nude
角川シネマ新宿やシネマート新宿があるビルは元々はアートシアターの新宿文化や蠍座があった場所にある。ビルの名前だけは「新宿文化ビル」というものが残っている。そんな場所で見たのが『nude』であった。
『nude』(小沼雄一:監督・脚本/石川美香穂:脚本/製作:スモーク・ダブ/原作:みひろ/配給:アルシネテラン・ハピネット)
衣装、持ち道具、装飾のすべてにおいて赤とピンクを一切排除し、ロケの際にも喫茶店の窓に映り込む赤いビルのノボリさえ撤去させ、男目線による扇情的なAVシーンを避け、女性の内省的な視線で描く映画にしようという小沼監督の意図は成功しているだろう。『nude』というタイトルから多少は扇情的なAv映像を期待していた男性観客の興味は見事に裏切られるのだ。
そして、主人公みひろ・山瀬ひろみ(渡辺奈緒子)よりは、むしろ幼なじみの河合さやか(佐津川愛美)の視線が強化されて、さやかのみひろに対する抵抗や感情がみひろの考え方のベースになっている。みひろがそこまでしてAV出演にこだわる裏側にはさやかの抵抗があるみたいで、むしろ恋人のたかしの存在は小さく、まるでいてもいなくてもいいような立場でしかない。そこで、最後にみひろはたかしを捨てるのだ。そしてたかしを捨てることによって、更なる高みを目指すみひろ、という構造になっている。
監督の小沼雄一は男だが、むしろ女性映画と言ってもよいような『nude』ではある。
しかし、渡辺奈緒子よりは佐津川愛美の方がみひろ役にあっているような気がするのは、私だけだろうか。もっとも、美しいというよりは可愛い感じの佐津川のみひろ役だと、もっと扇情的な映画になってしまったかもしれないが・・・。
11/5までシネマート新宿にて公開中/11/6よりシネマート六本木で公開
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