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2010年8月 9日 (月)

『電子書籍の衝撃』はあまり衝撃的ではないということ

 やはり読んどかなきゃ、と言う感じで読み始めた本である。まあ、取り敢えず、いまのところ一番良い「電子書籍関連書」というところでね。

『電子書籍の衝撃』(佐々木俊尚著/ディスカバー携書/2010年4月15日刊)である。しかし・・・しかし、なのである。佐々木さんはもう少し「先を見通している人」だとおもっていたのだけどなあ。

 つまり、タイトルに衝撃という言葉を使っているほどには衝撃的な内容ではない。それはなぜだろうか。「本はこれから電子ブックによってアンビエント化していくということです。そして、アンビエント化された本の世界では、古い既刊本も新刊も、あるいはアマチュアの書いた本もプロの書いた本も、すべてがフラットになっていきます」という書き方も何ら不思議はないし、「そういう(電子ブックが出現する)状況の中では、出版社の機能も大きく転換せざるを得ません。将来はいまのような出版社ビジネスは衰退し、三百六十度契約に基づいたエージェント的な役割の小さなチームが、書き手をサポートしていくような方向へと進んでいくのではないかと思われます」というのもその通りだろうし、「アンビエント化によって引き起こされるリパッケージは、コンテキストの流れる圏域にまでミニマル(最小)化される」というのも良く分かる。それらのことはまさに電子書籍の出現によって起こるであろうという、予想された出来事であるにすぎない。本に先行して音楽の世界で電子化が起きていた時の状況を敷衍して考えてみればよくわかることである。

 最後に佐々木氏はケータイ小説に言及するのだが、そこにいたってもなお隔靴掻痒の気味があるのだ。あるラブコメディで、あるところまで書きすすめた作者が一旦連載をストップして、掲示板でストーリーについてのアンケートをとって、その結果を反映しながら書きすすめた話を紹介し「ここで起きているのは、ケータイ小説の書き手はソーシャルメディア上で小説を書き進めていくことによって、そのソーシャルメディアに参加している読者たちのコンテキストをすくい上げ、それを固定化する作業を行なっているということなのです」といって、新しい電子ブックならではの小説の書かれ方を示すのだが、それは既に行なわれていることを紹介したにすぎない。

 ここでいまひとつ攻め足りないのは、例えば将来、電子化によって小説がどう変わるのかといった視点である。要は、これから「文章表現といものがデジタル化によってどう変わってくるのかという視点」がないのである。

 ここで、私の経験したデジタルな作業をお話したい。それはアニメーションの音響作業を今はすべてデジタルで行なうのだけれども、デジタルの作業になるとそれまでのアナログで行なっていた時のような「見切り」がなくなってしまうということなのだ。つまり、いくら作業を繰り返しても(理論上は)音が劣化しないデジタルでは、いつまでたっても仕事が終わらずに、延々と音響作業が行なわれている。プロデューサーが「いい加減にしろ」とでも言わない限りである。それはコンピュータグラフィックの作業でも同じくらしく、やはりクリエイターは延々とブラッシュアップ作業を行なっている。つまり、デジタルには終わりがないということなのである。それがアナログ表現とデジタル表現の最大の違いかもしれないのだ。

 つまり、これまでのデジタル小説の書き手は「読者たちのコンテキストをすくい上げ、それを固定化する作業を行なっている」のかもしれないが、これからのデジタル小説の書き手は「読者たちのコンテキストをすくい上げ、それにしたがって(あるいは反撥して)永久に文章を書き直し続ける」のである。書き手が自分で読んで「なんかちがうな」と思えば、そこで書き変えてしまう小説の出現(というか、そういうものを小説と呼んでいいものかどうか)である。

 永遠に終わらない小説。今日と明日では異なるストーリーになってしまう小説。そんなものが、出現するかもしれない。つまり、作品批評というものが役に立たなくなってしまう時代が来る。その時、初めて『電子書籍の衝撃』が訪れるのである。

 まるでこのブログのようだな。過去ログを見てください。最初と変わってきているのだよ。

 

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