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2010年9月25日 (土)

電子書籍大国アメリカ

 私がマサチューセッツ工科大学のメディア・ラボで行われたセミナーに参加したのは1997年11月のことである。そこでプレセンテーションを受けたいくつかの研究テーマとしてウェアラブル・コンピュータなどもあったが、一番実用化に近いと思われたのが電子ペーパーであった。電子ペーパーはその年設立されたE Ink社によって実用化されたが、なかなか商業的に大きな成功には至らず、2007年になってやっと我々の前に「アマゾン・キンドル」という形になって現れた。しかし、その裏側でいろいろ開発やら、営業やらがあったのだろうな。つまり、1997年のE Ink社の設立から10年後のことであった。

『ルポ 電子書籍大国アメリカ』(大原ケイ著/アスキー新書/2010年9月10日刊)

 しかし、既に電子ペーパーの開発から始まってキンドルの発売までの状況を知っているアメリカ人(あるいはアメリカ人出版業界関係者)にとっては、紙の書籍から電子書籍への移行というのも自然なことだったようで、i Padの発売で突然「黒船」騒ぎを起こしている日本の状況とはかなり異なるようだ。

 アメリカで出版状況がだいぶ変わっているという、そんなことは前から分かっていることなのに、いかにも突然「黒船」がやってきたかのように大騒ぎする日本の出版業界って何なのだろう。しかし、イノベーションというのは、ある日突然やってくるものであり、それも業界外のところから何の前触れもなしにやってくるものなのだ。つまり、日本の出版業界のイノベーションは、ある日突然、日本の出版業界外のところからやてくるものなのだ。で、キンドルでありi Padなのか、ということなのだけれども、それは基本的には妨げることのできない歴史の進展のようなものであり、いまさらそれに対して「ダメだ」といったところでどうにもならないラッダイト運動のようなものでしかない。要は、そのような歴史の変化の中でどのように自らの生き方を進めていくかということでしかない。出版業界に生きることをやめるというのもそのひとつの選択だし、出版業界で如何に自らの立ち位置を保とうと無駄な努力を重ねるのももうひとつの選択ではある。

 出版業界といっても、出版社、編集プロダクション、印刷会社、製本会社、運送業者、取次、書店といろいろある。その中で、もっとも「黒船」論争をしているのが書店であろう。出版社や編集プロダクションは元々が出版業というものがベンチャービジネスであることを知っている(最近の人は知らない?)訳だし、印刷会社は今や出版から入ってくる売上なんてものは売り上げのごく一部でしかないし、運送業者もそうである。つまり、製本、取次、書店が実は一番この「黒船=電子出版」についてセンシティブになっているのだ。だからといって、彼らを救う方法はない。まあ、取次はその資本力もあるし、そのなかで生き延びることも考えられるが。

 で結果はこういうことになるのだ。『結局のところ、彼らの主張する「守るべき日本の出版文化」などというものは、実のところは自分たちの既得利権にほかならない。長引く出版不況を、版元、取次、印刷会社、書店が痛み分けで堪え忍んできたのに、ここにきて外国勢の電子書籍のせいで自分たちだけが中抜きされるのはイヤだ、ということだろう』という大原氏の主張は正しい。「出版不況」を乗り切る策として(アスキーもそうだけれども)めったやたら新書という、低廉でしかも無内容な本ばっかり出している自分たちの出版姿勢自体が「出版不況」のもとになっているということにすら気づかない、というか気づいているけれども他に手がなくそうするしかない出版人の姿を見ると腹が立つ。おまけに、書店を見ると茂木健一郎、勝間和代、池上彰の本ばっかり各社から出版されているという編集者の不勉強ぶりを見ると、これは「出版不況」もむべなるかなというところだ。なにせ、彼らの本の次第に内容が薄くなることに気づいていないのだろうか、あるいは気づいていてももう企画しちゃったから出さざるを得ないのか、というところである。彼ら編集者は他社から出された同じ筆者の文章が他社版とカブることに対して無関心なのであろうか、だったら最低の編集者である。書店も、そんな本ばっかりを置いていてそれでよしとする。日本中、皆同じような書店しかないのだ。それでいて「出版不況」ですか? そんなの当たり前じゃないですか。何故、もっと「本好き」な書店員を雇って、その書店独自の本棚作りとかをしないのだろうか。

 アメリカではレンタルビデオの超大手チェーンであるブロックバスターが経営破綻に陥る一方、インディペンデント系のレンタルビデオ店がまだまだ元気でやっているという報道もある。つまり、映画好きのタランティーノみたいなビデオ店員がいて、その店独自の商品構成を作っているビデオ店は大丈夫生きている、ということなのである。要は、ブロックバスターは金太郎飴みたいな店しか作っていなかったからね。同様に、バーンズ&ノーブルという超大手書店チェーンこそ、まさに金太郎飴的な店舗構成でこうした電子書籍の動きに経営問題が出てきそうだし(バーンズ&ノーブルもNOOKという電子書籍デバイスを出して対抗しているが)、一方でインディペンデント系の「本好き」な書店が生き残るという図式も見られそうだ。これも、ブロックバスター対インディペンデント系レンタルビデオ店の対決みたいなものだ。

 日本におけるインディペンデント系書店たるいわゆる「町の本屋さん」だって同じである。もっと本を好きになろうよ。単なる商品として「本」を考えるのでなくて、自分が読んで面白いと思った本を並べましょうよ。そうすれば今より売り上げが上がることはないだろうけれども、ツブれることはないでしょう。あなたが親父さんより継いだ店をツブしたくはないでしょう。だったら、本当に本を好きになってよ。

 基本はそれだな。

 

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