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2010年9月 9日 (木)

浅田次郎の『蒼穹の昴』シリーズの外伝である

 西太后と宦官李春雲(春児)との話である『蒼穹の昴』、義和団事件と西太后の話である『珍妃の井戸』、張作霖を描いた『中原の虹』に続くシリーズ第4弾は、しかし、張作霖の死の秘密を日本側から描いた外伝的な作品である。

『マンチュリアン・リポート』(浅田次郎著/講談社/2010年9月17日刊)

「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」という大日本帝国憲法第三条を盾に、治安維持法の改悪を図る軍部首脳に対し「天皇陛下ノ人間タル」として、戦後の天皇人間宣言を先取りしたような「治安維持法改悪ニ関スル意見書」というビラを作成してばら撒いたかどで軍規違反に問われ、禁固6ヶ月で陸軍刑務所に服役中の志津那陽陸軍中尉が主人公である。その「天皇陛下ノ人間タル」という言葉に興味を持った天皇自身がそれを書いた志津那陽に興味を持ち、陸軍刑務所からまさに「超法規的措置」でもって志津を釈放し、関東軍が手をかけた疑いが実に濃い「張作霖爆殺事件」の実態を調査せよと命じることから物語りは始まる。

 釈放され中国に渡った志津は、張作霖と共に怪我を負った吉永将陸軍中佐や、大陸浪人岡圭之介の強力を得、調査に乗り出す。お話は、張作霖の乗った西太后の御料車を引く、これも西太后の為にイギリスから輸入された蒸気機関車「鋼鉄の公爵(アイアン・デューク)」がなぜか擬人化され、アイアン・デュークの機関士や、それこそ張作霖とも会話を交わす不思議な節と、志津の天皇宛ての調査報告書が交互に表れるという構成で進められる。中国の河北と東北(満州)地方の関係、奉天軍と関東軍の関係、そして張作霖の西太后への想いなどが語られ、次第に張作霖爆殺の謎が明かされる。

 9月17日発売の本なのでこれ以上のストーリーについての深入りは避ける。

 しかし、現在の日本の小説でここまで天皇自らの発言が語られることはないだろうし、天皇自らが物語の中心点に存在し、天皇自らの意思で何かを決定する小説もないだろう。つまり、かなり大胆な設定が物語のスタートなのだ。そこには、「天皇は神聖にして侵すべからず」という国家の求めと、それに抗う天皇の姿が描かれる。

 元自衛官である浅田次郎氏の天皇観とでも言うようなものが、そこには現れているのだが、一方、蒸気機関車「鋼鉄の公爵(アイアン・デューク)」の描写などには『鉄道員(ぽっぽや)』や『地下鉄(メトロ)にのって』などの「乗り物オタク」的な楽しみもある。

 まあ、結局は田中儀一総理大臣の辞職によって歴史の闇の中に葬らざるを得なかった「張作霖爆殺事件」ではあるが、その後の志津那陽がどういう生き方を選択したのかが知りたくなる一編でもある。

『蒼穹の昴』シリーズ全体からすると、ちょっとスケール感に欠ける話であるが、それも話のテーマがテーマであるだけに仕方のないこと。ただし、これが「外伝」である以上は、シリーズの続きがあるのであろう。それも楽しみだ。

 

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