないし、野球を見ることが異様に好きな人が書くのが普通の野球小説であることを考えれば、別に自転車乗りじゃなくても自転車レース小説は書けるわけである。けれども、その場合、やはりそれは野球小説でも同じなのだけれども、自転車選手のフィジカルな部分についての記述よりは、どちらかというとチームのタクティカルな部分の記述が多くなる。当然、自転車レースというものはチームの「エース」を勝たせるために、すべての「アシスト」が働くという極めてタクティカルなゲームであるから、それはそれでいいのである。しかし、自転車レースといっても、基本的にはフィジカルなゲームであるのだから、「エース」にも、そして「アシスト」にも同様な「フィジカル」な問題が常に生じているわけなのであって、そこの部分にも触れた小説があってもいいなとは思うのだ。

 が、しかし近藤氏の作品は基本的には「タクティカル」な部分の記述が多い小説になっている。

 第1話『老ビブネンの腹の中』では、スペインのプロ・コンチネンタルチームにいてそこそこの成績を出し、今は北フランスにあるパート・ピカルディというチームに移籍し、北フランスという場所にいるチームとして当然「パリ・ルーベ」というワンデイ・レースに出る白石誓という選手が主人公というわけで、これは『サクリファイス』『エデン』につながる話である。

 第2話『スピードの果て』は、日本の自転車フレームメーカーがスポンサーになっているチーム・オッジに所属する新進の選手、伊庭和美という人が主人公の話であり、その伊庭が世界選手権に出ることになり、まだスペインのプロ・コンチネンタルチーム、サントス・カンタンにいた白石と一緒にフランス、ニースで行われた世界選手権で走る話。

 第3話『プロトンの中の孤独』は、それより数年前の話に戻り、スペインに3年半いてアマチュア・チームに所属していたのだが、結局そこでは芽が出ずに日本に帰りチーム・オッジに拾われ、そこで新人、石尾豪の面倒を見ることになった、結局はアシストで終わった選手、赤城直輝が、石尾から『赤城さん、俺のアシストしませんか?』と言われる話。その話の切っ掛けになったのは赤城が言った『なあ、石尾。俺をツール・ド・フランスに連れてけ』という言葉だったのだ。

 第4話『レミング』は、第3話の続編で、チーム・オッジのエースとなった石尾に対して、「沖縄ツァー(ツール・ド・おきなわ?)」でどうしても勝ちたい安西とエース石尾の話。

 第5話『ゴールよりももっと遠く』は石尾と赤城の昔の約束『俺をツール・ド・フランスへ連れてけ』という約束(?)を再確認する話。

 第6話『トゥラーダ』は再び白石誓の話に戻って、スペインからフランスのチームに言ったものの、結局今度はポルトガルのチーム、サボネト・カクトに移っている。そこでの同僚選手のドーピング話。

 ということで、ヨーロッパでの自転車スポーツの話と、日本における超マイナースポーツとしての自転車スポーツが概括できるようにはなっている。

 しかし、なぜヨーロパの自転車レースはパリ・ルーベもそうだし、ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・エスパーニャなどの実名で書いているのに、日本のレースは「ツァー・オブ・ジャパン」が「ツール・ド・ジャポン」で、「ツール・ド・北海道」が「北海道ステージレース」で、「ツール・ド・おきなわ」が「沖縄ツァー」で、「ジャパン・カップ」が「日本杯」って、そこまで変えなくてもいいんじゃないか。そういうことをやっているから、日本の自転車ロードレースの世界がマイナーなままなのではないだろうか。

 もっと、堂々と。日本にも世界に誇れる自転車ロードレースがあることを声高に伝えましょう。勿論、日本の自転車ロードレースにおけるヨーロッパのレベルとの違いは分かっている。新城や別所がグラン・ツールで勝てることはないだろう。しかし、少しずつ近づいていかなければならないのだ。

 そんな意味でも、小説であっても、すこしずつヨーロッパのレベルに近づきましょうよ。その為には「日本にもこんなにちゃんとしたヨーロッパにも主張できるレースがあるんだ」ということで、ちゃんと実名でレースを描きましょう。

 ねえ、近藤さん。

 

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