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2010年11月17日 (水)

なぜ男たちは皆北へ『走ル』のか

 なんで男たちは自転車で「北」へ走るのかということである。

『走ル』(羽田圭介著/河出文庫/2010年11月20日刊)

「自転車小説」というジャンルがあるのかどうかは知らないが、私が知っている「自転車小説」の主人公たちはみな「北」を目指して走っているのだ。まあ、後述するロードノヴェルの話ではないけれども。ミステリー仕立ての『男たちは北へ』(風間一輝著/ハヤカワ文庫/1995年8月15日刊)の主人「俺」は『走ル』の主人公・本田とはちょっと違って初めから青森という目的があって走るので、ずっと国道4号線をずっと走る。『自転車少年記』(竹内真著/新潮文庫/2006年6月刊)の主人公は八王子から新潟県の糸魚川まで走る「グランフォンド糸魚川」というレースに出ている。その話が小説のメインである。糸魚川が東京よりは北なのかと言えば微妙ではあるが、基本的には北西方面だから「北」ということにしよう。

 そしてこの『走ル』の主人公は、何の目的もなく、ある日ちょっとしたきっかけで再組み立てしてしまったビアンキ(ロードレーサー)に乗って、陸上競技部(それも長距離)の練習からなんとなく国道4号線を走ってしまい、郡山から4号線を外れて会津、山形、秋田と日本海側に移り、最後は青森から盛岡まで幼馴染の少女に会いたくなって再び4号線を走り、しかしそれはやめて、盛岡からは上野まで電車に乗って戻り、市川市にいるガールフレンドの所へ帰る(行く?)という話だ。

 何故「北」なのかと言えば、ひとつには「北」の方が話が作り易いということがある。南(西)に行くと、東京からまず最初に横浜があって、箱根があって、静岡があって、豊橋があって、名古屋があるという、太平洋岸ベルト地帯だけを行くような話になってしまい、それでは日本のいたるところにあるような「田舎」を描けないという問題がある。

 しかし、もうひとつが重要で、「基本的に男たちは北を目指す」という大命題があるのだ。

 日本における「北」とは、つまり遠く「蝦夷地」を目指す旅になるということである。「蝦夷」がどこまでなのかは分からない。しかし、東北地方は完璧に「蝦夷」であるし、北陸地方だって長野あたりまでは「蝦夷」であった時代があるはずだ。つまり、「男たちは蝦夷を目指す」ということは、それは「蝦夷~縄文」へと連綿と続く、日本の原像を求める旅であるということなのだ。大いなる「蝦夷」の母なる大地に男たちは赴く。

 それは決して南(西)ではない。そこにあるのは京・大和であり征服王朝の末裔の地でしかない。

 例えばこれが大和以西の話であれば、やはり男たちは南へ行くのだろうか。熊襲、隼人の南西へ。そこには蝦夷と違ったやはり日本の原像があるのだろう。この場合は決して北東の京・大和へとは行かないだろう。男たちの目指すところはやはり日本の原風景なのだ。赴く先に思想がある。

 結局、男たちは京・大和は目指さない。それが重要だ。

 ロードノヴェルの先行作品として有名なジャック・ケルアック『オン・ザ・ロード』ではこうした思想は見られない。結局、『オン・ザ・ロード』の主人公は東海岸から西海岸へ、西海岸から東海岸へを何度も往復しながら、自らの思想を探し続けるのであるが、それすら見つけられずに旅を続ける。ただただひたすらに旅を続ける続ける。それに比較すれば、日本の男は行く先がはっきりと思想として出てきているということだけ良いか。

 これは、「歴史の力」なのかも知れない。たかだか200年の歴史しかない国との比較ですが。

 

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