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2010年6月20日 (日)

『電子書籍元年』は時宣にかなった出版

『電子書籍元年』(田代真人著/インプレスジャパン/2010年5月21日刊)は時宣にかなった出版といえるかもしれない。

 著者田代真人氏は九州大学卒業後、朝日新聞の工務に入り、その後学研、ダイヤモンド社などでWeb関連の仕事をした後、今年、Web関連ブログで有名な池田信夫氏、元アスキーの西和彦氏らとともに、電子書籍の出版社アゴラブックスを立ち上げた人である。

 したがって、本の惹句にあるように「iPad&キンドルで本と出版業界は激変するか?」とか「iPad&キンドル、印税70%時代に何が起こるか」いうようなことに対しては、実業家として慎重な姿勢を示している。確かに「印税70%」は「理論的には」可能であるし、「出版社・取次・書店などの中抜き」が出来るというのも「理論的には」可能である。

 しかし、それは出版の仕事を現実に知らない人たちが勝手に言っているだけであり、電子出版が夢のような世界を作り出すかのように言って「紙の本」を売ろうと言う評論家の言説でしかない。現実の世界では、出版社や編集者が著者と読者の間で中間マージンを取るだけの存在でしかないなどということはあり得ない。実際には、編集者の介在しない出版物はあり得ず、編集者と著者・ライターとの有効な関係の中からしか「傑作」は生まれないのだし、出版社の持つブランド力や、宣伝・プロモーション力があってこそ、出版物が一般に流通するのである。

 いやいやそんなことはどうでもよい、自分は自費出版で「読み物」を出したいのだ、というひとはそれでもよい。流通なんてしなくてもよい、売れなくてもよい、と言う人は自由におやりなさい。そういう人のためには「電子書籍」は夢のようなメディアである。でも、それじゃあブログ書いているのと同じじゃないか。ブログだって宣伝しなけりゃ誰も読んでくれないし、読まれるためには書き手のブランドも大事なのだ。

 むしろ、重要なのは、現在の電子出版流通メディアの問題だろう。現在は、結局はキンドルのアマゾンとiPhone & iPadのアップルだけである。こうした流通寡占の中ではアマソンやアップルの販売政策がそのまま検閲として機能してしまう。例えば、講談社はボイジャージャパンを通じてアップルにコミックの流通を打診したところ、その3/4がアップルの基準を通らなかった。その基準を通らなかった理由は明らかにされていない。また、「紙の本」でベストセラーになった『妄撮』シリーズの電子版が最初はOKだったのが、ある日突然NGになってしまった。これを不審に思った講談社が問い合わせたところ、理由はなくただ「社内の審査基準が変わったため」という返事が返ってきた。

 勿論、アップルは一私法人であるからこれを以て「検閲である」などと言うつもりはない。しかし、もし『妄撮』が電子版だけの出版であったりしたら、もはや電子版『妄撮』は存在しないことになって、実質「検閲」と同じことになってしまうのである。

 電子版『妄撮』は紙版ではできないインタラクティブ性のある企画で、これはこれで面白かったんだけどね。

 要は、流通寡占の中ではこのように、寡占支配者次第では「なかったこと」にされてしまう表現が出てくる可能性が大変大きいということである。もし、電子出版ということが今後主流になるのであれば、アマゾン、アップルだけではなくもっと無数のメディアが出てくる必要があるだろう。また、こうした少数メディアだけが存在する状況である以上は、「紙の本」の必要性はなくならないであろう。当然、支配メディアに対抗するための抵抗メディアとしての存在である。こうしたメディアは、たとえ支配メディアが弾圧しようが、必ず出てくる抵抗メディアである。

 もうひとつ、この本で面白いのは「電子書籍の本命はiPadだ!」と言っている点である。キンドルやソニーの「ソニーリーダー」が電子書籍端末に限定して開発されていることに対して、iPadはタブレットPCとしてウェブ検索やメールなどが出来て、なおかつ「電子書籍端末としても使える」という部分に注目している。まあ、確かにタブレットPCとして使わないと、現状では電子書籍を廻る状況が極めてプアな段階では、単なる「でかくて」「電話がかけられない」iPhoneにすぎないのである。私自身はiPhoneは使っていないので比較はできないが、確かにタブレットPCとしての使い勝手は良い。良く言われる「キータッチ」の問題も、要は「慣れ」の問題でしかない。基本的にプリントしなければならない文章はデスクトップPCでやっているので、iPadではメールとメモ(もメール転送が楽だ)位しかないので、それで十分だろう。多分、iPadを使う人はみんなMacかWindowsマシンを使っている人だろうから、2台目のマシンとしては十分なスペックである。iPadの否定論の中には、これは中高年の最初のコンピュータとしては使えないという論があるが、まあ、それは無意味な論だろう。そんな人が最初からiPadを使うことはないからだ。

 ただし、この辺はどうなるのかよくわからない。「汎用マシン」が最初は提案されるが、結局流通するのは「単機能マシン」だったりするのが我々「素人」のマシン世界だ。「汎用マシン」は確かに便利だが、それはそれで使う際に手間や手順がかかったりする。「単機能マシン」は、それぞれの機能ごとにマシンが必要だが、それぞれのマシンは立ち上がりが早かったりして使いやすい。とは言うものの、「ワープロ・マシン」は「パソコン」に負けたから何とも言えないが。

 まあ、いずれにせよ、キンドル、iPadというマシンのおかげで「電子書籍元年」という年になった今年だが、実際には「電子書籍全開」という状況はまだまだやってくるわけではない。しかし、もはや「電子書籍」を無視して状況を語れる時ではないし、例えば「絶版」とか「品切れ重版未定」という状況で「飼い殺し」になっている非常に多数の本にとっては、まさに「時我に至り」である。実は「電子書籍」ということで一番有利になるのはこうした「絶版」「品切れ重版未定」本ではないかと考えているのだ。これこそ究極の「ロングテール」である。

 こうした、現状はまだまだ何とも言えない状況である。田代氏は「電子書籍」とか言って慌てふためく前に、出版社として、取次として、そして書店としてやることが、まだまだいっぱいあるだろう、ということである。最近、やたら書店関係の会合で「電子書籍」について語れという要請が多いが、そうじゃなくて「今何が出来るのか」を考えろ、「黒船が来たからって世の中はすぐに変わるわけではない」ということだろう。まあ、キンドルやiPadごときを黒船扱いすることがおかしいんだけどね。単なる新しいギミックが増えただけなんだから。

 もう少し、地に足がついたことを考えよう。

 ま、単なる面白がりの人(私?)は別だけどね。

 

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コメント

いやあ、本当に「品切れ重版未定」って多いんです(最近特に)。特に講談社文庫と角川文庫にやたら多い。岩波文庫とか新潮文庫なんかは、結構頑張って古い作品の重版を作っているのにね。

角田君の次の意見は私も同感と感じています。
「例えば「絶版」とか「品切れ重版未定」という状況で「飼い殺し」になっている非常に多数の本にとっては、まさに「時我に至り」である。実は「電子書籍」ということで一番有利になるのはこうした「絶版」「品切れ重版未定」本ではないかと考えているのだ。これこそ究極の「ロングテール」である。

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