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2011年3月22日 (火)

『戦前昭和の社会』と今の時代の単純比較は問題だ

 戦前昭和ヒトケタから十年代というと、大正デモクラシーの時代から一転暗く戦争に向かって突き進むようなイメージがあるのだけれども、意外と明るく未来を見据えた社会背景もあって、「鬼畜米英」へ向って破滅へ突き進んだのは1941年(昭和16年)からの数年間にすぎず、むしろ戦後の方が暗い時代が長かったのだなということが分かる。

『戦前昭和の社会 1926-1645』(井上寿一著/講談社現代新書/2011年3月20日刊)

『電球にはじまり、扇風機、アイロン、コタツなどの家庭電化製品が一般家庭に広まっていた。高価ではあっても、今と変わらない機能の冷蔵庫を手に入れることができた。洗濯機も同様である。新しいメディアのラジオが飛躍的な普及をみせていた。デパートは出店ラッシュだった。売り場には最先端の商品が並んでいる。アメリカ製の家庭電化製品から「10銭均一」商品まで、何でもそろう。映画(活動写真)は大衆の最大の娯楽だった。洋画はハリウッド映画である。一番人気はチャップリンだった。

 このような大衆消費の進展の一方で、社会の格差が拡大していた。鉄筋コンクリート造りの集合住宅(「アパートメント・ハウス」)でモダンな生活を送る人びとがいた。他方でプロレタリア小説が描くように、労働者や農民は過酷な生活を強いられていた。高学歴エリートの大学生の就職難は、「大学は出たけれど」が流行語になるほどだった。

 格差是正の期待を担って成立したはずの二大政党制は、党利党略に明け暮れた。テロとクーデタよりも前に、政党政治に対する国民の懐疑の念が強まっていた。国民は政党よりもカリスマ性のある政治指導者が直接、社会を変革することに賭けるようになる。

 他方で社会の閉塞感は、性的な享楽と醜悪で不可解な事件が頻発する「エロ・グロ・ナンセンス」の風潮を生む。新興宗教が興隆する。』

 といった具合に、ちょうど今の時勢によく似た社会事情ではあるようだ。名目GDPが中国に抜かれたとはいえ、未だ世界の中でもっとも豊かな国であるにもかかわらず、社会の格差は拡大するばかりだし、大学生は就職氷河期の真っ最中だ。二大政党制によって政権交代した菅民主党も、まさに震災と原発事故と言う「国難」を利用して「挙国一致内閣」を構成して翼賛体制を作ろうとして自民党に拒否されたりするという党利党略のみに突っ走る状態だし。そんな社会の中でスピリチュアル・ブームがおきたりしている。

 とはいうものの、こうした社会状況の比較というのは、あまり有効であるとも思えない。そうなってしまうと、では次には「戦争による社会の平準化」を図るのかということになってしまう。一方、日本の周囲は尖閣列島の中国、竹島の韓国、拉致の北朝鮮という具合に、火種にしようと思えばいくらでも火種になってしまう材料には事欠かない。それこそ震災による国難の真っ最中の今ではそういうこともないが、それまでは「戦争をやって若者を鍛えろ」なんて言っていた「天罰男」石原慎太郎なんて輩もいるのである。

 確かに似たような社会状況「も」あるのであるが、そうでない状況もあるのである。そうした似たような状況と似てない状況とを比較して、どこがどう似ていて、どこがどう似ていないかを確認しつつ、未来に向かって検証をすすめていく作業が必要なのだろう。

 

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はじめまして、突然で恐縮です。パピガニと申します。
同じ書籍の記事として、当方ブログからリンクをはらせていただきました。
失礼しましたー「(^^)

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