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« 『書店ほどたのしい商売はない』とはいっても、そうなのかなあ・・・ | トップページ | 『熟女ホテトルしびれ旅』はいいのだが、その後の作者の動向が気になる »

2011年6月22日 (水)

『太宰治の作り方』は、太宰治と津島修治の間を繋ぐのか、分けるのか

 要は、「太宰治」と「津島修治」の間を繋ぐのか、分けるのか知らないがその「一人にして二人の人物」を描こうとした本なのである。

『太宰治の作り方』(田澤拓也著/角川選書/2011年3月25日刊)

 太宰治自身が標榜したわけではないけれども、太宰作品に言われる「私小説」に筆者の筆は及ぶ。つまり、かれがなしてきた自殺の問題も結局は「私小説」の「ネタ」ではないのかという考え方。つまり『ともあれ、見てきたように、この五度のうち二度目から四度目までの事件について、太宰は、それぞれ何度も“生環記”を小説に書いている。一度目についてのディテールがどこにも記されていないのは、あるいは、まだ“自伝”形式で小説をかいていない時期だったからだろうか。まさか事件そのものが幻だったわけではあるまい。五度目についてどこにも書かれていないのは、いうまでもなく、太宰が玉川上水の現場から生還しなかったからである』ということなのだ。どうも、太宰のような「私小説」作家にとっては自らの「死」をも、それこそ「死」のあとも、もし書けるならば自らの「死」を書きたかったんだろう。もっとも、自らの「死」を書ける機会があれば書いてみたいという作家は私小説作家じゃなくても、みんな書いてみたいだろうけれども。

 つまり、太宰にとっての「私小説」とは「私の周辺を描いた小説」ではなくて、「私はここにいる、この私をみて!」という小説なのである。要は、究極のナルシシズム。田澤氏が何度も書いている『太宰の小説は私小説ではなく「私の小説」なのである』というように、本来私小説とは言っても登場人物は多彩に及ぶ、しかし、太宰の場合「私」以外の登場人物の存在感は薄く、結局は「私」を浮き上がらせるための「モノ」でしかない。

 ただし、それはどうでもよい。問題はそんな「私小説」に「純文学」を重ねてきてしまった、我が国の文学界ではないだろうか。そんな自分自身のナルシシズムによるところの文学を最高の文学として、市井に生きる人たちの姿を活写した文学を大衆小説とか中間小説として分けてきた文学観を変えなくてはいけないじゃないだろうか。

 太宰は別に太宰であっていいわけである。つまり『いつでも太宰治は百パーセント自己中心。自分の「愛」や「苦悩」しか頭にはなく、何度も何度も同じ話を繰りかえし、激しい自己否定の言葉をつらねる手口で、その実、強烈な自己肯定を表現していく』という人間なのだ。

 ひとつだけ言っておくことがある。太宰の作品は決して『小説のストーリーとともに、同時進行で彼の生活背景も読んでいくわけですよ。いろんな女性の問題だとかね。そこに太宰の人間性が垣間見えて、読めば読むほど面白くてやめらんなくなっちゃった』ということは、自由であるけれども、実際にはそうでもなかったということも、どこかで知ってほしいのだ。

 作家の実像を知ることは、別に、その作家の読者には求められることではない。作品を通して感じた作家の感性やら知性を信じればいいのである。とはいうものの、やはり作家の実像には迫りたい人もいるわけで、そんな人たちには「がっかりしないでね」と言うしかない。

 ま、そのくらい、作家が自ら描いている世界と、作家の実像とは違う、ということですね。

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